# 2263『アントニオ・アドルフォ/ボッサ 65〜カルロス・リラとホベルト・メネスカル』
『Antonio Adolfo『BOSSA 65: Celebrating Carlos Lyra and Roberto Menescal』
text by Keiichi Konishi 小西啓一
AAM Music
Antonio Adolfo (piano)
Danilo Sinna (saxophone, alto)
Marcello Martins (saxophone, tenor)
Jesse Sadoc (trumpet)
Rafael Rocha (trombone)
Jorge Helder (bass, acoustic)
Rafael Barata (drums)
Dada Costa (percussion)
Lula Galvão (guitar)
1. Coisa Mais Linda
2. Samba Do Carioca
3. Bye Bye Brasil
4. O Barquinho
5. Maria Moita
6. Tete
7. Marcha Da Quarta-Feira De Cinzas;
8. Rio
9. Nos E O Mar
10. Sabe Voce.
別項の『ダフニス・プリエト feat. ルチアナ・スーザ/カンター』とルチアナ繋がりということで、ブラジリアン・ミュージック(MPB)の生き字引とも言える大物ピアニスト&アレンジャー、アントニオ・アドルフォの新作『ボッサ 65』も併せて紹介しておきたい。
彼の作品は 本誌 Jazz Tokyo ではすでにしばしば紹介しているので,読者にはお馴染みの存在と思うが、一般の認識度が低いのは残念なこと。彼はミルトン・ナシメントらブラジルの主要音楽家の作品を紹介する一連のシリーズものを出し続けているが、これもそのひとつ。今回スポットを当てるのはカルロス・リラ (1939~) とホベルト・メネスカル (1937~) のふたりで、両者ともにボサノバ運動の主要メンバーなのに、ジョビンやジョアン・ジルベルトに比べると今いち存在感に乏しい。それだけに彼らの復権(?)ということも、アントニオは考えたに違いないが、じつのところこのふたりもう物故しているのか...と思いきや、80代半ばで未だ元気に活躍しているようである(申し訳なし...)。
ここでのアントニオは、名手マルセロ・マルティンス (ts) などの3管編成をうまく生かし、Ⅿ①(<最も美しいもの>)やⅯ⑤(<マリア・モイタ>)といったカルロス・リラの代表曲やホベルトの代名詞とも言えそうなⅯ④(<リトル・ボート>)など、このふたりの主要ナンバー 10曲を、ウエスト・コースト・ジャズ風の洗練された洒脱なアレンジで、センス溢れるブラジリアン・ミュージックに仕立て上げ、その魅力を最大限に浮き立たせる。百戦錬磨の彼ならではの鮮やかなペン捌きとピアノ技である。あまりにくそ暑すぎる今年の夏、恰好な音の清涼剤とも言えるのでは...。