#2416 『藤本一馬&林正樹 / Unfolding in Time』
text by Tomoyuki Kubo 久保智之
rings 3,300円(税込)2025年11月19日発売
01. Unfolding in Time
02. Values
03. Rebirth
04. Cage
05. Beyond Eyes
06. First Glimmer
07. Trail of Time
08. Ai
09. Vespera Glow
10. Stately Presence
藤本一馬 /Kazuma Fujimoto :Nylon-Strings Guitar, Electric Guitar
林正樹 /Masaki Hayashi :Piano
Recorded in January 2025 at What’s Zay STUDIO
Recording & Mixin Engineer : Taiji Okuda (studio MSR)
Assistant Engineer : Tomomi Baba
Piano Tuner : Naoko Iwamoto
Mastering Engineer : Shinya Matsushita (PICCOLO AUDIO WORKS)
Art Direction & Cover Art : Tomoko Nagashima
Inside Photography : Ryo Mitamura
Layout Disign : Shiro Kojima
Lable Producer : Masaaki Hara (rings)
Director : Shinichiro Mikawa (rings / diskunion)
Assistant Director : Riki Shinohara (rings / diskunion)
Produced by Kazuma Fujimoto & Masaki Hayashi
藤本一馬(g)と林正樹(p)、長年共演をしてきた二人による、ゆったりとしたとても贅沢な「音の対話」。
とても繊細で静謐な世界だが、それは単に落ち着いた穏やかな空気感というだけではなく、そこには、静けさの奥に柔らかな光や温度が宿った豊かな空間が広がる。
アルバムの最初の一音が流れた瞬間から、周辺の空気がふっと緩み、肩の力が自然と抜けていくような感覚になる。まるで午後の柔らかな陽だまりがそのまま音になったかのようなサウンドだ。
本作では、藤本一馬はナイロン弦のアコースティック・ギターを中心に演奏している。温かく柔らかな音が豊かに響く。ひとつひとつの音を丁寧に紡ぐ、流れるようなタッチが印象的だ。
また、いくつかの曲で使用しているエレクトリック・ギターのサウンドも、心地好い響きをもたらしている。ひとつは、クリーンなトーンでの透明感のあるとても美しいサウンド。またいくつかの曲で聴かれる、少しだけ歪ませたトーンによる表現は、藤本一馬のプレイの真骨頂。ここにもとても心を奪われる。静けさのなかに、上品な歪みの繊細なアクセントを忍ばせるそのセンスは、彼の音の魅力をより際立たせている。
対して林正樹のピアノは、まるで会話をするように語りかけてくる。柔らかなタッチで紡がれるフレーズには、聴き手の気持ちをそっと包み込むような優しさがある。その穏やかさのなかに時折ふっと混ざる、少しアウトしたラインも実に魅力的だ。静謐な雰囲気を壊すことなく、その場に小さな風穴を開け、空間を軽やかに循環させる。林のピアノには、静けさを動かす力があるようだ。その余白の扱い方、呼吸の置き方がこのデュオの魅力を一層豊かにしている。
二人の演奏には、互いの音を聴き合いながら、透き通った風景を描いているような動きが感じられる。主張し合うことは決してなく、必要なところにお互いに色を差し込み、やわらぎのある空気を大切に保ちながら進む。この距離感の絶妙さは、長年の活動を重ねてきた二人だからこそ築けるものなのではないだろうか。
柔らかく開かれた空間の中で、二人が自然体で和やかに語り合う姿が浮かぶようだ。聴き終わるころには、不思議な清々しさとやわらかな明るさが心の中に広がっている。
藤本一馬と林正樹のつくりだす、静けさの奥にあるどこまでも澄み切った美しい世界…… 心ゆくまでじっくりと味わいたい。
