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My Pick 2024このディスク2024(国内編)No. 321

#02 マイク・モラスキー著『ピアノトリオ ― モダンジャズへの入り口』 細川周平

書名:ピアノトリオ ― モダンジャズへの入り口
著者:マイク・モラスキー
版元:岩波書店
初版:2024年3月19日
体裁:新書 240頁
定価:1034円(税込)


全二巻の大著『ジャズ・ピアノ』(岩波書店)でどっかり読ませた後の軽い一冊、イイ感じでピアノトリオの定番を聴きながら解説。でも付録以上。「渋い」とか「切れ味」とか「ドライヴ感」のような無言の了解的な特徴を、言葉で定義しつつ、実例で聴かせどころをみっちり。趣味に走らず、批評におぼれず、筆者のセミプロ・ピアニスト歴を反映して、メンバーのやりとりやスウィングの微妙なところで文章がノッテくる。個人的ジャズ歴にあてはめると、中3で聴いてジャズにぐっとはまったチック・コリア『ナウ・ヒー・シングス、ナウ・ヒー・ソブス』と、ビル・エヴァンス『ワルツ・フォー・デビー』の聴き方指南、そうだったのか、と今になって発見。これでおませになりました。レッド・ガーランドの『グルーヴィー』とウィントン・ケリーの『ケリー・アット・ミッドナイト』もよく聴いた。高校~大学生時代、来日公演で心奪われたマッコイ・ターナーとポール・ブレイについては、60年代録音の『リーチング・フォース』と『フットルース』が選ばれ、後者ではセシル・テイラーとフリージャズについての一考も加えられて、読み応えあり。エロル・ガーナーの『コンサート・バイ・ザ・シー』は実は長い間、どこがいいんだかわからなかった。今はずっと後に発見したデュークの『マネー・ジャングル』、アーマッド・ジャマル『アット・ザ・パージング』ともども神棚もん。本の終章、1970年代以降のピアニストにはそれほど思い入れもない。選ばれたアルバムを知らない。半分は名前も知らない。何やかやいっても、世にいう名盤ファンで、『スウィング・ジャーナル』とジャズ喫茶とFM番組で、2、30代のうちにジャズ耳を完成してしまったみたい。

細川周平

細川周平 Shuhei Hosokawa 京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター所長、国際日本文化研究センター名誉教授。専門は音楽、日系ブラジル文化。主著に『遠きにありてつくるもの』(みすず書房、2009年度読売文学賞受賞)、『近代日本の音楽百年』全4巻(岩波書店、第33回ミュージック・ペンクラブ音楽賞受賞)。編著に『ニュー・ジャズ・スタディーズ-ジャズ研究の新たな領域へ』(アルテスパブリッシング)、『民謡からみた世界音楽 -うたの地脈を探る』( ミネルヴァ書房)、『音と耳から考える 歴史・身体・テクノロジー』(アルテスパブリッシング)など。令和2年度芸術選奨文部科学大臣賞受賞。

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