#01 ストップギャップ・ダンス・カンパニー「エノーマス・ルーム」
2019年3月8日(金) 世田谷パブリックシアター
text by Makoto Ando 安藤誠
障害を持つ者/持たない者が一体となって取り組むインクルーシヴなダンスの来日公演としては、昨年彩の国さいたま芸術劇場で上演されたジェローム・ベルの問題作「Gala-ガラ」がいまだ記憶に新しいが、今年3月に世田谷パブリックシアターほかで日本初上演された英国のストップギャップ ・ダンス・カンパニー(Stopgap Dance Company)「エノーマス・ルーム」もまた、鋳型に嵌められた「障害者/健常者」の枠組みを無効化し、身体表現の常識に楔を打ち込むような衝撃的な作品だ。
時間軸と空間軸が微妙に捻れたような構成、演劇的でありながらもダンスへの根源的な衝動を基盤としたストーリー展開に加え、幻想的な物語を「リビングルーム」という日常空間の中に現出させ、ダンサー各々のポテンシャルを最大限に引き出す装置へと落とし込んでいた舞台設定も出色。何よりも、それぞれの身体を活かしきるための振付を血肉化し、難解で抽象的な世界観を見事に表現しているダンサーたちの動き一つ一つが素晴らしい。「人と違うこと―それは私たちの存在理由であり、私たちの生き方そのものだから」という彼らのメッセージを具現化したようなステージは、「からだ」とは何か、それを使って何が可能なのか?という問いかけを、観るものに間断なく突きつけてくるかのようだった。