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InterviewsNo. 302

#261 マテウシュ・ガヴェンダ・インタヴュー

1990年生まれ。ポーランドのクラクフ音楽院で学んだ後に演奏活動開始。アラン・ウィクピシュ(b)とグジェゴシュ・パウカ(ds)という同国の俊才ふたりとともに結成したトリオを中心にして、PeGaPoFoやクラクフ・ジャズ・コレクティヴなど精力的な活動を展開するピアニスト、マテウシュ・ガヴェンダ。ジョン・スコフィールドやビリー・ハート、ジョン・メデスキ、ラルフ・アレッシらとワールドワイドな共演経験を持つ彼が、2017年にポーランド最高権威の音楽賞FREDERYKI賞にノミネートされた自己のトリオを率いて日本にやって来る。初来日直前のガヴェンダにインタヴューを試みた。

 

――音楽との出会いは?

マテウシュ・ガヴェンダ(以下MG):音楽に出会ったのは父親の影響が強いと思う。僕が子供の頃、父はプログレッシヴ・ロックのバンドでプレイしていていたので常に音楽が身近なところにあった。ライヴを初めて聴いたのは6歳の時。父の友人のひとりが地元でジャズ・クラブを経営していたので、そこで聴いた演奏がジャズの原体験になると思う。

――どのようなジャズをお聴きになっていたのですか?

最初に好きになったのはハービー・ハンコックだ。それから、マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーン、クシシュトフ・コメダを聴くようになっていった。ジャズだけでなく、フリードリヒ・ショパン、ヴォイチェフ・キラール、イゴール・ストラヴィンスキーもよく聴いていたので、彼らからの影響がとても大きいと思う。

――どのような点に魅力を感じられたのですか?

音楽に独自のストーリーがある点だ。彼らが生み出している音楽には、すべて独自の世界観があるんだ。そしてそこから独自の物語が紡ぎ出されていく感じがする。彼らの音楽からは演奏面だけでなく、作曲家としても強い影響を受けている。

――たしかに、ガヴェンダさんのトリオの演奏を聴いていると、強いストーリー性を感じることができます。トリオのメンバーであるアラン・ウィクピシュとグジェゴシュ・パウカとの出会いや魅力についてお話しいただけますか?

アラン(・ウィクピシュ)とグジェゴシュ(・パウカ)のふたりと出会ったのは学生時代。クラコフ音楽院でのことだ。学校の授業や試験などでよく一緒になって、それからリハーサルやクラブ・ギグなどさまざまな場面で毎日のように一緒に演奏していくようになった。とてもいい感じに進んでいたっので、すぐにトリオのための作曲を始めた。アルバムを出そうと思ったのは2014年頃だったかな。とてもいい演奏ができるようになってきたので、時期を逃さぬようにレコーディングしたのが『Overnight Tales』というアルバムだ。

――このトリオでガヴェンダさんが表現したいことは?

19歳の時に作曲を始めた頃からピアノ・トリオというスタイルを念頭に置いて曲を書いている。僕が生み出したいと思っているのは、精緻に練り上げられた楽曲の中でメンバー全員がインプロヴィゼーションを大きく発展させることのできる音楽。個々のソロに焦点を当てる昔ながらの表現方法ではなく、バンドがひとつになってインプロヴァイズしながらストーリーを描く音楽だ。

――具体的にはどのような点にポイントを置かれて作曲なさっているのですか?

いくつかの点が挙げられるけど、ひとつには、変化に富んだ演奏ができるようにしたいということ。だから、リズムやテンポを自由自在に変化させていけるような柔軟な構造にしている。それから色彩感覚や静寂美にも富んでいる楽曲にしたいとも考えている。そのためには先進性が重要になってくるような気がしている。

――YouTubeで「Overnight Spells」というソロ・ピアノ演奏がアップされています。この演奏についてお話を聞かせていただけますか?

 

『Overnight Spells』は、僕が最近スタートさせたプロジェクトのひとつ。音楽的には、僕が2016年にトリオ作品として発表した『Overnight Tales』と繋がっている。異なる点は、『Overnight Tales』が、僕が20歳の頃に経験したことを音楽で表現したアルバムだったのに対して『Overnight Spells』は、僕が子供の頃から夢の中で見てきた想像の世界を音で表現した作品だということ。インプロヴィゼーションの部分を大きくせず、リスナーの解釈に委ねる部分を大きく残している音楽だ。このソロ・プロジェクトで考えているのは、子どもたちにもシェアしてもらえるようにしたいということ。子供のイマジネーションというのは大人よりもずっと素晴らしいからね。小さな子どもがこういう創作行為に興味を持ってもらえると嬉しいね。現時点ではアルバムにはなっていないけれど、このプロジェクトをライヴ録音して作品化させたいと考えている。

――演奏以外に来日中に予定なさっていることは?

何しろ初めてのことだから日本のことがよく分かっていないけれど、日程の合間になるべく多くの場所を訪れ、大勢の人たちと出会いたいと考えている。是非、僕たちのコンサートに遊びに来てください。

マテウシュ・ガヴェンダ来日公演日程

●マテウシュ・ガヴェンダ ジャズ・ピアノ・ソロ

日時:6月15日(木) 19:00開演
会場:横浜市瀬谷区民文化センターあじさいプラザホール
出演:マテウシュ・ガヴェンダ(p)

●マテウシュ・ガヴェンダ・トリオ

日時:6月16日(金) 19:30開演
会場:新宿ピットイン
出演:マテウシュ・ガヴェンダ(p) アラン・ウィクビシュ(b) グジェゴシュ・パウカ(ds)

●ジャズ・イン・北とぴあ

日時:6月17日(土) 15:00開演
会場:北とぴあ つつじホール(北区王子)
出演:マテウシュ・ガヴェンダ・トリオ[マテウシュ・ガヴェンダ(p) アラン・ウィクビシュ(b) グジェゴシュ・パウカ(ds)]

馬場智章 Gathering
[馬場智章(ts) 西口明宏(ts, ss) マーティ・ホロベック(b) 小田桐和寛(ds)

David Bryant’4 REAL’
[デイビッド・ブライアント(p) 須川崇志(vc) パット・グリン(tuba, b) 中村海斗(ds)

早田和音

2000年から音楽ライターとしての執筆を開始。インタビュー、ライブリポート、ライナーノーツなどの執筆やラジオ出演、海外取材など、多方面で活動。米国ジャズ誌『ダウンビート』国際批評家投票メンバー。世界各国のメジャー・レーベルからインディペンデント・レーベルまで数多くのミュージシャンとの交流を重ね、海外メディアからの信頼も厚い。

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