アートの未来を探す放浪者 剛田 武
林聡さんと初めて会ったのは2019年3月に汐留 パークホテル東京で開催された現代美術フェア『ART in PARK HOTEL TOKYO 2019』のレセプション・パーティだった。大規模なアートフェアの初日で忙しい様子で挨拶程度しか言葉は交わさなかったが、橋本孝之君が「徹底的にアンチコマーシャルな姿勢を貫く、現代美術界のP.S.F.レコード(注:90年代、日本のアンダーグラウンド・ミュージックを世界に紹介した東京のレーベル)のような存在」と語ったギャラリーノマルの創設者らしく、内に秘めたエネルギーが滲み出るような意志の強さを感じると同時に、何となく心ここにあらずといった夢見人のような印象を覚えた。その後、何度か東京でお目にかかったときも、じっくり話をする機会はなかったものの、談笑していても視線の先には別のものが見えているようなイメージがあった。
思うに林さんは常に先のこと、ノマルとアートの未来を考えていたのではないだろうか。ノマルの語源である「ノマド(遊牧民)」とは彼自身の生き方をも意味している。35周年を迎えて、そのさらに先にある未来を探しに、別の世界へ放浪の旅に出たのだろう。この世のノマルの未来はsaraさんをはじめ、ノマルのスタッフやアーティストが引き継いでくれることを確信して。
*写真キャプション
2019年3月8日「ART in PARK HOTEL TOKYO 2019」アートフェアの理事の一人として登壇する林聡(左から二人目)
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