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河村写真事務所No. 261

河村写真事務所 #002「高柳昌行|富樫雅彦」

photos by Koichi Kawamura 河村宏一
text by Kenny Inaoka 稲岡邦彌



高柳昌行(1932年12月22日 – 1991年6月23日)
*写真は、1991年4月15日 新宿・安田生命ホールでのコンサートから
富樫雅彦(1940年 3月22日 – 2007年8月22日)
*写真は、1992年8月、FM東京ホールでのセシル・テイラー、一噌幸弘とのレコーディングから

共に東京生まれのふたりの異能のジャズ・ミュージシャン、高柳昌行(g)と富樫雅彦(ds) の共演の記録はいくつか残されている。
『We Now Create』(日本ビクター)は、日本のフリージャズ最初期のスタジオ録音によるアルバムで、富樫雅彦を中心に高柳昌行、高木元輝ts、吉沢元治bの4人がそれぞれが中心となった演奏が4曲収録されている。録音は、1965年5月23日でリリースは同年9月25日。 次いで公開されたのが1972年の『銀巴里セッシヨン』 (TBM) だが、録音は1963年6月25日で、両者の演奏の記録としては前者に遡ること約2年。
『銀巴里セッション』は、当時、実験的なジャズの追求を目指して金井英人b、高柳昌行g、富樫雅彦ds、菊地雅章pにより結成された音楽集団「ジャズ・アカデミー」が銀座のシャンソン喫茶「銀巴里」を場に、「ジャズ・アカデミー」の4人に稲葉国光b、中牟礼貞則、日野皓正tpを加えたグループ「新世紀音楽研究所」による1963年6月25日に収録された研究発表会の一部である。仄聞するところによると、「ジャズ・アカデミー」は金井英人が、「新世紀音楽研究所」は高柳昌行がリーダーシップをとっていたようである。ちなみに、高柳と富樫に共通するのはドラッグ禍で(当時はヒロポン注射が中心)、共に有罪判決を受け、高柳は1年、富樫は1年半それぞれ収監される経験を有する。孤高のミュージシャンが創造の苦しみから回避するために手を出し、習慣化したものと思われるが、当時は一種のファッションとして蔓延していたことも事実のようだ。『銀巴里セッション』は、富樫が解放されて1週間後の演奏で、高柳は悪習から脱する覚悟の最後の演奏機会だったという。
2014年7月にドクター・ジャズこと内田修氏のコレクションを収蔵・展示する岡崎市立図書館から佐藤允彦の監修によりリリースされた『内田修ジャズコレクション/人物 Vol.1 高柳昌行』にも1曲ふたりの演奏 〈ポートレート〉が収録されている。これは1984年4月28日、名古屋のヤマハ・ジャズ・クラブの20周年記念コンサートに内田修氏肝入りのデュオとして出演した際の記録である。Youtubeで試聴可能なので下に引用しておいた。
時を同じくして、富樫雅彦のコレクションから盟友・佐藤允彦の監修により公開されたアルバムがもう1点ある。富樫雅彦アーカイヴス第1弾としてリリースされた『デュオ・ライヴ 1984』(スタジオソングス)だ。これは、先のヤマハのライヴから5ヶ月後の9月29日に同じ名古屋のクラブ「Far-Out」で収録された演奏。
1年後の2015年9月にDIWからリリースされたのがふたりのデュオ作『パルセーション』で、1983年5月27日の芝・増上寺のコンサートを収録したもの。こちらは先の2作のほぼ1年前の演奏で、このあたり両者の積極的な接触が持たれていたようだ。厳しい演奏内容とは対照的なふたりが川辺で談笑するジャケット写真が目を引く。
ちなみに私自身は幸いにも富樫さんとは何度か創造の場を共有させていただいたが、高柳さんとは個人的な接触はなかった。1973年6~7月、副島輝人氏が主催した「インスピレーション&パワー フリージャズ大祭1」を記録した2枚組コンピレーションに、富樫雅彦+佐藤允彦デュオに続けて高柳昌行ニュー・ディレクション・フォー・ジ・アーツ(集団投射)を収録させていただいたことと、亡くなる数ヶ月前(1991年4月)にProject21の大橋邦夫さんが主催した新宿安田生命ホールでの結果的にはお別れコンサートとなった「ESP盤発売記念コンサート」を目撃したにとどまる(上掲の写真はその安田生命ホールでのコンサートから)。 なお、本稿に登場したミュージシャン、関係者は稲葉国光さん、日野皓正さん、佐藤允彦さんの3人を除き残念ながらすべて鬼籍に入ってしまわれている。

 

 

河村宏一

河村宏一(Koichi Kawamura) フォトグラファー。1957年、岐阜県出身。河村写真事務所経営。業務用デジタルカメラによる撮影・画像処理を専門とし、とくに、不動産物件撮影に精通。他に、料理写真、音楽CDジャケット、舞台写真撮影[バレエ/フラメンコ/舞踏]、ポートレート 商品写真撮影。ドローンでの空撮も。

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