JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 70,311 回

Local(国内)News

7/15-16 ボンクリ・フェス 2022 / Born Creative Festival 2022
〜藤倉 大プロデュース 東京芸術劇場

Text by Hideo Kanno 神野秀雄

『ボンクリ・フェス2022』
『Born Creative Festival 2022』

会場: 東京芸術劇場
開催日: 2022年7月15日(金)〜16日(土)
詳細は公式ウェブサイト

ロンドンを拠点に活躍する作曲家 藤倉 大が贈る『ボンクリ・フェス』。スペシャルコンサートを中心にさまざまなワークショップや無料プログラムで楽しむことができる。COVID-19の状況が落ち着いて、藤倉 大、ヤン・バング、アイヴィン・オールセット、エリック・オノレ、アン・レイレフア・ランツィロッティ、アンサンブル・スリーなどの来日も実現する。

『ボンクリ・フェスティヴァル』は”Born Creative” Festivalを略した名称。名づけ親は、音楽に国境はないという言葉をそのままに、様々なツールを駆使して、世界中のアーティストたちとボーダレスに繋がり、熱い視線を受ける気鋭の作曲家 藤倉 大。すべての人間は子どもの頃、「新しい音楽」や「新しい音」、子どもの言葉を借りると「変な音」が好きだが、なぜかそのクリエイティヴィティは成長するにつれ失われていくと藤倉は言う。アーティスティック・ディレクターに藤倉 大を迎え、この日のために東京芸術劇場に駆けつけた多くのアーティストたちと届ける贅沢なフェスティヴァル。長い1日をゆったり思い思いに過ごすもよし、短めの時間立ち寄るだけでもちょっとだけ発見があるプログラムを毎年楽しんできた。

「スペシャル・コンサート」では、藤倉 大、八木美知依&藤倉 大、大友良英よる新作3曲のワールドプレミアとなるほか、誰もが無料で楽しめる無料プログラム、新しい音への扉を開くワークショップ・コンサート、コンサートホールが巨大なリスニングルームに変身!“出演者なし”の電子音楽コンサート(「大人ボンクリ」)など。 一部予約が必要な無料プログラムや有料ワークショップは枠が限られているので早めの申し込みをお勧めしたい。

●スペシャルコンサート
2022年7月16日(土)  14:00開演
東京芸術劇場 コンサートホール 
一般3,000円  U30(30歳以下)1,000円 
詳細はこちら
1. 藤倉大/THREE(日本初演)
Fujikura Dai: THREE (Japan Premiere)
2. 久石譲/揺れ動く不安と夢と球体
Hisaishi Joe: Shaking Anxiety and Dreamy Globe
3. 八木美知依&藤倉大/アルバム「微美」より(世界初演)
Yagi Michiyo&Fujikura Dai: From the album”Bibi”(World Premiere)
4. アン・レイレフア・ランツィロッティ/ビヨンド・ザ・アクシデント・オブ・タイム(日本初演)
Anne Leilehua Lanzilotti: Beyond the accident of time(Japan Premiere)
5. 「ビヨンド・ザ・アクシデント・オブ・タイム」Punkt Live Remix
Punkt Live remix of “beyond the accident of time” by Jan Bang, Erik Honoré, Eivind Aarset
6. 大友良英/新作(世界初演)
Otomo Yoshihide: New Work (World Premiere)
7. 藤倉大/ヴィオラ協奏曲「ウェイファインダー」(世界初演)
Fujikura Dai: Wayfinder-Viola Concerto〈Ensemble Version〉(World Premiere)

プログラムの一部を紹介する。


●藤倉大&ヤン・バング-The Bow Maker
2022年7月15日(金)20:15~21:00 東京芸術劇場 ギャラリー1(5F) 
ヤン・バング Jan Bang – live sampling, samples
藤倉大 Fujikura Dai – synthesizer
アイヴィン・オールセット Eivind Aarset – guitar, electronics
エリック・オノレ Erik Honoré – synthesizer, sampler
ゲスト:
本條秀慈郎 Honjoh Hidejiro – 三味線 shamisen
八木美知依 Yagi Michiyo – 箏 koto
詳細はこちら

●ヴィオラで描く星と航海の部屋-The Wayfinder Room
2022年7月15日(金)19:00~19:45 東京芸術劇場 シンフォニースペース(5F)
アン・レイレフア・ランツィロッティ(ヴィオラ)
詳細はこちら
ヴィオラ奏者・作曲家 アン・レイレフア・ランツィロッティによるレクチャー&コンサート。ランツィロッティはスペシャル・コンサートで藤倉大のヴィオラ協奏曲『ウェイファインダー』が世界初演される。この作品は、アンのルーツであるポリネシアに伝わる伝統的な航海術「ウェイファインディング (天体観測、海流や波浪の観測、生物相の観察、風向の観測などから自らの現在位置と方向を推測する航法技術)」 のアイデアに触発され作曲された。スペシャル・コンサートに先駆けて、「ウェイファインディング」に関するお話とヴィオラ協奏曲から生まれた作品「藤倉大/スター・コンパス」の演奏などを行う。

なお、7月18日には、海の日にちなんで、ハワイ伝統航海カヌー「ホクレア(Hōkūleʻa)」の世界航海を記録したドキュメンタリー映画「モアナヌイアケア」上映会でのトークショー記録動画がハワイ州観光局公式YouTubeチャンネルで限定公開される。また本記事の末尾に、ウェイファインディングの関連動画を置いたので、ご関心のある方はご覧いただきたい。また7月18日の大阪をはじめ映画上映会も予定されているのでこちらを参照されたい。7月23日、葉山ブルームーンでのホクレアについてのトークショーも予定されている。

●箏の部屋-The Koto Room
2022年7月16日(土)11:15~12:00 東京芸術劇場 ギャラリー1(5F)
八木美知依Talon(箏アンサンブル)〜八木美知依、磯貝真紀、高橋弘子、小林道恵
Yagi Michiyo’s TALON (Koto Ensemble)
(Yagi Michiyo, Isogai Maki, Takahashi Hiroko, Kobayashi Michie)
中山晃子 Nakayama Akiko(Alive Painting)
詳細はこちら

●プンクトの部屋-The PUNKT Room
2022年7月16日(土)17:45~18:30  東京芸術劇場 ギャラリー1(5F)
ヤン・バング Jan Bang – Electronics
アイヴィン・オールセット Eivind Aarset – Guitar
エリック・オノレ Erik Honoré – Electronics
詳細はこちら

●アンサンブル・スリーの部屋-The Ensemble Three Room
2022年7月16日(土)19:00~19:45  東京芸術劇場 シンフォニースペース(5F)
アンサンブル・スリー Ensemble THREE
ジョエル・ブレナン Joel Brennan, Trumpet
ドン・インメル Don Immel, Trombone
ケン・マレー Ken Murray, Guitar


©Alf Solbakken
●藤倉 大より
「ボーン・クリエイティヴ」、略して「ボンクリ」。

これは、「人間は皆、生まれつきクリエイティヴだ」という意味。

僕が行っていた福島県相馬市での作曲教室では、5歳から高校生までを対象に世界から新しい音楽のエキスパートの演奏家を迎えて特殊技法等をみっちり紹介し、その場で子供達が新しい音楽(現代音楽と呼ぶ人も多いかも知れない)の作曲をする。しかもすべての音や指示を楽譜にきちんと記し、自分の作曲した作品をその場でプロの演奏家に演奏してもらう。そんな演奏家は、子供達が作曲中、子供達からの様々な楽器に対する質問に答え、試し弾きをしながら小さな作曲家たちとコラボレーションする。 子供たちのアイディアを楽譜にし、時には言葉が通じない海外からの演奏家らに問題なく自分たちの音楽を演奏してもらうスペシャルな環境だった。

この作曲教室を何年か継続していてわかったことは、全ての人間は子供の頃、「新しい音楽」「新しい音」、そして5歳の子供の言葉を借りると「変な音」が好きだったということだ。

なぜかそのクリエイティヴィティは成長するにつれ、失われていく。

この「ボンクリ」では、大人になっても5歳の子供のままクリエイティヴでいる人達の作品を紹介。今年はコロナも制限が許す限りの範囲で子供たちも参加でき、子供たちが演奏するコンサートがある。子供から大人までが新しい音楽に触れ、楽しめるイベント。演奏家と共に参加し、一緒に音楽を作るワークショップもあり、即興音楽もあり、箏をはじめとする日本の伝統音楽、エレクトロニクス(電子音楽)も、アンサンブル作品もある。東京芸術劇場館内に「新しい音楽」が満ち溢れる。

一生分、少なくとも1年分の“世界中の新しい響き”を堪能することができるまたとない機会。7月15日&16日は是非芸劇へ!

ボンクリ・フェス2022|大友良英(作曲家)メッセージ

ボンクリ・フェス2022|佐藤紀雄(アンサンブル・ノマド)メッセージ

Dai Fujikura: Star Compass for viola / Anne Leilehua Lanzilotti

THE WAY OF THE NAVIGATOR (日本語字幕 ポリネシア伝統航海術について)

ハワイ通信ゼミ第4回「太平洋の古代航海術講座」〜日本航海協会 理事長 奥 知樹

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください