#06 『森山威男 / ライヴ・アット・ラブリー』
text by Akira Saito 齊藤聡
BBE BBE671(Jジャズ・マスタークラス・シリーズ)
Takeo Moriyama 森山威男 (drums)
Fumio Itabashi 板橋文夫 (piano)
Toshihiko Inoue 井上淑彦 (tenor sax)
Hideaki Mochizuki 望月英明 (bass)
A1. Sunrise(板橋文夫)
B1. Watarase(板橋文夫)
C1. Exchange(板橋文夫)
D1. Hush-A-Bye (Sammy Fain)
D2. Good Bye(板橋文夫)
Recorded Live at “Jazz inn LOVELY”, Nagoya, December 28 and 29 1990
この世には、聴くと脳のどこかの回路に電気が流れはじめ身動きが取れなくなるアルバムというものがある。筆者にとっては、チャーリー・ヘイデンのリベレーション・ミュージック・オーケストラ(名義とはなっていない)による『The Ballad of the Fallen(戦死者たちのバラッド)』(ECM、1982年録音)、セシル・テイラーらのザ・フィール・トリオによる『Looking (Berlin Version)』(FMP、1989年録音)、齋藤徹タンゴ・グルーヴ・コレクティヴによる『アウセンシャス 不在』(Jabara、1997年録音)、そして森山威男『Live at Lovely』がそれにあたる。
長年DIW版のCDを聴いてきたが、今年(2023年)になり、英国のBBEからヴァイナル2枚組としてリリースされた。松風鉱一の『At The Room 427』や『Earth Mother』もそうだが、BBEのシリーズは独創性極まりない日本のジャズを発掘し光を当てる事業であり、その意義はとても大きい。
本盤は、センチメンタルで力の湧いてくる板橋文夫の曲を、強力メンバーがフルスロットルで演りぬいたかけがえのない記録である。<Good Bye>は浅川マキの愛唱曲でもあり、ライヴを締めくくる曲に相応しい。マキの「自分にさえもさよならした/あなたの背中が行く/もう愛さないの/闇を駆けるさすらい人」という歌声が聴く者のなかで重なり、クライマックスで放たれる森山のドラムソロ。筆者はこれを勝手に「森山スペシャル」と呼んでいる。
(文中敬称略)
板橋文夫、森山威男、望月英明、井上淑彦