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このパフォーマンス2021(国内編)My Pick 2021No. 285

#08 道場[八木美知依+本田珠也]

text by Kazue Yokoi  横井一江

2021年9月12日 公園通りクラシックス

八木美知依 electric kotos & electronics
本田珠也 drums


2021年の夏は、新型コロナウイルスの感染拡大と暑さが相まって、旅行はもちろん買い物にしろ、どこかに出かけること自体めっきり減ってしまい、加えてライヴをやるお店の営業時間もおかしなことになったため、しばらくライヴの現場から足が遠のいていた。いささかそんな暮らしに疲れていた時、久しぶりに足を運んだのが公園通りクラシックスでの道場[八木美知依+本田珠也]だった。

この日の演奏は、ファースト・セットから本田珠也のテンションが高く、そのアグレッシヴな演奏に八木美知依はエレクトリック箏を超絶技巧で奏でて応じる。八木はハイパー箏奏者とフライヤーによく記されているが、改良・進化させている箏はエレクトリック箏というよりもハイパー箏と言ったほうがいいのかもしれない。エレクトロニクスの使用も箏のサウンド面での拡張に功を奏し、聴くたびに音表現の領域が少しづつ拓かれていることがわかる。本田のエネルギッシュなドラミングも音色がクリアで、箏とのサウンドの絡みが絶妙だ。道場というユニット名で活動を継続させているだけある。フリージャズでも、ここまでパワフルに、そしてハイレベルの交歓を体験することは滅多にない。二人のサウンドに内面に抱え込んでいた靄が晴れるようだった。

10月2日のボンクリ・フェスでも道場を観た。こちらの演奏は会場となった東京芸術劇場ギャラリーの空間を意識した展開だった。八木はボンクリ・フェスで自身のTalonという箏カルテットでも出演。Talonとは猛禽類の爪、なんという絶妙なネーミングだろう。4面の異なる箏によるアンサンブル、こちらでの今後の活動も大いに期待したい。

横井一江

横井一江 Kazue Yokoi 北海道帯広市生まれ。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。ドイツ年協賛企画『伯林大都会-交響楽 都市は漂う~東京-ベルリン2005』、横浜開港150周年企画『横浜発-鏡像』(2009年)、A.v.シュリッペンバッハ・トリオ2018年日本ツアー招聘などにも携わる。フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年~2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)、共著に『音と耳から考える』(アルテスパブリッシング)他。メールス ・フェスティヴァル第50回記。本『(Re) Visiting Moers Festival』(Moers Kultur GmbH, 2021)にも寄稿。The Jazz Journalist Association会員。趣味は料理。当誌「副編集長」。 http://kazueyokoi.exblog.jp/

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