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このパフォーマンス2020No. 273

#09 LRK Trio Live at Bonds Rosary

text & photo by Ring Okazaki 岡崎凛

LRK Trio Live at Bonds Rosary(ロシアのLRK トリオ 京都公演)
2020年3月5日(木) Open 18:30 Start 1st 19:30 / 2nd 21:00 入替なし
会場: Bonds Rosary 京都 祇園
企画:Kobe Modern Jazz Club事務局

LRK Trio:
Evgeny Lebedev エフゲニー・レーべジェフ (piano)
Anton Revnyuk  アントン・レヴニュク (contrabass)
Ignat Kravtsov イグナット・クラフツォフ (drums, percussion)


詩情豊かな表現を追求し、ジャズの枠を超えた新しい試みを続けるロシアのピアノトリオ、LRK Trioは、COVID-19の影響が広がる中、3月初頭にぎりぎり間に合う形で来日し、関西での公演(京都と神戸)を行った。

2020年の海外アーティスト来日公演を聴けたのは3月初頭までとなり、このLRK Trioが最後となった。COVID-19の影響で海外アーティストの来日が次第に難しくなった今年の2月末、ビルボードライブ大阪でロンドンの人気ジャズグループEzra Collectiveを聴きに行ったが、彼らの翌日の東京公演は中止となった。

ライヴに出かける人、ライヴを開催するお店に「自粛」の二文字が大きくのしかかったあの時期に、コンサートツアーを企画したKobe Modern Jazz Clubの村田太さんの心中はどんなものだったか、察するに余りがある。出演者もスタッフもリスナーも、ぎりぎりまで悩むことになったこの時期だったが、会場では丁寧な感染症対策が取られていて、安心して参加できたこと、また期待通りに内容の濃いステージを満喫できたことを記しておきたい。

マスク姿の観客の前に3人が登場し、ピアニストのエフゲニーが英語のトークで場の空気を和ませ、演奏が始まると、次第にトリオの描き出すリリカルな世界に包まれていく。〈Clockwork Doll〉はタイトル通りに、ぜんまい仕掛け人形を連想させるメロディーに始まり、ぎこちなくも愛らしい人形の動きを追うように鉄琴が鳴る。こうした遊び心に満ちた工夫でリスナーをリラックスさせてから、あっと言う間に激しい演奏に変化していくのも、このトリオの面白さだ。緩急つけるという言葉では追いつかないスリルが織り込まれていく。演奏の軸はやはりエフゲニーのピアノだろうが、これに絡むイグナットの表情豊かなドラム、アントンのダイナミックなベースの音が一体化して、身を揺さぶられるような激しさに包まれる。LRK Trioのライヴの迫力がこれほどとは想像しておらず、圧倒されるばかりだった。
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LRK Trioはメンバー3人それぞれの苗字の頭文字をとって名づけられている。国外のリスナーには覚えづらいロシア語の名前と苗字よりも、単純な名前が記憶に残りやすいということで、アルファベット3文字の名前にしたのだという。このトリオ名になってから2020年秋までに自主制作盤を含め4枚のアルバムがリリースされている。LRK Trioはロシア国内での評価を高めた後、2018年にヨーロッパ諸国をツアーで回り、日本にもやって来た。3人は日本文化への関心が高く、山田耕筰の曲〈赤とんぼ〉を演奏し、アルバム『Urban Dreamer』に収録している。2020年10月に最新作『Memory Moment』をリリース。

公演時のメンバー (L to R):

Evgeny Lebedev エフゲニー・レーべジェフ piano
Anton Revnyuk  アントン・レヴニュク contrabass
Ignat Kravtsov イグナット・クラフツォフ drums, percussion

岡崎凛

岡崎凛 Ring Okazaki 2000年頃から自分のブログなどに音楽記事を書く。その後スロヴァキアの音楽ファンとの交流をきっかけに中欧ジャズやフォークへの関心を強め、2014年にDU BOOKS「中央ヨーロッパ 現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド」でスロヴァキア、ハンガリー、チェコのアルバムを紹介。現在は関西の無料月刊ジャズ情報誌WAY OUT WESTで新譜を紹介中(月に2枚程度)。ピアノトリオ、フリージャズ、ブルースその他、あらゆる良盤に出会うのが楽しみです。

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