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R.I.P. ジャック・ディジョネットNo. 332

ジャック・ディジョネットさんのスペシャル・エディション by 鈴木大介

Text by Daisuke Suzuki 鈴木大介

恥ずかしながら、ジャック・ディジョネットをジャック・ディジョネットと認識して聴き始めたのは、キース・ジャレットが83年に『スタンダーズ』のアルバムを録音してからです。
それ以前は、スティーブ・ガッドやデイヴ・ウェックル、トニー・ウィリアムスが僕のドラム・ヒーローでしたが、ジャック・ディジョネットのドラムはそれらの人たちとは全然異なっていて、エルビン・ジョーンズらのジャズ・ジャイアントたちに通じる雰囲気と、クラシックの現代音楽のパーカッショニストにも似た響きに対する前衛さがあって、意識して探してみたらそれまで聴いていた音楽のそこここにジャック・ディジョネットが存在していたのです。

当時キース・ジャレットのトリオには、来日公演のたびに足繁く通っておりまして、『スティル・ライヴ』っていう、「いつか王子様が」なんかが入っているアルバムの頃、曲の終わりのエクステンションの部分で、トリオがとてもポリフォニックなスタイルでインプロヴァイズしている珠玉の時間がそのままTBSの日曜の夜の番組で流れたりして、通常のバンド的アプローチなだけではない、ホールの残響とかも取り込んだ室内楽的なのかシンフォニックなのか、コンサート・ホールに映えわたるサウンドのジャックのドラムが大好きでした。

そしてその後、1987年にライヴ・アンダー・ザ・スカイで観たジャック・ディジョネット・スペシャル・エディションに完全にノック・アウトされてしまいました。あの時、高校生だった僕は、失礼なことにミック・グッドリック先生を全く存じ上げず、なんか不思議なおじさんが当時では珍しい指弾きでヘッドレスのギターを弾いていて、確かあの日対バンが渡辺香津美さんで、香津美さんも一世を風靡したヘッドレスのスタインバーガーを弾いていたので、子供心に、「ギターが持って来れなくて香津美さんに借りたんではないだろうか」と、不届き千万な妄想を繰り広げつつも、グッドリック先生の変幻自在なプレイとスペシャル・エディションの野趣あふれる都会的なサウンドに魅了されきってしまいました。(しかも後日知ったのは、グッドリック先生のは廉価版のスペースバーガーでした…)

その後もキース・ジャレット・トリオは2000年代はじめのある時期を除いてなるべく聴きにいくようにしていましたので、僕が今までに、共演していただいた方とは別に、生で最も回数多く聴けたドラマーはジャック・ディジョネットさんだと思います。(ところで、神奈川県民ホールでのライヴで、キースさんが演奏前にうつむきがちに何度かうん、うん、と頷いて、突然ショパンのエチュードみたいな分散和音で「オール・ザ・シングズ・ユー・アー」の最初のソロ・ピアノのところを何コーラスか弾ききったことがあったんですが、どなたかそれを覚えていらっしゃいますでしょうか…あの録音ないかな…)

スペシャル・エディションのコンセプトって、その後の『パラレル・リアリティーズ』につながって行くんじゃないのかな、と僕は勝手に思っています。そんな意味でも、『イレジスタブル・フォーセズ』『アース・ウォーク』『エクストラ・スペシャル・エディション』のあたりのスペシャル・エディションは、僕の青春でした。

ジャックさん、ほんとうに素晴らしい体験をさせてくださってありがとうございました。

Jack DeJohnette’s Special Edition Montreal Jazz Festival


鈴木大介 Daisuke Suzuki
ギタリスト。作曲家の武満徹から「今までに聴いたことがないようなギタリスト」と評されて以後、明晰な解釈力と洗練された技術によって常に注目を集める 。マリア・カナルス国際コンクール第3位、アレッサンドリア市国際ギター・コンクール優勝。近年はジャズやタンゴのアーティストたちとの演奏活動や、自作品によるライヴ演奏も行い、また多くのアレンジは録音やコンサート共に好評で、様々なギタリストに提供し演奏されている。また、美術作品からインスパイアされたプログラムにも積極的で、これまでに国立新美術館「オルセー展」、ブリジストン美術館「ドビュッシー展」、都立現代美術館「田中一光展」を始めとする多くの美術展でのコンサートを成功させている。 楽譜は現代ギターから自作の『12のエチュード』をはじめ、『キネマ楽園 ギター名曲集』『Daisuke Suzuki The Best Collection for Guitar solo』を発売。2021年2月20日には、武満徹没後25周年を記念して、『武満徹 映画とテレビ・ドラマのための音楽 ギター編曲作品集』を日本ショットより出版。これまでに30作以上ものCDを発表し、いずれも高い評価を得ている。最近作は武満徹編の「ギターのための12の歌」を全曲収録した『ギターは謳う』。

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