#143 小川隆夫著『レーベルで聴くジャズ名盤 Part 2』
text by Kenny Inaoka 稲岡邦彌
著 者:小川隆夫
書 名:レーベルで聴くジャズ名盤 Part 2
初 版:2025年7月30日
判 型;A5版
版 元:シンコーミュージック・エンタテイメント
腰巻きコピー:
好評企画第2弾!
ここまでチェックしたい83レーベルを徹底解明!
1291枚のアルバム紹介と934枚のSpotify QRコードを掲載
「レーベルで聴くジャズ名盤 1374」(2020) の続編。前作ではジャズの主要レーベルからリリースされたアルバム 1374枚をビギナー向けとマスター向けに分けて解説したものだったが、Part2では前作に次ぐ83レーベルから1291枚のアルバムを選び出し解説を加えた。さらにその中から934枚については Spotify のQRコードを付け、たとえばスマホを介してすぐ試聴できる配慮がなされている。
Part 1で扱われた「主要レーベル」42に対してPart2では83とほぼ倍増。ジャズは必ずしも「主要レーベル」で制作されたアルバムが歴史的評価を受けるとは限らず、インディ系で制作されたアルバムがジャズの歴史上必須の作品になる場合も多く、そのことはむしろこのPart2を参照するとよく理解されるだろう。70年代に専門誌「スイング・ジャーナル」の児山紀芳編集長が “幻の名盤”ブームを起こし、各社競ってインディ系(今や世界に冠たるECMもインディでECMは主要レーベルのひとつとしてPart1に収録されているから、ここではインディではなくむしろ「マイナー」レーベルというべきかもしれない)のレーベルや”幻の名盤”を掘り出したが、その多くはこのPart2に収録されている。
ガイドブックでは避けられないことだが、限りあるページ数から収録が見送られたレーベルやアルバムが出ることで、それはファンや関係者それぞれの思いによって異なるものだ。例えば、筆者の場合、レーベルではポール・ブレイが主宰したIAI (Improvising Artists, Inc.)。日本でも発売の実績があり、パット・メセニーとジャコ・パストリアスが共演したデビュー・アルバム、ゲイリー・ピーコックが完全復帰のきっかけとなったポール・ブレイ、ゲイリー・ピーコック、バリー・アルトシュルのトリオによる『日本組曲』などで知られる。アルバムでは、ストーリーヴィル・レーベルの『ビリー・ホリデイ/ライヴ・アット・ストーリーヴィル』。このアルバムは、アラン・ベイツがジョージ・ウィーンから買い取ったマスターの中から筆者が発掘、日本先行発売を実現したものだ。のちにニューポート・ジャズ・フェスで名を上げたジョージがボストンに所有していたクラブ「ストーリーヴィル」でのライヴで、ラジオDJの「今夜は、ボストンのコープリー・スクエア・ホテル内のクラブ・ストーリーヴィルからお送りします」というナレーションが録音されている。スタン・ゲッツのゲスト参加も貴重だろう。
いずれにしてもジャズ評論家 小川隆夫の労作で、同時代を生きてきたオールド・ファンにはたまらなく懐かしく、新しいファンにはジャズの真髄を知る良き手がかりとなろう。ずしりとした手応えがなんとも頼もしい。
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