Walterさんby 市野元彦
Text by Motohiko Ichino 市野元彦
Walterさんと初めて(そして最後に)一緒に演奏をしたのは荻窪のVELVETSUN、ライブ当日に自己紹介もそこそこに少なくない曲数のリハーサルをして短い休憩の後すぐに演奏本番という、いわばジャズギグ的なバタバタした流れの中でのこと。ステージ上の僕の立ち位置では色んな条件が重なって決して聴きやすい音環境ではなかったのだが、さほど大きくない音量の彼のピアノがメロディからヴォイシングの隅々まで聴こえて来てハッとなった。彼の演奏にはverticalにも horizontalにもスペースが感じられ、音をブレンドさせていく楽しみを与えてくれる稀有なピアニストだなと感動した。(上手く言えないのだが、共演者が上に乗っかるのではなくて内声になれる、という感じ)
ライブ終了後に初めてWalterさんとビールを飲みながらちゃんと話をすることが出来た。彼は音楽学校の大先輩でもあるのでその頃の話や、ドイツの共通の友人の話題などなど。他愛もない話の中で彼の語り口の柔らかさとユーモア、リラックスした感じがとても心地よく、成る程この人がああいう演奏をする訳だと合点が入ったものだった。
これから他のセッテイングでも共演出来ればと思っていたので、彼がいなくなってしまったことをとても残念に思う。それにしても60歳とは本当に若過ぎるなあ。
市野元彦 Motohiko Ichino – guitarist, composer
1968年兵庫県神戸市生まれ。Berklee College of Music卒業。Mick Goodrick, Bret Willmott, Tony Gabouryに師事。2001年に帰国後、首都圏ライブハウス等で活動を開始する。2007年『Sketches』、2008年『Time Flows (like water)』を発表。2014年2月、rabbitooの1st アルバム『national anthem of unknown country』が発売。6月には同アルバムのフランス盤がリリースされ、フランスのテレビ局”MEZZO TV”のTop Mezzo of September 2014に選出されるなど国内外で高い評価を得る。2016年4月『the torch』が発売。2020年、Sweet Herringboneの1st アルバム『After Ten』、翌2021年にシングル『Flourish』 がbandcampにて発売。現在はSweet Herringbone 、Time Flows Quartetなどの自己のプロジェクトを中心に活動。またレギュラーグループとしては橋爪亮督 GROUP、渋谷毅 DUO、小山彰太 “幽玄郷”、織原良次 “miD”、佐藤浩一 “Melancholy of a Journey”などに参加している。