『Phil Woods & his European Rhythm Machine / Alive and Well in Paris』 伏谷佳代
■ Phil Woods & his European Rhythm Machine “Alive and Well in Paris” (1969)
フィル・ウッズ Phil Woods(as)/ジョルジュ・グルンツGeorge Gruntz(p)/アンリ・テクシェHenri Texier(b)/ ダニエル・ユメールDaniel Humair(ds)
「ジャズ事始」イコール「ジャズのアルバムを買い始めた時期」との認識で記憶をたぐれば、高校2年生、17歳のころに遡る(1992年)。ちょうどクラシックのピアノの道へ進むのを諦め、かといって進学校の受験勉強生活に楽しみを見いだせるわけもなく、世の中は恐ろしい美意識のJポップ(某&あすか、等)が席捲していたりで耳を塞ぎ、とりあえず現実逃避となりうる「かっこいいもの」をやみくもに求めていた時期だ。ジャズといえばサックス!、とたまたまレンタル屋で試聴したフィル・ウッズのこの名作に度肝を抜かれ、知り得ない時代や土地に思いを馳せた。アルバム自体は1968年録音だが、東芝EMIが1988年に発売したリイシュー・シリーズ “We Love Jazz”のうちの1枚。冒頭の “And when we are young” はもちろん、標題の “Alive and Well” 、エディ・ハリスの “Freedom Jazz Dance” と聴き進みながら、我ながら驚くほど各曲の展開をソラで覚えていることに気づく。ジョルジュ・グルンツのプレイは、ジャズ・ピアノにおけるその後の自分の好みの雛形となった。ちなみに、このリイシュー盤のライナー・ノーツは悠雅彦氏。あらためて正鵠を得た楽曲解説、と感服。
■シャクシャイン『大雑把』(1992)
梅津和時(sax)/今堀恒雄(g)/三好功郎(g) /清水一登(key)/水野正敏(b)/新井田耕造(ds)
一方で国内のジャズ、初購入はシャクシャインの『大雑把』。曲よし、音よし、とにかく巧い。1992年アケタの店でのライヴ録音。「シャクシャインの戦い」、「ナビゲーター・ブーガルー」の骨太なグルーヴはもちろん、3曲目のバラード「シーコ・メンデスの歌」、その男臭さのすべてが昇華されたメロディの粋に唸った。東京では夜な夜なこんな素敵な音楽が生まれているのか、とますます脱・地元の思いを強くしたものだ(若者によくある幻想ですが)。プレイの充実度はもとより(ツインギターも個性伯仲)、ライナー記載のメンバー自身によるプロフィールが統一感ゼロなのも面白く、世の中にはいろいろな人がいるものだと希望を持ったことも懐かしく想いだす。(*文中敬称略)