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R.I.P. 林 聡No. 320

林聡さん、ありがとうございます 坂本葉子

林聡さん、ありがとうございます

ギャラリーノマルに通い始めたのは好きなミュージシャンのライブがノマルで開催されたのがきっかけであった。そこに展示されていたアーティストの作品に心を惹かれファンになってしまった。それ以降は音楽目当てでノマルに行ったら好きなアーティストができ、好きなアーティストの個展に行ったら今まで聴いたことがなかったミュージシャンを知って好きになる、の繰り返し。ノマルのおかげで随分と人生の楽しみが増えた。画廊や美術館でコンサートが行われることは時々あるが、ノマルのように定期的に開催されているところは珍しいのではないだろうか。ノマルのマネージャーsaraさんが即興演奏のできるピアニストでありいろいろなジャンルのミュージシャンと渡り合える才能の持ち主であること、そしてアートディレクターの林聡さんの音楽や音響に対する鋭い感覚があってこそ、音楽とアートが融合される場所として稀有な存在のギャラリーノマルとなったのだ。

林さんは20249月の飯川雄大氏の展覧会のオープニングパーティーで「ここ(ノマル)に来て作品を観て、良かったですと言うだけではなく、作品を買ってみてください」とおっしゃった。今まで作品を購入したことがなかった私の心にグサッと刺さる言葉だった。確かに、観ているだけではアーティストにお金は入らないので作品を継続して制作することができなくなるしノマルも経営が成り立たない。でも販売促進だけのために言った言葉とは思えなかった。林さんがもう容易には会えない遠い場所へと旅立たれ、あの言葉の真意をご本人に確認することがもうできなくなってから自分なりに考えてみた。林さんが伝えたかったことは「アートを傍観しているだけではなくて、アートにかかわってほしい。ただ見ているよりも自分もその一部になったほうが絶対楽しいに決まっている」ということだったのではないか。作品を購入することはアーティストの人生に直接かかわることである。購入代金はアーティストの生活の糧、次作への資金となる。購入した作品は購入者の人生にかかわることになる。その作品が部屋にやって来たことによる気持ちの変化、心の中に生まれる喜び。そういうことなのだと勝手に解釈して初めてノマルで小さな版画作品を購入した。

 なんだかちっとも追悼文になっていないのだが、死を嘆き悲しむよりも、今思うことはただただ林さんへの感謝。「林さん、いろいろなものを好きになるきっかけを作ってくださって本当にありがとうございます。私は今後もノマルにちょくちょく遊びに行きますが、ギャラリー内に林さんのお姿はなくても空からインスピレーションを与えてくださることと思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!」

* 写真キャプション
2021213Chang Teng-Yuan チャン テンユァン個展「NEW NORMAL 最終日の.es(橋本孝之&sara) ライブでの林聡さん


坂本葉子

ミュージシャンでもなくアーティストでもない単なる愛好家。好きになったらのめり込むタイプ。ギャラリーノマルよりリリースされたCDUtsunomia MIXシリーズの003 “Multiplication”のライナーを書かせていただいた。

 

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