#1302 KAZE + モリイクエ 2 days
2024年4月12日(金)& 4月13日(土)公園通りクラシックス
text & photo by Kazue Yokoi 横井一江
【出演】
KAZE [田村夏樹 (tp) クリスチャン・プリュヴォ Christian Pruvost (tp) 藤井郷子 (p) ピーター・オリンズ Peter Orins (ds)]
+モリイクエ (electronics)
ゲスト:
4月12日 与之乃 (琵琶)
4月13日 石川高(笙)
【セットリスト】
4月12日
1st set: 邂逅の巻、不死
2nd set: 壇ノ浦、インスピレーション2
4月13日
KOUGO、インプロ、インスピレーション2
クリスチャン・プリュヴォとピーター・オリンズが久々に来日、藤井郷子と田村夏樹とのユニットKAZEにモリイクエを加えた編成で国内をツアー、公園通りクラシックスでの2 daysでは異なる邦楽器奏者をゲストに迎えてのライヴを行った。
邦楽器奏者との共演はピーター・オリンズのアイデアだった。彼は以前ベトナムの民族楽器とのバンドをやっていたようで、各地の伝統音楽/民族音楽に興味があるのだろう。
初日のゲストは琵琶奏者の与之乃、彼女は田村とは共演、CDをリリースしているだけではなく、来日した2人とも既に面識があった。今回の公演では全編に亘って藤井が作編曲を担当したが、一部で演奏した<邂逅の巻>は田村が書いた物語に基づいて与之乃が詞を書き、<不死>も与之乃の作詞。琵琶という楽器の特色、そして弾き語りがあるため、古典的な側面を持つ作品だが、即興演奏を上手く組み入れており、独特の雰囲気を醸し出していた。2部はよく知られた古典<壇ノ浦>、日本語を解さないクリスチャン・プリュヴォとピーター・オリンズの2人にはあらかじめ物語については解説していたと聞いたが、彼らはキーワードと奏でられる音の雰囲気を掴んで演奏していたようだ。むしろこれが功を奏して、新鮮な風を呼び込んでいたと私は思う。言葉がわかると説明的になったり、背景に回ってしまいかねないからだ。
2日目は邦楽器とはいえ、前日とは全く異なる楽器である笙の石川高がゲスト。モリイクエと石川がエヴァン・パーカーのエレクトロ・アコースティック・プロジェクトで一緒だったことが縁で繋がった。モリ以外の奏者は初共演で、特にフランスから来た二人にとっては、笙を吹いていない時には電気コンロにかざしながら、くるくる回して温めて水分を飛ばず様子といい、楽器そのものに興味津々の様子である。この日は長めのワンセット。<KOUGO>という曲はそのタイトル通りに演奏を繋いでく、作曲されたパート以上に個人のイマジネーションが問われる作品だ。インプロを挟んでの<インスピレーション2>は前日も演奏したが、構成はあるが自由度の高い作品で、メンバー構成が変わればこれほど違う演奏になるのか、というのが正直な感想で、そこがまた面白い。国内外の即興演奏家とも共演してきた石川のこのような場での演奏は巧みで、空間の捉え方といい、彼の演奏が入ると場面が展開し、空気感が変わるのが興味深かった。
もう随分と前になるが、アメリカ人の尺八奏者と雑談をしていた時に邦楽器とエレクトロニクスは相性がいいと言っていたことを思い出した。今回のメンバーにモリイクエが居たことで音響的により豊かになったといえる。そして、トランペットの田村とプリュヴォが多様な特殊奏法を見出している演奏家であり、藤井の内部奏法、オリンズのドラミングや小物の効果的な扱いといい、拡張的な演奏にも長けたミュージシャンが顔を合わせたことで、自由な対話が作品の中で繰り広げられた。なかなか型破りな編成によるライヴだったが、音に対する探究心に満ち溢れた得難い時間だった。
4月12日
KAZE [田村夏樹 (tp) クリスチャン・プリュヴォ Christian Pruvost (tp) 藤井郷子 (p) ピーター・オリンズ Peter Orins (ds)]+モリイクエ (electronics)
ゲスト:与之乃 (琵琶)
4月12日
KAZE [田村夏樹 (tp) クリスチャン・プリュヴォ Christian Pruvost (tp) 藤井郷子 (p) ピーター・オリンズ Peter Orins (ds)]+モリイクエ (electronics)
ゲスト:石川高(笙)