#04 『松本治/デューク・オン・ザ・ウインズ feat. 大野えり』
text by Keiichi Konishi 小西啓一
Pacific House. ¥3,000(税込)
大野えり(Vocal)
太田朱美(Flute)
小林豊美(Flute)
小森慶子(Clarinet / Bass Clarinet)
中山拓海(Alto Sax0)
本藤美咲(Baritone Sax / Clarinet)
米木康志(Wood bass)
1 Solitude
2 Do Nothing Till You Hear From Me
3 I Got It Bad And That Ain’t Good
4 Take Love Easy
5 Something To Live For
6 A flower Is a Love Some Thing
7 Mood Indigo
8 Lotus Blossom
9 Love You Madly
10 Lush Life
松本治(Arrange / Conductor)
Recorded:Masayuki Ishiwata(Pacific Studio Sound)
Mixed:Masayuki Ishiwata(Pacific Studio Sound)
Mastered:Masayuki Ishiwata(Pacific Studio Sound)
Recorded at:Produced by Keita Mochida(Pacific Studio Sound)
恒例の今年の1枚(国内編)は、今年ぼくが最も印象に残った作品の一つ、隠れた名アレンジャー(&トロンボーン奏者)の松本治による素晴らしいデューク・エリントン集『デューク・オン・ザ・ウインズ』を挙げたい。このアルバムはデューク・エリントン(&ビリー・ストレイホーン)の10の銘品に、松本が“歌と木管アンサンブル&ベース”といった、少し変わった編成で挑み見事な成功を収めた、異色だが出色のエリントン集。更にここでフィーチャされるのが日本屈指の唄者~大野えりだけに、もう言うこと無しの出来栄え。日本人によるエリントン集では、鬼才しぶやんこと渋谷毅の一連の作品群(『エッセンシャル・エリントン』他)がつとに有名だが、これもそれに匹敵する内容で、”革新的アレンジに驚愕“”見たことも無い輝きを放つ“(大友良英)等と、大御所やうるさ方からも絶賛されている。その評判通りの自在・闊達にして巧妙なペン捌きで、エリントンの広大で深淵な音楽を彼流に鮮やかに再構築、まさにお見事の一言。歌姫えりも大胆で刺激的、時に抒情的な歌唱も混じえ、その力量を誇示する。目くるめく蠱惑の音世界を現出した意欲作として、今年の1枚に推薦したい。
その他これはアルバムでは無いが、本誌編集長 稲岡邦彌の『新版ECMの真実』、医師にして評論家の小川隆夫の『ジャズ・クラブ黄金時』『来日ジャズメン全レコーディング』、更にジャズ喫茶店主で評論家の後藤雅洋の『現代ジャズ入門』など、興味深いジャズ本が次々に出版されたことも、ここに付記しておきたい。