#02 『R+R=Now / Collagically Speaking』
Text by Hiro Honshuku ヒロ・ホンシュク
- Robert Glasper – piano, keyboards
- Terrace Martin – vocoder, synth, sax
- Christian Scott aTunde Adjuah – trumpet
- Taylor McFerrin – beats, synth
- Derrick Hodge – bass
- Justin Tyson – drums
- Turntables [DJ] – Jahi Sundance (tracks: 3, 11)
- Vocals – Amber Navran (tracks: 11), Goapele (tracks: 1), Omari Hardwick (tracks: 5), Stalley (tracks: 8), Terry
- Crews (tracks: 7), Yasiin Bey (tracks: 11)
- Voice – India Shawn (tracks: 3), Jahi Sundance (tracks: 3), Mirna Jose (tracks: 3), Robert Glasper (tracks: 3)
- Voice [Spoken Word] – Amanda Seales (tracks: 9)
収録曲
- Change Of Tone 7:32 (楽曲解説 No. 242 →)
- Awake To You 8:14
- By Design 5:27
- Resting Warrior 9:51
- Needed You Still 6:09
- Featuring – Omari Hardwick
- Colors In The Dark 4:48
- The Night In Question 7:41
- Featuring – Terry Crews
- Reflect Reprise 6:42
- Featuring – Stalley
- Her=Now 6:44
- Featuring – Amanda Seales
- Respond 5:21
- Been On My Mind 4:49
- Featuring – Amber Navran
- Capitol Records, LLC
- Blue Note – UCCQ 1085 (Japan Release)
- Executive-Producer – Nicole Hegeman, Vincent Bennett
- Recorded and mixed By – Qmillion
- Mastered By – Chris Athens
やはり筆者にとってグラスパーはマイルスだ。「Robert Glasper Experiment」の頃からマイルスを感じて興味を持っていたが、『Everthing’s Beautiful』で彼がいかに本髄からマイルスを継承しているか確信した。そしてこのアルバムは筆者にとって心の底に食い入るようなインパクトを与えた。マイルスが実行し続けた、その時代を包括して新しい方向を示すやり方だ。マイルスが常に5年先を歩んだように、だ。
このバンドはライブで確認したが、全く自由にインプロで発展する。実際このレコーディングもジャムりながら発展したと言う。それでこれだけのサウンドが築き上げられるのは、それぞれのメンバーの才能と、メンバー間の信頼関係の凄さを表す。繰り返すようだが、このバンドのライブは官能的である。筆者は今思い出しながらこう書いていてもううるうるしてしまうほどだ。
雑談
しかしそれにしてもやはりジャズは死んだのであろうか。筆者はジャンル分けが大嫌いだ。アメリカでは日本ほどジャンル名が出る会話はない。だが筆者はジャズという言葉の意味だけには固執する。筆者が主張するジャズの定義は、あのチャーリー・パーカーとミンガスとマックス・ローチが発明したタイム感だ。一般には、自己顕示欲の強いミンガスが、当時ベースにマイクがないため自分の音が聴こえないのに腹を立てオン・トップ・オブ・ザ・ビートで聴こえるように演奏したことに対し、マックス・ローチなどのドラマーがそれにブレーキをかけようとビハインド・ザ・ビートでスィングしたためにタイムの幅のポケットが出来、チャーリー・パーカーが自由にオン・トップ・オブ・ザ・ビートとビハインド・ザ・ビートを使い分けてビ・バップのスタイルが成立たと言われている。そんな単純な話じゃなかったろうが、ベーシストがオン・トップ・オブ・ザ・ビートで演奏をし、ライドシンバルかハイハットがビハインド・ザ・ビートで演奏し始めてクリエイトされたスタイルであることは確かだと思う。ジャズにはこのタイム感がなければジャズとしてのグルーヴとスリル感はありえない、と筆者は信じる。言い換えれば、そうするとこのグラスパーの音楽や現在クリエイティブに活動を続けるアーティスト達の音楽は、基本としてベースとドラムが強力にタイトにグルーヴし、それはジャズの定義から外れ、むしろジャズ以外のアメリカ音楽と定義した方が早い。言い換えればそれだけジャズのタイム感は特異で、それが今消えつつあると言うことだと思う。筆者はそれを全く悲しんでいない。そういうジャズを聞きたければ50年代後半から60年代のマイルスのアルバムを聞けばいいだけだ。そしてこのアルバムで堪能できるベースとドラムの追従を許さないグルーヴと、それに対する自由自在なグラスパーのタイム感を楽しもう。