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このディスク2017(海外編)No. 237

#07 『カルロス・エンリケス/ザ・ブロンクス・ピラミッド』

text by Keiichi Konishi 小西啓一

『Carlos Henriquez/The Bronx Pyramid』
Blue Engine Records

Carlos Henriquez – Bass
Michael Rodriguez – Trumpet
Robert Rodriguez – Piano
Felipe Lamoglia – Tenor Saxophone
Ali Jackson – Drums
Bobby Allende – Congas

Special guests:
Rubén Blades – Vocals on “Descarga Entre Amigos”
Pedrito Martinez – Batas on “The Bronx Pyramid”
Renzo Padilla – Coro on “Descarga Entre Amigos”
Kike Gonzalez – Coro on “Descarga Entre Amigos”

1. The Bronx Pyramid ft. Pedrito Martinez
2. Cuchifrito
3. Descarga Entre Amigos ft. Rubén Blades
4. Joshua’s Dream
5. Guarajazz
6. Promesas
7. 9 O’Clock Bomba
8. Al Fin Te Vi
9. Nilda
10.Brook Ave

 

今回もまた他のレビューアーの方達の関心外…というか、一般的にも余り陽の当たらない感(?)もある~ぼく自身にとっては血沸き肉躍る快感アルバムも多い~ラテン・ジャズのフィールドから選んでみた。この分野、今年もかなり興味深いアルバムが発表されている。ベテラン勢では80才を超え、今や生きる伝説化したエディ・パルミエリ(p)の新譜『サビドュリア』(マーカス・ミラーやバーナード・パーディーなどフュージョン界の大物達も熱演)。生きのいい新世代からは、あの秀逸な音楽ドキュメント映画『キュー・バップ』で、強烈な存在感を放っていた若き鬼才、アレックス・トスカの率いるミクスチャー・ジャズ・ユニット“ユニティー”の新譜『ユニティー・イズ・パワー』~今のNYの空気感を見事に切り取り、現在進行形のラテン・ジャズを生々しく展開する大注目作等、色々と心惹かれるものも少なくなかった。ただこうした作品を差し置いて、今回ベスト1に選んだのは、ウイントン・マルサリス・オーケストラにも参加していた中堅ベーシスト、カルロス・エンリケスのリーダー・デビュー作『ザ・ブロンクス・ピラミッド』。

同世代で同じブロンクス地域を活動拠点としているトスカとこのロドリゲスだが、そのアルバムの肌合い、描き出す音景色はかなり異なる。ロドリゲスの方は(ぼくの考える)ラテン・ジャズの伝統をしっかりと踏まえた王道路線で、躍動する愉しさに溢れた会心作。堅実で力感溢れた出色なベース技を聴かせるカルロスは、ここでも1曲を除く全てを自身のオリシナルで纏めており、その才を印象付ける。フロント陣はマイケル・ロドリゲス (tp) とフェリッペ・ラモングリア (ts) の2管編成。この2人のコンビがまたジャズの良き時代を想い起させる溌溂さで真にグッド。そして彼らのカバーする範囲も実に幅広く、あのパナマの英雄ルーベン・ブラデス (vo) が加わる素敵なサルサ・ナンバーや、ラテン・ネオ・ハードバップとでも呼べそうなガッツ溢れるやんちゃなジャズ・チューン、パキート・デリベラとカチャイートの黄金デュオを彷彿させる、カルロスとマイケルとの珠玉デュオ(エルネスト・レクエーナの銘品)迄、その内容も多彩さを誇る。ラテン・ジャズの入門編としても恰好なものだけに、この分野に余りなじみ無い方達にも是非お勧めしたい仲々の逸品と言える。

小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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