#08 オーブリー・ジョンソンとランディ・イングラム 関口滋子
Aubrey Johnson & Randy Ingram
2024年12月8日@新宿ピットイン
Aubrey Johnson (vo) & Randy Ingram (p)
コロナ前と同じほどではなくても、海外アーティストのライヴやフェスもふつうに復帰した2024年。たくさんのすばらしい音楽に出会った中で、師走のピットインでみたオーブリー・ジョンソンとランディ・イングラムのライヴが今も心にあたたかく残っている。
2年前に来日したけれど見逃して、評判も聞いていただけに、今回は待望の機会。
オーブリー・ジョンソンは、スキャットも自由で、超絶のヴォイス・コントロールにして、表現は自然で、ニュートラル。透明感のある声は清らかでクールでありながら、絶妙な温もりがあって、なんとも不思議な魅力をたたえていた。ともに演奏するランディは、そんな彼女の歌をたんたんと支えながら、歌心のあるフレージングで終始メロディアスなピアノを聴かせてくれた。
トータルで言えば、極めてシンプル・・・。でもこのシンプルな味わいの深さ、尊さといったら・・・。
曲も、ジャズ・スタンダード、ジョビンやミルトンといったブラジルのナンバー、ジョニ・ミッチェルやビリー・アイリッシュといったPOPソングの数々、またオリジナルまで幅広い選曲でありながら、本人たちの世界がセンスよく響く。曲の本質をつかんだ、2人の人柄も滲む表現は、どれも必然のような展開。気づいたら、夢中になって、静かに、大切なもので満たされていた。
ちなみに、オーブリーは、あのライル・メイズの姪。ランディは、フレッド・ハーシュやダニーロ・ペレスに師事したという経歴の持ち主。
『Play Favorites』と題するアルバムを2022年にリリースして、今回もそのナンバーを中心にしていたけれど、レパートリーにはほかの楽曲も。新しいアルバム制作と再びの来日を切望です。
WAVE、Disk Unionといったレコード店、キングインターナショナルでの卸、プロモーション業務を経て、2021年、Free Flying Productionsを立上げ。音楽好きを原点とするスタンスを頼ってくださる方に支えられながら、レーベル運営&パブリシストとして活動中。Resonanceとのビル・エヴァンス・モントルー・トリオの発掘盤等の仕事を良き思い出としつつ、日々出会う音楽と、ご縁に感謝の日々。
ライル・メイズ、オーブリー・ジョンソン、ランディ・イングラム、Play Favorites