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CD/DVD DisksNo. 259

#1644 『Jaskulke Sextet / Komeda Recomposed -inspired by the creation of Krzystof Komeda-』
『ヤスクウケ・セクステット/コメダ再構築〜クシシュトフ・コメダの創作に拠る』

text by Hiroaki Ichinose  市之瀬浩盟

Sea Label 2018 (Poland)

Slawek Jaskulke スヴェク・ヤスクウケ (grand & upright p)
Emil Miszk エミール・ミースク (tp,fl-h)
Piotr Checki ピョートル・ヘツキ (ts)
Michal Jan Ciesielski ミハエル・ヤン・チェシェルスキ (as)
Piotr Kulakowski ピョートル・クラコフスキ (b)
Roman Slefarski ロマン・スレファルスキ (ds)

1.Kato
2.Oxis
3.Nastic
4.Crazy
5.Svante
6.Etic
7.Szaro
8.Epilog

Composed by Slawek Jaskulke inspired by the creations of Krzysztof Komeda
Recorded at the Witold Lutoslawski Concert Studio of Porlish Radio Warsaw,March 2018
Music production: Slawek Jaskulke
Executive producer,promotion: Agata Kuznika
Recording engineer: Ignacy Gruszecki
Recording assistant:Jakub Kutera
Editing,mixing & mastering: Ignacy Gruszecki, Monochrom Studio Poland
Grand & Upright Piano turning: Piotr Pilzak


世の中に “コメダ・カバー集” 数ある中で異色中の異色作ではなかろうか…

自身作ではソロ、トリオで我が国の輸入盤ハンターの間でも人気があるポーランドのピアニスト Slawek Jaskulke が挑む渾身の意欲作は “コメダ・カバー” を通り越した “コメダ再構築” 。
クシシュトフ・コメダの名曲をズタズタに分解して再構築している、そんな大胆さがプンプン匂うのである。
緻密なアンサンブルの中にちょこちょこと聴き慣れた “あのメロディ” が漂っては隠れていく。その中を同胞の若手奏者達が熱いソロを闘わす。これが決して “おぃ、ちょっと演ってみようぜぇ〜” とか単なる “ウケ狙い” で演っているのではないことはこのジャケット写真を一目すればわかるのではないだろうか。
リーダーのスワヴェク・ヤスクウケの姿である。床に座り込み、腕まくりした右手にはペンを、左手は自筆と見受けし楽譜を指差し、口にはこれまた (色違いなんだろうか) ペンを咥え、何十枚もの楽譜と格闘している横顔の写真を見て些かの妖気、熱気、殺気を感じない方がいるとすれば即ちそれは “不幸なリスナー” であると言わざるを得ないのではないか、それくらい生半可な気持ちではこのような作品は出来ないと私などは感じてしまう。
<Kattorna>は “KATO”、<Crazy Girl> は”CRAZY”、 < Svantetic>に至っては途切れずに続いているのだが “SVANTE” と”ETIC” の2曲にとそれぞれ名を付けられ、文字通り新たな名曲、名演となって再構築されていく様は聴いていて快感以外の何物でもない。

37歳という若さで鬼籍に入ったコメダ。不慮の事故だそうであるが、40歳のヤスクウケがこれからもポーランド・ジャズ界の一翼を担っていくに違いないと確信させる1作である。我が国でも彼ばかりでなくもっともっと広く知られてほしいポーランドのジャス奏者、私的名盤がたくさんあるのだが…いや、人知れず密かに聴き入る名盤に巡り会えた “選ばれしマニア” として自分自身を祭り上げて悦にいっている瞬間が輸入盤ハンターの誰もが味わう喜びであると私は日々感じながら次の私的名盤を探し求めているのである。


市之瀬浩盟

長野県松本市生まれ、育ち。市之瀬ミシン商会三代目。松本市老舗ジャズ喫茶「エオンタ」OB。大人のヨーロッパ・ジャズを好む。ECMと福助にこだわるコレクションを続けている。1999年、ポール・ブレイによる松本市でのソロ・コンサートの際、ブレイを愛車BMWで会場からホテルまで送り届けた思い出がある。

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