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6/21〜7/20 ドキュメンタリー映画『ヴィム・ヴェンダース プロデュース/ブルーノート・ストーリー』

 

『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のヴィム・ヴェンダースが製作総指揮を務め、アルフレッド・ ライオンとフランシス・ウルフが歩んだ人生を軸にブルーノート・レコードの軌跡を描くドキュメンタリー映画『ヴィム・ヴェンダース プロデュース/ブルーノート・ストーリー』が6月21日から公開される。日本では初お目見えとなる本作は、劇場ではなく今年新たに立ち上げられた映画配信サービスである「JAIHO」を通じてのリリース。膨大なアーカイヴから選ばれたブルーノートゆかりのミュージシャンに加え、リード・マイルズ、ルディ・ヴァン・ゲルダー、ロレイン・ゴードンら重要人物たちの語り、そしてソニー・ロリンズ、クインシー・ジョーンズ、ハービー・ハンコックといった存命中のレジェンドたちによる撮り下ろしの証言を通じて、第二次大戦直前のニューヨークで誕生した小さなレコード会社が世界屈指のジャズレーベルへと成長し、モダンジャズの隆盛を主導していった過程を浮かび上がらせていく。

語られる内容についてはある程度既知の事実が多いとはいえ、本作を特別なものにしているのは、登場するアーティストたちが異口同音に語る「ブルーノートへの愛」だろう。とりわけ、ユダヤ系ドイツ人であるがゆえに差別の対象となっていたライオンとウルフへのシンパシーを多くの人物が口にするのは、黒人差別だけではなく様々な差別や偏見が今なお横行する米国の社会状況とも重なり合い、非常に興味深い部分だ。

デザインの世界にも大きな影響を及ぼしたブルーノートならではのタイポグラフィやグラフィックが、現代的なテイストを加えながらもその世界観を損なわない形で再構成され、映画の随所でアクセントとなっているのも見どころのひとつ。フィルムや写真が存在しないストーリーをアニメーションで補うのは近年のドキュメンタリー作品では流行りの手法だが、本作では色調を抑えた落ち着いたトーンの画が内容にもよくマッチしていて印象的だ。キャリアの全般にわたって、映画と音楽との真摯な関係性を追求してきたヴェンダースならではの視点が随所に反映された、新たなジャズ・ドキュメンタリーの傑作といえるだろう。

原題:It Must Schwing: The Blue Note Story(2018/ドイツ)
監督:エリック・フリードラー 製作総指揮:ヴィム・ヴェンダース
出演:アルフレッド・ライオン、フランシス・ウルフ、ルディ・ヴァン・ゲルダー、マイケル・カスクーナ、ケネス・ウルフ、ロレイン・ゴードン他 出演ミュージシャン:ソニー・ロリンズ、ロン・カーター、クインシー・ジョーンズ、ハービー・ハンコック、ウェイン・ショーター、マイルス・デイヴィス、 ジョン・コルトレーン、セロニアス・モンク、オーネット・コールマン、ロン・カーター、ルー・ドナルドソン他

安藤誠

あんどう・まこと 街を回遊しながらダンスと音楽の即興セッションを楽しむイベント『LAND FES』ディレクター。

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