#157 新作『The Door』をリリースした牧野竜太郎
photo:長谷良樹 design:福井直信
牧野竜太郎(まきのりゅうたろう)
1979年、鎌倉生まれ。高校から大学までをアメリカの各地で過ごす。2002年、帰国。実家である鎌倉のJazz Club Daphneで働きながら歌の勉強を始め、本格的にライブ活動を開始する。2008年に初のアルバム 『R.M.』 、2012 年にはセカンドアルバム『kind of love!』をリリース。最近ではCMソングを担当するほか、鎌倉を中心に音楽としての「ジャズ」を広めるためのイベントなども行っており、そのジャンルにとどまらない活動は幅広い層から支持を得ている。
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2017年6月21日、5年ぶりとなる待望のサードアルバム『THE DOOR』をリリースしたジャズ・ヴォーカリストの牧野竜太郎さん。ジャジーでポップ、グルーヴィでアコースティックなサウンドが散りばめられた『THE DOOR』は、新しいのにどこか懐かしく、牧野さんの晴れ渡った青空の様な歌声は、伸びやかに、そして、甘く、ソウルフルに響きます。
地元が同じ鎌倉というご縁もあり、初アルバムがリリースされた頃から「ファンのひとり」としてそれを外に連れ出し、ライブに行き、街のイベントでもご一緒させていただいたおよそ10年。
だからこそ、いま改めて牧野さんのまたこの先の10年に繋がるであろう「新しい扉」についてお聞きしてみたいと思います。(インタビュアー:林 菜穂子 以下H)
H: ニューアルバム『THE DOOR』、早速聴かせていただきました!まずは今作のテーマなどを教えてください。
牧野竜太郎(以下M): 今回のテーマは”ひかり”です。ジャズというと夜、お酒、たばこ、みたいなモノを連想しがちですが、”ひかり”をテーマにすることで朝、昼間、海、カフェとかを連想できるようなアレンジにしました。このコンセプトは僕にとって、とても新鮮でした。
H: 私にとっても、です。いままで「こんな真っ昼間な牧野竜太郎」を聴いたことがなかったので(笑)。しかも竜太郎さんの声を聴くと、やっぱり鎌倉の海を思い出すんですよね。
M: 例えば前回のアルバム『kind of love!』ではふんだんに夜をイメージしました。ジャズのイメージをたっぷり使いつつも、そこにポップの要素を入れ込んだ、という感じでしょうか??ウィスキーを実際揺らしながら聞いていただきたい、と。
とはいえ、”ひかり”は「牧野竜太郎」という人間の中には元々ある要素なんですよ。割と、ライブではそういう曲も演奏していたので。だから、今回のアルバムのタイトル『THE DOOR』にはいままで開けていなかった自分の中の扉を開ける、というニュアンスも入っています。「新しい扉」という意味合いももちろんあるのですが、「原点への扉」的な要素もありますね。
H: いつものジャズ・スタンダードが入っていないのも、逆に、かなり新鮮でした。
M: その代わりにソウル、ポップスのスタンダード、そして僕のオリジナルを半分入れました。その中には初めてのセルフカバーもあるんです。ファーストアルバム『R.M.』に収録した“La. La. La.”。この作品を入れられたことはとても刺激的なことでした。
H: 本当、この“La. La. La”にはドキッとしましたよ!熟成された感、満載、とでもいいますか(笑)。実際、5年ぶりのアルバムリリースになりましたね。いま、どんなご気分ですか?
M: 5年ぶりということでとても興奮しております!アルバムを作るって、その時の自分を形にするということじゃないですか。でも5年間、色んなアーティストのアルバムにゲストで参加させていただくことはありましたが、「自分自身」をそのまま「形」にすることが出来なかったんです。特に歌というのは体の中から出てくるもので、年を重ねると共に質、技術、センスなど全てが変わって行く。そんな中で「いまの自分を形にして行くこと」は歌手にとして前に進むためにとても大切なことだと実感しています。
H: この『THE DOOR』のことを最初に教えてもらったとき、竜太郎さん、「びっくりするくらいポップですよ!」っていっていて、私は正直「えっ、何?」って思ったんです。しかも前作から見れば場面も夜から昼に劇的に変化。なのに、「牧野竜太郎」がそうやって重ねた歳月や貫いてきたものがあまりにも見事に表現されていて、聴き終わって、「やられた〜、こう来たか〜!」ってびっくりしたんです(笑)。
M: 普段ライブに来ていただいている方はいまの僕を知ってくれているけど、ライブに来られない方々にとって、「僕というものが5年前で止まっている」と思うと怖いんですよ。だから、今年こそは!と思って僕を10年前から支えてくれているディレクターに相談したら、協力してくださって、リリースが決まったんです。
実はそのディレクター主催で「The Door」というイベントを定期的に開催しておりまして。いままで色んなメンバーとやって来ましたがコアとなるメンバーはずっと一緒。そして、今作はそのイベントのコンセプトなども引継いで、同じメンバーで録音することが出来たんです。
H: ああ、イベントの継続があったんですね。一朝一夕に完成するサウンドではないと素人なりに感じておりました。ぜひ、メンバーについて教えてください!
M: まず、ギタリストのカワムラヒロシをサウンドプロデューサーに迎えました。実はアコースティックギターとの録音、人生初なんです!他のメンバーは、いまジャズ界で特に活躍しているピアニスト、成田祐一、鎌倉出身のエレクトリックベーシスト、山本連、カワムラヒロシの弟でもあり信頼できるドラマー、河村亮です。人間的にも音楽的にも素晴らし過ぎるメンバーが揃いました!!
H: そうそう最初にこうもいっていた、「これも、ジャズだぜ!!」って。最後にこの本意を聞かせてください。
M: 僕が思うに、全てはイメージなんですよね。ジャズはモノにもよりますが夜のイメージがついてしまっている。でも実際、ジャズのBGMはどんなレストランでも昼間から流していたりします。だから僕はこの1枚を通して「これも、ジャズだぜ!!」といってしまうことで、そこに染みついたイメージを少しでも柔らかく、ライトなモノに変えて行けたらと思っているんです。
今回はよりファン層を広げたいという気持ちも強くあって。だから、これを初めて手にしてくださる皆様には、偉そうですけど、「へ〜、こういうジャズもあるんだね〜」って思っていただけたら嬉しいんです!
聴いてくれた人がどう思うかということ、結構考えながら制作しましたから。まるでファーストアルバムくらいの気持ちですよね、その点(笑)。
『牧野竜太郎/THE DOOR』
価格:3000円(税込)
牧野竜太郎(ヴォーカル)
カワムラヒロシ(ギター・コーラス・サウンドプロデューサー)
成田祐一(ピアノ)山本連(ベース)河村亮(ドラム)
林 菜穂子(はやしなほこ)
東京でフォトアシスタントをした後、ニューヨークに移り、ライター、フォトエディター、撮影制作などの仕事を経験する。1997年、フォトプロダクションbaCe, inc.を設立。広告制作、取材・執筆を続けるかたわらアートや音楽のイベントなども主催。現在ブルックリンのブッシュウィックに住みながら雑誌penのオンライン版で「Welcome to Bushwick!」を連載している。
http://www.pen-online.jp/news/culture/welcometobushwick_01/
www.baceincny.com
ライブ情報 (*下記以外のライヴについては牧野さんのHPでご確認ください)
The Door Full Band member:牧野竜太郎(vo)カワムラヒロシ(g&cho)成田祐一(p)片野吾朗(eb)河村亮(ds&cho)
7/11@大阪府大阪『martha』(大阪府大阪市西区江戸堀3-8-16)
Open 18:00 Start 19:30 Charge 当日\4500 前売\4000 予約06-6446-2314
7/12@愛知県名古屋『Star Eyes』(愛知県名古屋市千種区菊坂町3-4-1 Gハウスビル1F)
Open 18:00 Start 19:30 Charge 当日\4500 前売\4000 予約 052-763-2636
7/14@神奈川県横浜『モーションブルーYOKOHAMA』(神奈川県横浜市中区新港1-1-2 横浜赤レンガ倉庫2号館 ) Open 18:00 Start 19:30 Charge \4500 予約 045-226-1919