#03 『アロルド・ロペス・ヌッサ/ティンバ・ア・ラ・アメリカーナ』
text by Keiichi Konishi 小西啓一
海外編の方は例年通り、また誰もが選ばないであろう…ラテン・ジャズ(ぼくのお気に入り)の分野から1枚を挙げたい。今年も又ラテン・ジャズの世界、アルフレッド・ロドリゲス(p)の新作やチューチョ・バルデスとパキート・デリベラの久々の共演作、イリアーヌのグラミー賞獲得作品(“JazzTokyo”にレビュー掲載)等々、話題を集めた好作品も多々だった。それらの中でぼくが選んだのは、キューバ・ジャズの第一人者にして現在のラテン・ジャズ・ピアニストの代表格~アロルド・ロペス・ヌッサ(p)の新作『ティンバ・ア・ラ・アメリカーナ』。
これ迄に9作を発表し、ラテン・ジャズの伝道師として大いに気を吐いて来た彼が、遂に世界的ジャズ・レーベル“BN”でのデビューを果たし、新たな歩みを始めた記念碑的作品と言える。同時に彼は故郷のキューバを離れ、新たな活動の地として“UK”に次ぐジャズ激震の地”フランス“を選択、そこで再び世界的活動を始動させようとしている訳だが、その一歩を記したものでもある。ジャズ・ハーモニカのグレゴリー・マレや実弟のルイ・ロペス・ヌッサ(ds)などの俊英を率いて、冒頭の”ファンキー“をはじめ全10曲、ダイナミックにして快調、哀愁も伴った出色な演奏を展開。ラテン・ジャズの愉しさ横溢した逸品でもある。プロデュースを話題のユニット”スナーキー・パピー“のマイケル・リーグが担当しているのも、実に興味深い所。
そしてもう一つ、ラジオの特番制作で20数年の付き合いのある、ぼくの心の故郷=台湾。今この地のジャズも仲々に面白い。NYで活躍するヴァイブ奏者チェンチェン・ルー、そして美形ピアニストのルオー・ユーチェン、更にはスガ・ダイロウとも共演している台湾サックスの第一人者~謝明彦等々、多士済々の面々がそれぞれ特長あるジャズを展開、皆さまも是非このジャズにも注目して欲しいもの。