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Jazz and Far Beyond

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特集『私のジャズ事始』

私のインプロ事始/.esドットエスの場合 sara (.es)

2024年、JazzTokyo 20周年おめでとうございます。
周年企画にお声がけいただき、とても光栄ですし感謝してます。

2024年は私も様々な周年を迎えました。創造の拠点であるノマルは35周年、「ギャラリーノマル」をホームに誕生した.es(ドットエス: 橋本孝之 & sara / プロデューサー林聡)は15周年。15年は自分のインプロ歴でもあり、即興表現の扉を開いてくれた橋本孝之さんと出会ったのも15年前です。

即興でピアノを弾くことは「遊び」として子どもの頃からやっていましたが、人に聴いていただく活動はタカちゃん(橋本孝之さん)の声がけから始まりました。彼は一人で即興演奏を始めていたのですが、私に声をかけたのは「ピアノ弾けるの知ってたから、何か一緒に出来るかなと思って」。そんな彼の閃き?が今日の自分の土台になっているのですからご縁というのは本当に不思議なものです。

最近、ふと思ったことがあります。「ノマルって、パンクス!」。普通の現代美術ギャラリーの態度とは一線を画す。やりたい事をとことんやる。作家と一緒に創る。この世に無い作品を創るから道具も技術も全て開発のDIY。そんな過激なノマルで生まれ育ったドットエスは当然パンクス!

ドットエス結成が2009年秋。セッションを数回した頃にタカちゃんがLiveを決めてきました。「え?まだ何が出来るか分からないから」と躊躇する私に「俺、明日Liveって言われても出来るで、DIY精神や」。ずいぶん気が軽くなり、その2ヶ月後に初ライブ。以降タカちゃんとのセッションやライブは記録に残るだけで200回ほど、おそらく300回以上は音を交えたことでしょう。やった事ないこと、今やれと言われても出来る自分になり、感謝してます。

そんな表現の生みの親、橋本孝之さんが天へ旅立ったのが2021年5月。それからの3年間は色々な方と共演し、2023年5月より実験的音楽/音響プロジェクト「Utsunomia MIX」を宇都宮泰さん、母体のノマルと共に発足。1年余の間に8枚ものアルバムを制作し、現在に至ります。

その間、JazzTokyoサイトではドットエス、Utsunomia MIXにまつわる数多くのライブやアルバムをレビューいただき、インタビューでは橋本孝之ドットエス(橋本+sara+林聡)、sara(.es)と3本も公開いただき感謝に堪えません。私たちの表現はJazzではないですが「Jazz and Far Beyond」の領域に居る者として追い続けてくださる事は、活動の大きな大きな励みであり感謝してます。

さて、2024年6月8日、2年ぶりのSolo Liveをギャラリーノマルで行いました。Soloなのでこの日をドットエス15周年記念Liveと位置付けました。ライブ「Energy / エナジー」音源を何度か聴いて、よく人が「(インプロは)Soloを聴きたい」と言う意味が分かったように思います。Soloは色々をあらわにする、丸裸です。

「エナジー」は途中で空白があったり、楽器を変えて景色が変わったりもしているけれど、全体は一つで繋がっていました途切れなく。演奏の良し悪しは判断出来ませんが、途切れない流れの中に居たことを確認出来た時には安堵しました。

その際に、改めて自分にとっての即興演奏とはなんだろう、と考える時間を持ちました。そして誰に読ませるでなく、ちょっとしたメモを記しました。以下は、そのメモに少し手を加えたものです。

*****

即興演奏について

最も重要なのは
途切れが無いこと。
(出音のことではなく、そこに在るべき流れに対して)
意識的で無いこと。
(思考も衝動も無であること)

自分という存在を空っぽにして、そこにさし出す。
その空間と、さらに拡がる大いなる空の中で、
ただ流れと同化していく。

*****

言葉でうまく表現できていませんが、これが今の自分の即興演奏です。
さらに言葉として加えるならば、ドットエス的なインプロとして重要なのは「エネルギー」です。
音の大きさや激しさで語られることが多いですが、そういうことではありません。

途切れが無いこと。
流れと同化していくこと。
音を超えた、大いなるエネルギーと同化するためには、奏でる者のエネルギーが問われます。
ドットエスの橋本孝之&saraは、非常に近しいエネルギーを交感できていたように思います。

即興演奏を通じて、見えない、言葉にできない領域へ、どんどん近づいているのを日々感じます。
それは、橋本孝之さんも同じでした。
インプロ「ドットエスの場合」、以上です。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。すべての存在に、感謝してます。

2024年6月28日
sara(.es)


sara (.es) – piano, percussion
2009年、大阪の現代美術画廊「Gallery Nomart (ギャラリーノマル) 」をホームに橋本孝之 (alto sax, guitar, harmonica) と共にコンテンポラリー・ミュージック・ユニット.es (ドットエス) 結成。現代美術ディレクター林聡がプロデュース。領域を縦横無尽に横断する音楽家として独自の存在感を放つ。 アートシーンでは2011年「させぼアートプロジェクト」(長崎) 、2013年 静岡市美術館、2016年 大分県立美術館、2017年 / 2018年「龍野アートプロジェクト」(兵庫) 、2023年 水戸芸術館 (茨城) にて招聘公演。 音楽領域では、国内外の音楽家達とのコラボレーションによって生まれるボーダレスな世界― “音”と“音楽”の間 (ま) で交錯する感覚を表現。 2021年5月、橋本孝之永眠後も「音に限定しない表現」「アートへ向かう」という意志を「.es」名で承継。2022年秋、音響の鬼才・宇都宮泰との出会いを機に宇都宮の革新的なシステムとタッグを組んだ「Utsunomia MIX」プロジェクトを始動。さらに表現領域を交差させた水路を拓く。

.es
https://www.nomart.co.jp/dotes/
Utsunomia MIX
https://www.nomart.co.jp/utsunomiamix/

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