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YUMI'S ALLEY~No. 201

Yumi’s Alley #25 「阿佐谷ジャズストリート2012」

photo & text by Yumi Mochizuki  望月由美

今年で第18回を迎えた「阿佐谷ジャズストリート2012」、今年は杉並区制80周年にもあたり、ジャズストリートと区政80周年記念パレードとのジョイントとなり杉並区全体が大いに盛り上がりこのイヴェントを楽しんでいた。10月26日(金)と27日(土)の二日とも天候にも恵まれどの会場も立ち見がでるほどの大盛況であった。共通パスポートで全会場自由に入れるパブリック会場と、青空のもと無料で楽しめるストリート会場、そして阿佐谷のライヴハウスやレストランなどのバラエティ会場でさまざまなセッションが繰り広げられた。
今年の阿佐谷の注目すべきポイントは同時に開催された杉並区制80周年記念パレード。
オリンピック金メダリストで国民栄誉賞を受賞した今もっとも輝いている時の人、吉田沙保里さんの参加がこのパレードの目玉となった。吉田さんの登場を一目見ようと沢山の人が中杉通りを埋め、警視庁騎馬警官隊の行進などが華やかなに繰りひろげられた。
パレードは27日(土)の午前中、杉並区役所からスタート。80周年を祝う人、吉田佐保里さんをひとめ見ようという人が区役所前に詰めかけ、人だかりで肝心の式典が見えないほどの賑わいであった。

☆警視庁騎馬警官隊

パレードは白バイの先導の元、警視庁騎馬警官隊が先陣を切った。先頭は女性の騎士で中々かっこいい。中杉通りの片斜線のみ交通規制し片側は車が通る中のパレードである。

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警視庁騎馬警官隊の行進

☆中杉通りを歩く吉田沙保里さん
ロンドン・オリンピック・女子レスリングの金メダリストの吉田沙保里さんもパレードに参加、中杉通りには鈴なりの人だかりでごったがえした。吉田さんの隣には名物コーチ、そして左側には田中杉並区長が中杉を歩くという珍しい光景も見られた。

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中杉通りを行進する田中杉並区長と吉田沙保里さん&コーチ

☆阿佐谷駅前に到着した警視庁騎馬警官隊
青梅街道沿いの杉並区役所から中杉通りを行進した杉並区制80周年記念パレードはJR阿佐谷駅前の交差点に到着。パレードをひと目見ようという沢山の人で溢れかえった。

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JR阿佐谷駅前交差点の警視庁騎馬警官隊と歓迎する人々

☆ボーイ・スカウトも参列
パレードにはボーイ・スカウトも参列し元気に2020年オリンピック招致を呼びかけた。

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中杉を行進するボーイ・スカウト杉並第十二団

☆阿佐谷駅南口噴水前の吉田沙保里さん
パレードの到着点は阿佐谷駅南口噴水前。特設ステージに立った吉田沙保里さんは2020年オリンピックの日本開催を声たからかに呼びかけた。ステージにはボーイ・スカウトのみなさん、杉並区長、国会議員など沢山の人が区政80周年を祝い、オリンピック招致を全員で唱和した。

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阿佐谷駅南口噴水前特設ステージの吉田沙保里さん

☆第18回阿佐谷ジャズストリート
本題の阿佐谷ジャズストリートは恒例の山下洋輔さんの神明宮神楽殿での演奏や初回より連続出演のマーサ三宅(vo)、同じく常連の鈴木良雄BASS TALK、峰厚介カルテット、地元出身の小田陽子(vo)や森崎Bella(vo)、大橋美加 (vo)など中央線ゆかりのミュージシャン、ヴォーカリストが多数出演しジャズストリートを盛り上げていた。
そして今年からパブリック会場となった久遠キリスト教会では「ギラ・ジルカfeaturing矢幅歩with竹中俊二」がツイン・ヴォーカルで新会場のお披露目をして喝采を浴びた。また、ンジャイ・ローズ3兄弟のパーカッションをフィーチャーした竹内直の「サバールジャズ」がホットなリズムの饗宴で気を吐いた。
また、ブルースの「吾妻光良&The Swinging Boppers」が初登場、秋満義孝や稲葉国光などのヴェテランからジャズ漫画家ラズウェル細木の<ジャズ入門講座>などバラエティに富んだプログラムが目白押し。無料のストリート会場では杉並区役所音楽部リズムテイストや杉並第二小学校ウインドバンド、都庁スイングビーツなどアマチュアバンドも多数出演、街中をディキシーランド・ジャズ・バンドが演奏しながら巡回するなどプロ、アマ、市民が一体となってまさに街全体がジャズ一色に染められた二日間であった。

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JR阿佐谷駅南口噴水前の特設ステージ

#1  竹内直・サバールジャズat 産業商工会館
これまでジャズストリートでは「ザムザ阿佐谷」に出演したことのある竹内直(sax)が今年は「竹内直・サバールジャズ」でパブリック会場に久々の登場。26日(金)夜の産業商工会館は神明宮神楽殿の山下洋輔「SOLO&MORE」と同じ時間帯とあってお客さんの入りが懸念されたが、流石、竹内直の吸引力は威力を発揮しほぼ満席状態でサバールジャズのリズムに会場はのりに乗った。

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竹内直(ts)

サバールは西アフリカ・セネガルの伝統的な太鼓の呼称で、セネガルの至宝といわれているドゥードゥー・ンジャイ・ローズが名手として知られている。ドゥードゥーの息子達ワガン、アブライ、ボガのンジャイ・ローズ3兄弟は日本に滞在して様々な場面でサバールの魅力を伝えているが竹内直の「竹内直・サバールジャズ」にも参加し、父親ドゥードゥー・ンジャイ・ローズ直伝の技で産業商工会館にアフリカン・リズムの饗宴を繰り広げてくれた。これは普段のライヴハウスでは味わえない開放感である。

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ンジャイ・ローズ3兄弟

キーボードの野本晴美も竹内直とンジャイ・ローズ3兄弟をしっかりと支え、リズムの嵐の中に爽やかなそよ風を吹き込んでいた。

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野本晴美(key)

グループ全体の土台はエレクトリック・ベースのグレッグ・リー。安定したリズムで3兄弟をしっかりと支えている。グレッグの(elb)はひずみのないクリーンな音色が艶っぽい。

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グレッグ・リー(elb)

ンジャイ・ローズ3兄弟のリズムの洪水に煽られて、竹内直のテナーも頭のてっぺんから足の先までエネルギーがびっしりの剛速球、火を吹くようなソロの連発で会場を大いに盛り上げる。竹内直の今回の企画「バザールジャズ」はジャズストリートにぴったりマッチし大成功裡に終わった。

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竹内直(ts)

#2  ギラ・ジルカ 久遠キリスト教会に登場
今年から阿佐ヶ谷ジャズストリートのパブリック会場に参加することになった久遠キリスト教会にギラ・ジルカが出演、久遠キリスト教会の阿佐谷ジャズストリート初参加を祝うお披露目ライヴを行った。久遠キリスト教会の会場は定員200名、しっとりと落ちついたとても響きのよい会場である。

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久遠キリスト教会のステージ

はじめ竹中俊二がステージに立ちギター・ソロからのスタート。そのあとギラが登場しギターとのデュオで1stアルバム『All Me』(Jump World) から<The Boy From Ipanema>を唄う。イパネマの娘をもじってボーイとしたものでジョビンの曲。続いてギラの2作目『appearance』(Jump World)に収録されている<ワン・ノート・サンバ>とジョビンの曲が2曲続き久遠キリスト教会にまろやかなブラジルの香りを漂わせ、阿佐ヶ谷の初秋の空気にぴったりとマッチングしていた。そのあと矢幅歩が加わりツイン・ヴォーカルで<L・O・V・E・>。会場も手拍子をとり、ステージと一体となって全員が一緒に唄う和気藹々のステージが展開された。

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ギラ・ジルカ featuring 矢幅歩 with 竹中俊二

久遠キリスト教会の空間は響きがとてもよくアコースティックなツイン・ヴォーカルには最適な環境となってギラと矢幅のツイン・ヴォーカルも一段とさえ渡った。

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L:矢幅歩(vo)  R:ギラ・ジルカ(vo)

#3「ウイズ・ユア・ソウル」峰厚介カルテット at 産業商工会館
阿佐谷の住人でジャズストリートの常連、峰厚介(ts)はこれまで大西順子(p)やフォーサウンズなど多彩なゲストを迎えて阿佐ヶ谷のひと達を楽しませてきたが、今回は峰カルテットでの出演。
普段、レパートリーはオリジナル中心の峰厚介であるが今回はウエイン・ショーターの<Limbo>やエリントンの<In A Sentimental Mood>など耳なじみの選曲で大いに客席を沸かせた。しかし圧巻はやはり峰のオリジナル<ウイズ・ユア・ソウル>であった。昨年の震災直後にレコーディングしたアルバム『ウイズ・ユア・ソウル』(Mine-G) の冒頭を飾った曲であるが峰厚介がなめらかで美しい音色で思いのたけの全てをかたむけて朗々と歌い上げる。この一曲に峰厚介のエッセンスがすべて凝縮されているようで峰カルテットが存分に堪能できた。

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峰厚介(ts)

峰厚介の迫真の<ウイズ・ユア・ソウル>に呼応するかのように本田珠也(ds)も火の吹くようなドラム・ソロを連発、居合わせた観客を熱狂させた。峰厚介が魂を込めて作った曲の持つ力は素晴らしい。

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本田珠也(ds)

峰カルテットの紅一点、清水絵理子もウエイン・ショーターの<Limbo>でモーダルなプレイで力演、華をそえる。

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清水絵理子(p)

自己のレーベル「MINE-G」を立ち上げて1年半、峰厚介のテナーはますますメロデイアスで滑らか、おおらかに歌い上げる。バックで支えるのは楠井五月(b)、しなやかで柔らかなトーンで峰をサポート。

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L: 楠井五月(b)  R: 峰厚介(ts)

#4.ストリートを楽しむ
総武線・JR阿佐谷駅を降りるとクリス・コナーの甘いハスキーな歌声で迎えられる。この二日間はJR阿佐谷駅構内もジャズを流して歓迎してくれるという粋な計らいが嬉しい。そして一歩駅の外へ出るとミルト・ジャクソンのグルーヴィーなヴァイブが鳴り響く。街のあちこちでジャズが鳴り響く。一瞬、ジャズの黄金時代に時間が止まったかのような錯覚に見舞われてしまう。

● JR阿佐谷駅北口のアーケードにある由緒ある古書店では例年、道路に面してジャズ書が沢山飾られている。昨年はマックス・ローチのプログラムがディスプレイしてあったが今年はマッコイ・タイナーのコンサート・プログラム、1800円の価格が設定されていた。そしてその隣にはジャズ書がびっしりと棚に詰まっている。

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古書店の店先

●青梅市Reina Kitada at 阿佐谷駅南口噴水前
杉並区の区政80周年式典 の行われた阿佐谷駅南口噴水前は式典の後ストリート会場になり、様々なグループが交代でセッションを行っていた。27日(土)の陽の落ちる前のゆったりとした時間帯に杉並区長の紹介でReina Kitada(vo,vln)が登場、流暢なフランス語でソフトに唄いかける。フランスと日本を往き来して活躍しているというReina Kitadaはヴォーカルとヴァイオリンで洗練されたフランスのエスプリをたたえる。ヘリンボーンのコートが格好いい。

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Reina at 阿佐谷駅南口噴水前

●ストリートの常連、人間ジュークボックス
毎年、決まってJR阿佐谷駅高架下のゴールド街まえに登場するのが人間ジュークボックス。コイン200円を投入すると紙芝居のようなボックスの窓が開きトランペットでリクエスト曲を演奏する。ジャズストリートのプログラムには載っていないので非公認のようだが必ずゴールド街の入り口に出没する。今年は片手にトランペット、片手にリズム・ボックスを持ちリズム・セクション付きの演奏。小さな子供がお父さんに肩車をしてもらいAKB48<会いたかった>をリクエスト。レパートリーの目録にはないようだったがアドリブで対応しうけに受けていた。

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人間ジュークボックス

#5.ジャズアート展
今年も杉並区の小学生によるジャズアート展が阿佐谷パールセンターに展示されジャズストリートを訪れる人の目を楽しませてくれた。アーケードに飾られた作品はどれも明るく楽しい力作ばかり。実際には20数点展示されていて、ここに掲載したアートはそのほんの一部である。

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L: 杉並第一小学校   R: 杉並第七小学校
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杉並第ニ小学校

#6.阿佐谷ジャズストリート2012
今年の阿佐谷ジャズストリート2012は10月26日(金)、27日(土)の二日間、街じゅうがジャズを楽しむ人々で溢れ成功裏に終わった。
ジャズストリートを企画し支えるのは実行委員会で、すべてボランティアで運営されている。阿佐谷ジャズストリート実行委員会のお話によると出演バンド数が総勢195バンド、出演ミュージシャンは1300人、観客数は二日間で延べ5万人という大規模な祭典であった。
第18周年を迎えた今年は杉並区制80周年記念パレードとのジョイントで大変な賑わいとなりパブリック、ストリートそしてバラエティの各会場で心浮き立つ楽しい演奏が繰り広げられ、訪れた人々を楽しませてくれたのである。

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阿佐谷ジャズストリート2012

望月由美

望月由美 Yumi Mochizuki FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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