3/11 ドイツ文化大臣「フリーランスの芸術家への無制限の支援」を言明

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Cover photo: Christof Rieken
Translation & text by Mario Kumekawa 粂川麻里生

コロナウィルス ー ドイツ文化大臣、文化施設と芸術家に支援を約束
「自己責任のない困窮や困難に対応する」(グリュッタース文化相)

プレスリリース89号
2020年3月11日(水)
連邦政府報道情報局(BPA)

コロナウィルスによる文化的イベントの中止および明らかな来訪者減少を鑑み、モニカ・グリュッタース文化大臣は文化施設と芸術家の支援を決定した。「現在の状況が文化と創造にかかわる経済にとって、とりわけ、小規模の文化施設とフリーランスのアーティストの方たちに、深刻な逼迫をもたらしかねないことは理解しています」(グリュッタース文化相)

連邦政府における文化とメディアに関する責任者である同大臣は、政府の支援を受けている文化施設に対し、ローベルト・コッホ研究所の報告を指針とするように推奨した。また、そうすることで、大規模なイベント、特に閉ざされた空間で開催されるものは、中止するべきであり、他方、小規模な催事は、個々の条件を鑑みて、実行に十分な責任が負えるかどうかを、各自で判断することになるとした。

「われわれは、しかし、現在の状況にあって、文化は良き時代においてのみ享受される贅沢品などではない、と認識しています。ある一定期間、文化活動を諦めなければならないとすれば、それがどれほどの喪失であるかも、われわれは理解しています」とグリュッタース文化相は語る。「それでもなお、私たちが文化イベントの中止を要請しなければならないとすれば、それは目下の状況がきわめて異常な緊急事態であるためなのです」

グリュッタース文化相は続ける。「芸術家と文化施設の方々は、安心していただきたい。私は、文化・クリエィティブ・メディア業界の方々の生活状況や創作環境を十分に顧慮し、皆さんを見殺しにするようなことはいたしません! われわれは皆さんのご不安をしっかり見ておりますし、文化産業とクリエイティブ領域において、財政支援や債務猶予に関する問題が起こるようであれば、個々の必要に対して対応してまいります。」

同大臣は、政府内において、救済措置に関する懇談会に文化・メディア業界の代表者たちを招くことも提案した、とも語った。「われわれは、自己責任ではない困窮や困難に対応し、これを救済しなくてはなりません。これは、経済的な救済であるだけなく、中止・キャンセルによって激しく揺さぶられている文化の世界を救うことでもあるのです」とグリュッタース大臣は語った。

【ドイツ語原文へのリンク】
Coronavirus – Kulturstaatsministerin verspricht Kultureinrichtungen und Künstlern Unterstützung – Grütters: „Auf unverschuldete Notlagen und Härtefälle reagieren“


【解説】
ドイツのモニカ・グリュッタース文化大臣は、2020年3月11日、上記のプレスリリースを通じて、「コロナウィルスの蔓延によって打撃を受けている文化事業者への大規模支援」を発表した。その後、3月20日にもベルリンでドイツ通信社(DPA)の記者との会見を行った同文化相は「芸術・文化・メディア産業におけるフリーランスおよび中小の事業者に対する無制限の支援」を約束した。グリュッタース大臣は「コロナウィルスは、文化国家としてのドイツを形成している多くの芸術家のライフスタイルに対する大きな脅威でもある」との認識を示した。

ドイツ連邦政府の試算では、今年3月から5月にかけて約8万件の文化イベントが中止になり、文化産業界全体の損失は125億ユーロ(約1兆5000億円)と見込まれており、その影響はさらに続くと考えられている。グリュッタース文化相は、これに対応するために「速やかな、官僚的ではない救済策をとる」と明言した。「政府は、いかなるコストを払っても、芸術家を救済する。まずは数十億ユーロの救済プログラムが芸術・文化・メディアのフリーランス事業者のために立てられる。当面投入される具体的な金額は、今月中には発表する予定だ。

このフリーランス・中小事業者の救済プログラムの財源には、2020年には実行不可能となる文化・芸術事業のための予算が流用される。また、助成を受けた文化事業が中止された場合、助成金の返還は免除される。

会見の中でグリュッタース文化相は「文化事業の経済的な重要性」にも言及し、「文化産業は2018年には1055億ユーロ(約12兆6000億円)を生産しており、化学産業、エネルギー産業、金融業よりも大きな業界である」ことも強調した。


粂川麻里生 Mario Kumekawa
慶應義塾大学文学部教授、同大学アート・センター副所長
1962年宇都宮市生まれ。少年期のアイドルはモハメド・アリ。慶大生時代は、ギタリストやベーシストの友人たちとコンボを組み、都内パブ・ビヤホール等で活動。卒業後、『ワールドボクシング』誌編集記者、上智大学外国語学部専任講師を経て、慶應義塾大学文学部教授(ドイツ文学、専門はゲーテの自然学)。現在、同大学アート・センター副所長を兼任し、油井正一アーカイブ(日本ジャズ史の資料庫。副島輝人氏・相倉久人氏の資料も含む)の管理者を務める。同センターにて公開研究会「拡張するジャズ」(訪問所員に中川ヨウ氏と菊地成孔氏)を主宰。日本のポピュラー音楽全般についての研究プロジェクトも(訪問所員に牧村憲一氏、藤井丈司氏、宮沢和史氏、Zeebra氏、原田悦史氏、日高良祐氏)行っている。2019年より『三田文學』副編集長も兼任。

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