#61 今田勝さんとの仕事「追悼編」
text: Kenny Inaoka 稲岡邦彌
ピアニスト、コンポーザーの今田勝さんが亡くなった。5月30日、享年93。死因は老衰ということだから大往生だろう。
所属事務所のTCP亀川衛代表から紹介されてアルバム制作に携わることになったが、僕が知り合った頃の今田さんは真面目な職人肌のミュージシャンで、正直なところ当初はなかなか接点が見つからなかった。
同じ事務所に所属していたジョージ大塚さんとはハードコアな”ジャズ・フュージョン”を手掛けており(こちらは、「マラカイボ」)、時代のトレンドもあり今田さんも 「ナウイン」(ナウ=今だ、ウイン=勝)名義のバンドを結成、フュージョン・テイストの音楽にシフトしていった。今田さんは典型的なメロディ・メイカーで、しかも一度耳にしたらすぐ口に出せるような親しみやすいメロディをいくつも生み出した。当時のTVからはよく今田さんのメロディが流れていたものだ。ハイライトはNYで制作した2枚のアルバム。しばらく、お預けを食らっていた本来のジャズ・スタンダード・ファンのために『Songs on my Mind』という真性ジャズ・アルバムを制作して今田さんとの仕事は終わりを告げた。
今田さんのご自宅があった保土ヶ谷に近い旭区で毎夏開かれるジャズ・フェスにはレギュラーで出演されていて何度か聴きに出かけたが、転居してからはその機会もなく、消息も途絶えていたところの訃報だった。ゴルフ好きだったジョージさんやかつてのゴルフ仲間とあちらの世界でもゴルフに興じておられることだろう。
今田さんとの仕事については、「ある音楽プロデューサーの軌跡 #44 今田勝との仕事」にその詳細を記したので、興味のある方は参照されたい。
ある音楽プロデューサーの軌跡 #44「ピアニスト今田勝さんとの仕事」ジョージ大塚, 今田勝, 亀川衛, TCP, ナウイン
