#1526 『Matt Piet Trio / LIVE IN CHICAGO』
text by Atsushi Joe 定淳志
Matt Piet Trio / LIVE IN CHICAGO
Matt Piet, piano
Charlie Kirchen, bass
Julian Kirshner, drums
- Improvisation One
- Improvisation Two
- Improvisation Three
- A Tad Forward
- Aluminum Ally
- Trialogue
- Assembly Required
- Shan’t Be Gone Long
- I
- IIa
- IIb
- IIc
Recorded from autumn of 2016 to spring of 2017
Matt Piet はシカゴを拠点に活動するピアニスト。近年多くの作品をリリースし、いろいろな媒体で取り上げられ、“ライジングスター”として期待されている。
同地出身の彼はボストンのバークリー音楽院に学んだ後、そのまま当地に留まることも、ニューヨークへ進出することもなく、シカゴに戻った。現在、自身の名を冠した「Matt Piet Trio」(with Charlie Kirchen, Julian Kirshner)、「Four Letter Words」という名のセシル・テイラー以来伝統編成のフリージャズトリオ(with Jake Wark, Bill Harris)、同編成の「Rempis / Piet / Daisy」(with Dave Rempis, Tim Daisy)という3つのトリオを活動の軸にしつつ、さまざまな参加作品がある。
本作は2016年秋から17年春にかけてシカゴで録音された『Live at Constellation』『at the Hungry Brain』『Live at Elastic Arts』、一部入手困難なものも含め、これまでにリリースしたライブアルバム3作品を発表順に集成したデジタルアルバムだ。(なお3枚に先立ち、ベーシストの異なる『Of Sound Mind』=Amalgam Music, 2016=という作品もある)
Matt Piet のピアノは、『Live at Constellation』や『Live at Elastic Arts』のようなインプロヴィゼーション主体の演奏においては音が粒立ち、敏捷で攻撃的な、ひたすらに空間を裂くような鋭角的なイメージ。かと思えばギアを入れ換え、ミニマムな、あるいは重々しいリフレインが脳を痺れさせるような官能をもたらす。一方、『at the Hungry Brain』ではジャズ的な旋律、リズム、ハーモニー、スウィング感が比較的わかりやすく提示されるが、本質は前二者と同様だ。彼のピアノは脳の快楽であると同時に、何より身体に響いてくる心地よさがある。