#1286 『Aruán Ortiz Trio / Hidden Voices』
text & photo by Takehiko Tokiwa 常盤武彦
INTAKT RECRDS Intakt CD 258
Aruán Ortiz (p)
Eric Revis (b)
Gerald Cleaver (ds)
Fractal Sketches
Open & Close / The Sphinx
Caribbean Vortex / Hidden Voices
Analytical Symmetry
Arabesques of a Geometrical Rose (Spring)
Arabesques of a Geometrical Rose (Summer)
17 Moments of Liam’s Moments (Or 18)
Joyful Noises
Skippy
Uno, Dos y Tres, Que Paso Más Chévere
Recorded by Chris Allen at Sear Sound Studios, NYC on May 18 & June 25, 2015.
Produced byAruán Ortiz & Intakt Records.
キューバ出身で、様々なフォーマットの自己のグループや、ウォレス・ルーニー(tp)のグループで活躍するアルアン・オルティスが、満を持してリリースしたトリオ作品。アルバムの出発点は、ニューヨークのプロダクション、リヴァイヴ・ミュージックが、2013年にオルティスをキューレターとしてフィーチャーした、6回のコンサート・シリーズ“Music and Architecture”である。前時代の建築物にインスパイアされた曲をオルティス、デヴィッド・ギルモア(g)、ドリュー・グレス(b)、ナシート・ウェイツ(ds)のクァルテットで発表し、大きな成功をおさめ、2014年にドリス・デューク賞を受賞。そしてトリオのフォーマットに発展させたのが本作である。<Arabesques of a Geometrical Rose (Spring)>、<Arabesques of a Geometrical Rose (Summer)>は、同コンサート・シリーズで発表された曲である。キューバン・ルーツが垣間見える<Caribbean Vortex / Hidden Voices>、オーネット・コールマン(as,tp,violin)、セロニアス・モンク(p)の換骨奪胎である<Open & Close / The Sphinx>、<Skippy>も、その確固たる音楽観を主張している。オルティスは、ピカソ、ブラックらのキュビズムの絵画にインスパイアされて、新たな楽曲を制作したと語る。キュビズムの絵画はじっくりと対峙することによって、隠されたテーマが見えてくる。リズムや、ハーモニーに様々な仕掛けやレイヤーを施し、ループして何度も聴くことによって、隠された声 “Hidden Voice”が、浮かび上がることを意図したそうだ。エリック・リヴィス(b)とジェラルド・クリーヴァー(ds)が、難解に陥りやすい楽曲に、しなやかなグルーヴでスピード感を加味している。エンディングのフェスティヴァルでよく演奏されるキューバン・トラディショナルの<Uno, Dos y Tres, Que Paso Más Chévere>は、フェデリコ・モンボウ・スタイルのミニマリズムのソロ・ピアノに変換されている。この曲をオルティスは、エピローグでもあり、また新たに聴き直すプロローグとなると語っている。
CDリリース・ギグでは、冒頭の<Caribbean Vortex / Hidden Voices>にマウリシオ・ヘレーラとエニルド・ラスアがパーカッションで、アナイス・マヴェルがポエトリー・リーディングで加わり、さらにヴァージョン・アップした。レコーディング・メンバーとはちがうブラッド・ジョーンズ(b)、エリック・マクファーランド(ds)のリズム・セクションは、アルバムとはまた微妙に異なるリズム・ニュアンスを聴かせてくれた。
写真は2月2日、ジャズ・スタンダードにて。
関連リンク
Aruán Ortiz http://www.aruan-ortiz.com
No.216