#102 『Dearest Lenny』 愛するレニーへ
text by Sanae Nakayama 中山早苗
「Dearest Lenny」愛するレニーへ (英文)
著者:Mari Yoshihara 吉原真里 (よしはらまり)
出版:オックスフォード大学出版局刊:2019
定価:Amazon.co.jpにてKindle版(電子書籍)1994円、ハードカバー3061円より
体裁:242mm x 162mm x 20mm、262ページ
レナード・バーンスタインと言えば、世界的名指揮者として、ミュージカル「ウェストサイド・ス トーリー」の作曲家として、交響曲などのクラシカルな作品の作曲家として、時にはピアニストと しても広く知られている。天才的な音楽家として多くの顔を持っていたことは確かである。今年、 没後30年目を迎えている。
そんなバーンスタインについて明かされる書籍は数多くあることは誰もが想像できるだろう。 昨年アメリカで新たに、「Dearest Lenny」という英文の本が出版された。確かにバーンスタインに関する本ではあるが、日本人の女性と男性がバーンスタインに寄せるそれぞれ異なった深い愛情が、1947年から亡くなった1990年まで実際に交わされた書簡を通して非常に繊細に描かれている小説風のノンフィクションと言えるだろう。時を経て、深まり、変遷するバーンスタインと二人の日本人との親交を中心に、氏の演奏活動の背景での様々な出来事、氏が活躍した各時代の社会的背景、また、音楽、レコード業界の潮流など興味深い多くの史実が、巧みに織り込まれ、事細かに説き明かされている。著者が6年間を費やした入念なリサーチの結晶である。これら多くの事実とこの二人との交誼を通して、一人の愛に満ち溢れた人間としてのバーンスタインが浮き彫りになっている。
著者について一言:吉原真里は、現在、ハワイ大学アメリカ研究学部教授であり、東京大学教養学部卒、ブラウン大学アメリカ研究学部博士号取得、という学歴の持ち主でありながら、本格的に訓練されたアマチュアのピアニストとして演奏活動も行っている大の音楽好きである。「Dearest Lenny」は、アメリカ文化史を専門とする優れた学者、また、音楽をこよなく愛する Mari Yoshiharaにしか書き得ない本だと筆者は確信する。
いずれ刊行が予定されている日本語版が待ち遠しいが、吉原氏が自らこの本の内容に沿って日本語でオンライン・セミナー、「愛するレニーへ、日本からの手紙 レナード・バーンスタインと戦後日本の物語」を9月中、3回にわたって行う。
詳細はこちら:
https://choruscompany.com/seminar/200906yoshihara/?fbclid=IwAR0W7UtK-qaHzXAkavVuIJZBWwkJ1hcrLx_o5FwrwL6fRGDaRQqXYxWy9dQ