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InterviewsNo. 242

来日直前緊急INTERVIEW #171 ロベルト・オッタヴィアーノ(soprano-sax)

ロベルト・オッタヴィアーノ Roberto Ottaviano
1957年、イタリア・バーリ生まれのサックス奏者。
ソプラノサックスをスティーヴ・レイシーに師事、バップからフリー、インプロまでをこなす。
内外で豊富な演奏、録音キャリアを誇り、アルバムはマル・ウロルドロン(DIW) からピエール・ファーヴル (ECM, Intakt) まで。バーリ音楽院にジャズ科を創設、教授として更新の指導にあたるとともに、ジャズ・フェスやコンサート・シリーズを組織、バーリ市をイタリア随一のジャズ都市のひとつに育て上げた。

Interviewed by Kenny Inaoka 稲岡邦彌 via e-mails, June 01&02, 2018

♪ 念願叶っての初来日。ソプラノサックス1本でいく...。

Jazz Tokyo(JT) :突然の来日情報ですが、トリオ結成の経緯を教えてください。

ロベルト・オッタヴィアーノ(Roberto):僕とドラムスのマルチェロ・マグリオッチとは70年代からの仲間で、マルチェロが演奏仲間のベースのマレスケ・オカモト(岡本希典)を引き合わせてくれました。

JT:メンバーの紹介をお願いします。まずは、あなた自身から。

Roberto:僕が内外のジャズ・シーンで活躍しだしてから40年近くになります。演奏やレコーディングで共演したミュージシャンは世代をまたがっており、たとえば、ディジー・ガレスピー、チェット・ベイカー、アート・ファーマー、マル・ウォルドロン、レジー・ワークマン、アルバート・マンゲルスドルフ、ジョルジオ•ガスリーニ、エンリコ・ラヴァ、スティーヴ・スワロー、フランツ・コグルマン、ピエール・ファーヴル、ケニー・ウィーラー、キース・ティペット、ルイ・モホロ、カール・ベルガー、ハン・ベニンク、アリルド・アンデルセン(アーリル・アンデシェン)、トリロク・グルトゥ、ハミッド・ドレイクなどなど。
演奏地もイタリアはもちろん、ドイツ、オーストリア、スイス、ベルギー、フランス、デンマーク、ノルウェー、イギリス、スペイン、ポルトガル、ユーゴスラヴィア、アルバニア、ルーマニア、ロシア、インド、メキシコ、タイ、モロッコ、アルジェリア、象牙海岸、セネガル、カメルーン、アメリカ、カナダなどなど。
録音を残したレーベルは、Red, Splasc(h), Soul Note, Dodicilune, Hat Art, Intakt, ECM, DIW, Ogunです。
教師としての実績は、生地の音楽院にジャズ科を新設した経験があります。

JT:長大なキャリアですね。それでは、次にドラムスのマルチェロ・マグリオッチについて紹介願います。

Roberto:マルチェロのキャリアも長く多彩です。探究心にあふれたミュージシャンで、ジャズから即興、無声映画との共演、ダンスや演劇との共演もこなしています。僕自身も1974年以降、いろいろなプロジェクトで共演しているが素晴らしいミュージシャンだと思います。彼の共演歴は、たとえば、マル・ウォルドロン、ペーター・コヴァルト、ジム・ドボルザーク、スティーヴ・ポッツ、ジョエル・レアンドル、ジョン・チカイ、ベニャート・アシアリ、カルロス・ジンガロ、エヴァン・パーカー、ミシェル・ゴダール、トム・ヴァーナー、ハリー・サイオストローム、サキス・パパディミトリウ、ケント・カーター、ウィリアム・パーカー、ジョン・エドワーズ、ニール・メトカフ、エイドリアン・ノースオーヴァー、ダニエル・トンプソン、マレスケ・オカモト、J.M.ヴァン・シャウブルク、マルチョ・マット、ロンドン・インプロヴィゼーション・オーケストラ、フィル・ギブス。トム・ジャクソン、トリスタン・ホンジンガー、ローレンス・カサレイなどなど。録音実績も多彩です。

JT:マレスケオカモト(岡本希輔)についてもお願いします。

Roberto:マレスケについては君の方が詳しいだろう。彼は1960年、東京生まれでベースの他にチェロも演奏する。コントラバスを始めたのは1974年、中学時代で、その後、成蹊大学の交響楽団に籍を置きながら1982年から東京のジャズ・シーンでベースソロの活動を始めた。一方で、高木元輝、吉沢元治、豊住芳三郎、小杉武久らと共演し、ニュー・ジャズ・シンジケートでも活動したという。現在は各国のインプロジャズ・シーンで活動しており、共演者はオードリー・チェン(Audrey Chen)、カルロス・ジンガロ(Carlos Zingaro)、 エミリー・レスブロス(Emilie Lesbros)、ユーグ・ヴァンサン(Hugues Vincent)、フイ=チュン・リン(Hui-Chun Lin)、リカルド・テイェロ (Ricardo Tejero)、テリー・デイ(Terry Day)、トリスタン・ホンジンガー(Tristan Honsinger)、マルチェロ・マグリオッチ(Marcello Magliocchi)、ローレンス・キャサリー(Lawrence Casserley)、ヴォルフガング・ゲオルグスドルフ(Wolfgang Georgsdorf)と多彩だ。

JT:おふたりの来日の経験は?

Roberto:念願叶っての初来日です。

JT:日本と日本のジャズ・ミュージシャンについての知識はありますか?

Roberto:僕らには、日本は古い伝統へのリスペクトと未来に対するチャレンジのバランス感覚が優れた国であるという認識があります。ジャズ・シーンの先駆者としては、渡辺貞夫、穐吉敏子、日野皓正、富樫雅彦、菊地雅章ら、ジャズ以外では、ツトム・ヤマシタ、坂本龍一などを認識しています。

JT:日本での演奏についてのアイディアはありますか?

Roberto:仕掛けやグルーヴを指定した書き譜と即興の両方を考えています。

JT:ツアーのスケジュールは?

Roberto:マレスケの尽力で2週間で12回のギグが組まれています。

JT:日本で演奏するのはソプラノサックスだけですか?

Roberto:僕のメインの楽器はソプラノだ。ソプラノとテナー、稀にはソプラノとソプラニーノやバリトンと組み合わせることもあるが、今回のツアーでソプラノ1本、吹き慣れたヤナギサワを持参します。

JT:日本ではトリオだけの演奏ですか?ゲストが入る可能性も?

Roberto:認識しているのはトリオだけですが、マレスケがサプライズを用意しているかどうか..

♪ スティーヴ・レイシーは僕にとって絶対的な ”マスター”

JT:同郷のアンドレア・ツエンタッツォとは親交がありますか?

Roberto:僕がプロとしての活動を始めたのはアンドレアのオーケストラでした。70年代後期のことですが。それ以降もさまざまなプロジェクトで共演しています。最後は数年前にデュオのレコーディングを済ませました。

JT:ジョルジオ・ガスリーニとも共演していますね。

ジョルジオはいつも僕との共演を求めていたのですが、彼の完璧主義、先進性、汎文化性、冒険性などを満たすプロジェクトをイタリアの音楽シーンで実現することが困難だったのです。幸いにも80年代後半から90年代初期の間には彼との共演が実現でき、世界各国を巡演しました。

JT:最近、ECMで活躍を始めたステファノ・バタリアとの関係は?

Roberto:僕がステファノを初めて僕のカルテットを招いたのはまだ彼が駆け出しの頃でした。しかし、彼はめきめき頭角を現し非常に個性的で妥協を許さないミュージシャンに成長したのです。とても厳しいミュージシャンですよ。

JT:ソプラノサックスといえばスティーヴ・レイシーですが、あなたにとってレイシーはどのような存在ですか?

Roberto:“マスター”という言葉に深遠で包括的な意味があるとすれば、スティーヴ・レイシーこそ私の生涯の絶対的なマスターでした。タイミングの感覚、和声的なアプローチのような具体的な問題の他に、音楽そのものとの取り組み方、作曲や即興について、そして時には政治的な事柄に至るまで、僕はその全てをレイシーに負っています。彼の死後、レイシーは僕の内なる声になっています。

JT:デイヴ・リーブマンとも共演しているようですが。

Roberto:リーブは僕にとってインスピレーションの源泉であり、非の打ちどころのない教師であり、アフリカン-アメリカン・ミュージックのスペース・トラヴェラーです。テクニックや審美的な問題についての壁をいつも打ち破ってくれる存在です。

JT:マル・ウォルドロンとの録音はどのように実現したのですか?

Roberto:マルとの関係は、1983年から彼が死ぬまで続きました(2002年没)。彼とは何度か録音の経験がありますが、杉山和紀氏が制作したDIW向けのデュオ・アルバム『Black spirits are here again』(1996) がもっとも強く、心に残る作品です。

JT:このアルバムで演奏したのはスタンダードだけですか?

Roberto:いいえ、マルのオリジナルも演奏しています。このアルバムに収録したスタンダードはマルが初めて録音するものばかり、というのも嬉しい経験でした。

 

with Mal Waldron

♪ 好きなアルバムは ECM盤の『Window Steps』...

JT:音楽一家に生まれましたか?

Roberto:まったく。僕が初めてです。

JT:音楽に興味を持ったのはいつどんなきっかけですか?

Roberto:14歳の頃から父親のレコード・コレクションをあれこれ聴き始めました。印象に残っているのは、アーティ・ショーの『クラリネットとオーケストラのための協奏曲』です。

JT:楽器を最初に手にしたのは?

Roberto:17歳の時に古ぼけたテナーサックスを入手しました。

JT:音楽教育は?

Roberto:最初は独学で、成長してから音楽院で学びました。クラリネットから初めてサックスにたどり着きました。

JT:プロとしてのデビューは?
Ropberto:1977年に南イタリアで、当時の典型的なジャズ・ロック、ポップ、フォークを集めたフェスティバルでした。

JT:アメリカへはジャズの勉強に?

Roberto:いや、ちょっとレイシーから距離を置いてみようと思い...。アメリカではチャーリー・マリアーノとジミー・ジュフリーに師事しました。 

JT:ジョージ・ラッセルとの出会いは?

Roberto:ウィーンで彼のワークショップに参加しました。彼のリディアン・クロマチック・モードへの理解を深めたかったのと、さまざまなコードの意味合いやフリー・フォームに対するレイヤーの可能性についての探求を目的としていました。。

JT:レコーディングのキャリアは?

Roberto:リーダー・アルバムは20作くらい、共演は100作くらいでしょうか。

JT:いちばん印象に残っているアルバムは?

Roberto:好きなアルバムは、レイ・アンダーソンとの『The Leap』(Red) ですね。それから、ECM盤の『Window Steps』、ケニー・ウィーラー、スティーヴ・スワロー、デイヴィッド・ダーリング、ピエール・ファーヴルというメンバー。最近作では『Sideralis』(Dodicilune)で、アレクサンダー・ホーキンス(p)、マイケル・フォーマネク(b)、ジェリー・ヘミングウェイ(ds) のカルテット、年間最優秀ジャズ・アルバムに選出されました。

JT:ECMの『Window Steps』録音の経緯について聴かせてください。

Roberto:スイスのパーカッショニスト、ピエール・ファーヴルはECMを中心に創作活動をしていて、1995年に新作を録音するにあたって声をかけられたのです。僕とピエールはそれまでに10年ほどの共演歴があり、デュオ、トリオ、カルテットからラージ・アンサンブルまで色々なフォーマットでコラボレーションを重ねてきました。各国からミュージシャンがオスロのレインボー・スタジオに集まってマンフレート・アイヒャーがプロデュースしたとても素晴らしいアルバムです。僕もスティーヴ・スワローと共作を1曲提供しています。ピエールとはスイスのIntakt レーベルにも録音しています。

 

ECM Window Steps session

 

JT:故郷のバーリというのはどんな街ですか?

Roberrto:アドリア海に面したイタリアの古い街で、おかしなところもあれば憎むべき側面もある、しかし愛すべき街です。

JT:ジャズ・フェスなどもあるのですか?

Roberto:ジャズに関して言えばとても活発な街ですね。フェスや国際的なシリーズ・コンサートもあり、僕も企画に参加しています。

JT:最後に夢を語ってください。

Roberto:今まで以上に自分の音楽にエネルギーとアイディアを持たせること、当面は新作を成功させること(『Eternal Love』というタイトルのアルバムをツアーに出る前に仕上げる予定です)、それからもちろんにマルチェロとマレスケとの日本ツアー「Un Croquis dans le ciel (A Sketch in the Sky)」を成功させることです。

L: with Wayne Shorter  C: with Thomasz Stanko  R: with Steve Swallow

L: with Andrew Cyrille & Reggie Workman  C: with Ralph Alessi  R: with Pierre Favre

L: with Louis Moholo & Keith Tippett  C: with Evan Parker  R: with Bobby McFerrin


来日情報

MRM Trio concert tour 2018
“Un Croquis dans le ciel”〜中空のデッサン

Roberto Ottaviano ロベルト・オッタヴィアーノ(ss)
Maresuke Okamoto 岡本希輔 (b)
Marcello Magliocchi マルチェロ・マグリオコッチ (perc, ds)

June 18th, 2018 (Mon)
Clop Clop
〒167-0054 Suginami-ku Syoan3-39-11 Tokyo, Japan
〒167-0054 東京都杉並区松庵3-39-11  +81 3 5370 2381
19:00 Open 20:00 Start  ¥2,500yen+1drink
http://www.clopclop.jp

June 19th, 2018 (Tue)
Yellow Vision
〒166-0001 Suginami-ku Asagaya-kita2-2-2, Asagaya 2-chome Bldg B1 Tokyo, Japan
〒166-0001 東京都杉並区阿佐ヶ谷2-2-2阿佐ヶ谷北2丁目ビルB1  +81 3 6794 8814
19:00 Open 19:30 Start ¥2,000+order
http://www.yellowvision.jp/

June 20th, 2018 (Wed)
LIVE HOUSE BUDDY
〒176-0005 Nerima-ku Asahigaoka1-77-8 Futaba KaikanB2F
〒176-0005 東京都練馬区旭丘1-77-8 双葉会館B2F
19:00 Open 19:30 Start ¥2,000+order
http://www.buddy-tokyo.com

June 21st, 2018 (Thu)
Music and Coffee HIKARI NO UMA
〒169-0073 Shinjyuku-ku Hyakunin-Cho 1-23-17-B1 Tokyo, Japan
〒169-0073 東京都新宿区百人町1-23-17-B1(旧キューピット)
19:00 Open 19:30 Start ¥2,000+order
http://hikarinouma.blogspot.jp

June 22nd, 2018 (Fri)
Koenji Grain
〒166-0002Suginami-Ku Koenji Kita3-22-4 Tokyo, Japan
〒166-0002東京都杉並区高円寺北3-22-4  +81 3 6383 0440
19:00 Open 19:30 Start ¥2,000+order
http://grain-kouenji.jp

June 23rd, 2018 (Sat)
Asagaya Ten
〒166-0001 Suginami-Ku Asagaya Kita 2-1-5
〒166-0001 東京都杉並区阿佐谷北2丁目1−5
19:00 Open 19:30 Start ¥2,000+order
http://asagaya-ten.com

June 24th, 2018 (Sun)
Cafe de Noel
〒197-0011 Fussa 2049 Fussa City Tokyo, Japan
〒197-0011 東京都福生市福生 2049
19:00 Open 19:30 Start ¥2,000+order
http://www.noel-note.com

June 26th, 2018 (Tue)
jazz cafe ZAC BARAN old new
〒606-8392 Sakyo-ku Seigoin SannouChou18 MetaboOkazaki Build.B1F Kyoto City, Kyoto
〒606-8392 京都市左京区 熊野神社前交差点 東入100m メタボ岡崎B1F  +81 7 5751 9748
19:00 Open 19:30 Start ¥1,000+order
http://www.secondhouse.co.jp/zacbaran _ top.html

June 27th, 2018 (Wed)
GOKISO NANYA
〒466-0022 Showa-Ku ShiotukeDori1-47-4 Nagoya City, Aichi Pref.
〒466-0022 愛知県名古屋市昭和区塩付通1-47-4  +81 5 2762 9289
19:00 Open 19:30 Start ¥2,000+order
http://www.nanyagokiso.com/

June 28th, 2018 (Thu)
BAR HAWKWIND
〒606-8212 Sakyo-Ku Tanakasatonouchi 82 Fujikawa Build. 2F Kyoto City, Kyoto
〒606-8212 京都市左京区田中里ノ内町82藤川ビル2F
20:00 Open 20:30 Start ¥1,000+order
https://easywind.exblog.jp

June 29th, 2018 (Fri)
M’s Live Hall
〒500-8323 Kajima-cho 5-11 Gifu City, Gifu Pref.
〒500-8323 岐阜県岐阜市鹿島町5-11  +81 5 8251 3663
19:00 Open 19:30 Start ¥2,000(with 1drink)
http://ms-music.jp/mslivehall

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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