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My Pick 2024このパフォーマンス2024(海外編)No. 321

#10 ドミニク・ミラー The Vagabond Tour in JAPAN 浮田美奈子

Text by Minako Ukita 浮田 美奈子
Photo by Yuka Yamaji 山路ゆか

ドミニク・ミラー/The Vagabond Tour in JAPAN
2024年4月19日(金)、20(土)、21(日): コットンクラブ
2024年4月22日(月): 神戸チキンジョージ

今年はドミニク・ミラーの4年ぶりの日本公演につきる。これは2023年4月リリースの彼のECMからの3枚目のアルバム『Vagabond』のツアーだった。この公演直前のドミニクへのインタビューと、ライブレポートがあるので、詳細はそちらを参照されたい。
Interview #283 ドミニク・ミラー Dominic Miller
#1301 ドミニク・ミラー日本公演 2024 Dominic Miller in Japan 2024

ドミニクは35年以上スティングのギタリストとして、それだけで年間100回ほどのライブをこなしてきた。本公演は百戦錬磨のメンバー達による緩急自在のアンサンブルの面白さが際立った。

ドミニクは作曲能力の高い人で、シンプルで美しいメロディーの名曲を数多く作ってきた。代表は 映画『Leon』の主題歌「Shape of My Heart」だ。その作曲能力は、ECMに移籍して更に大きく開花し、最新作『Vagabond』は彼のキャリアの中でも最もシンプルで内省的、しかし明快なコンセプトと美しい物語を持つ作品になった。

実は今回、その『Vagabond』の中からは1曲のみの演奏だったが、オープニングを始め、ライブ全体でドミニクの音楽性と今回のアルバムのコンセプトを、しっかりと見せてくれたと思う。

彼はスティングとの活動で、ロック・ギタリストと思われている事が多いが、本来の楽器はナイロン弦ギターである。そして、彼の音楽を音源ではなくライブで聴く価値は、そのギターの音にある。ドミニクには彼にしか出せない、聞けばすぐに彼の音だと解る「指紋のような」音がある。

それは彼の名前を一躍世界中に轟かせた、フィル・コリンズの1989年の大ヒット曲「Another Day In Paradise」(アルバム『…But Seriously』収録)の時から存在した。彼自身「良い音を自分の右手の指で獲得し、残すことがミュージシャンとして自分が生きた証になるだろう」と、プレイヤーの面で最も追求しているのは音だ、と語る。彼の音の真価は恐らくライブで実際に聞かなくては解らないと思う。彼の生音は並外れた美音である。今回もそれは健在だった。

そして嬉しい知らせも届いた。この12月の頭にドミニクはECMからの4枚目の録音を、南フランスのスタジオ、ラ・ビュイッソンヌで無事に終えたようだ。録音には彼の2作目『Absinthe』で活躍した、アルゼンチンのバンドネオン奏者サンチャゴ・アリアス、3作目『Vagabond』で静かな情熱溢れる演奏を聞かせてくれた、イスラエルの名ドラマー、ジヴ・ラヴィッツの参加が報告されている。リリース日は未定だが楽しみに待ちたい。

浮田 美奈子

クラシック音楽教師の家庭に育った一級建築士。自身も2歳半からピアノとフルートを学ぶ。同時に13歳で洋楽ロックやJAZZにも傾倒し、バンド活動を行う。JAZZとECMとの出会いはキース・ジャレットの「ケルン・コンサート」。 どんな音楽ジャンルも問わずに聴くが、基本的に実際に会場で聞かなければ真価は解らないと思っている。現在ドミニク・ミラー本人の承認の元、Dominic Miller_Fan Page JAPANを運営。https://dominicmillerjapanfan.com

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