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Jazz and Far Beyond

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このディスク2019(国内編)No. 261

# 10 『Blue Note Voyage』

text by Keiichi Konishi 小西啓一

ユニバーサル・ミュージック UCCJ2172 高音質CD 税込定価3,300円

黒田卓也(tp)
西口明宏(ts)
井上銘(g)
桑原あい(p)
宮川純(org,p)
角田隆太[ものんくる](b)
石若駿、菅野知明(ds)

1. 処女航海
2. ミッドナイト・ブルー
3. ソング・フォー・マイ・ファーザー
4. ザ・サイドワインダー
5. クレオパトラの夢
6. フィール・ライク・メイキング・ラヴ
7. チュニジアの夜

2019年7月18日、21日、東京、音響ハウスにて録音


今年の1枚国内編の方だが、やはりその圧倒的な熱量・技巧等々で、聴くものを揺さぶり奮い立たせる上原ひろみ。ジャズという枠を超え、あらゆるピアノ音楽の中でも最上位に位置し、音の“万華鏡”そのものにして華麗で緊迫感に富んだ世界が開陳される、彼女の10年振りのソロ作品『スペクトラム』ということになるだろう。但し、この傑作アルバムについては、どなたかが取り上げるだろうから、ぼくはもう少し個人的にお気に入りのアルバム(ベストではないが)をチョイスしてみた。

今年は名門“ブルーノート”レコードが誕生80年目の記念年。そこで本邦の若手精鋭を集めて臨時編成されたスペシャル・バンドが、ハンコックの〈処女航海〉を皮切りにケニー・バレルの〈ミッドナイト・スペシャル〉、ホレス・シルバーの〈ソング・フォー・マイ・ファーザー〉更にはあの〈チュニジアの夜〉まで、お馴染みのBNヒット・チューン7曲を演奏するという、ある意味お手軽で安直とも言えそうな企画ものアルバム『ブルーノート/ボヤージ』。 Jazz Tokyoのコアなファンからは、なんなの…などとお叱りの一つでも受けそうな気もするが、これがどっこいなかなかに愉しくも、聴き応えある好アルバムに仕上がっている。集まったのはNYを拠点にしている黒田卓也を筆頭に、西口明宏、桑原あい、井上銘、宮川純、菅野知明、石若駿といった、今やシーンの第一線で大活躍の若手人気者たちに、[ものんくる]のベーシスト角田隆太が加わった8名。この面々が曲によって様々な顔合わせで、愉し気に意欲的に往年の大ヒット・チューンと戯れ・挑戦する。こうした企画、演奏する面々がやらされ…と言った意識を持ってしまうと、どうしようもない内容になってしまうのだが、ここでの彼らは実に気持ち良さげに、ある意味スタイリッシュに、ジャズ史を彩る銘品の数々に敬意を表しつつ、真摯に面白がってその現代化に取り組んでいる。メンバーそれぞれの対抗心もプラスに作用し、その内容や気構えはかなりグッドそのもの。あれから半世紀以上かつてのBN名曲群が、J-ジャズの現場で見事に蘇生される姿。それを仲々の格好良さと感じるのも、ぼくらオールド・ジャズ・ボーイにとって一興なんですね。

小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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