#2141 『沢田穣治/Contra Banda』
text by Hiro Honshuku ヒロ・ホンシュク
Unknown-Silence UKSL – 0010
- 沢田穣治 Jyoji Sawada / ContraBass
- 望月慎一郎 Shinichiro Mochizuki / piano
- 馬場孝喜 Takayoshi Baba / guitar
- 池長一美 Kazumi Ikenaga / drums
- special guest 城戸夕果 Yuka Kido / flute(tr03、 tr07)
- Life is a fleeting dream 人生束の間の夢
- Strange landscape 奇妙な絵
- Sorane 空音
- Yukiakari 雪明かり
- Contra Banda #1 コントラバンダ#1
- Contra Banda #2 コントラバンダ#2
- Monochrome モノクロームAll selections composed by Joji Sawada
produced by Jyoji Sawada (Unknown-Silence)
Recorded at MOURI ARTWORKS STUDIO, Meguro, Tokyo
Recorded, mixed, and mastered by Takehiko Kamada
Art direction & Design: Tom Mizuta ( Hi-Fi Company Ltd. )
Photos: Cover Jyoji Sawada/Inserts 森谷博
沢田さんの音楽に出会ったのは1年ほど前になる。ボストンで活動を共にしていた城戸夕果さんが参加している沢田さんのギグの録音を聴かせて頂いてすぐに虜になり、この6月から7月にかけて帰国した際にご一緒させて頂く願いが叶った。
ショーロクラブや映画音楽で活躍されておられる沢田さんご本人のキャラクターも、彼の音楽も、なんとも不思議なカリスマ性を持っている。一聴するととても複雑な音楽で、変拍子は入れ替わるわ、フレージングもコード進行も奇抜、と演奏するのは容易でないのだが、そのメロディーは一度聞いたら頭から離れなくなるのだ。ご本人にどうやったらこんなすごい曲が書けるのかと聞いても、笑ってちゃんとは答えて下さらない。現場ではリハーサルもなければこれといった指示もない。それでいて全員が沢田音楽を構築する音を出す。これはもう魔法だと思う。
沢田さんが信頼する相棒であり、このアルバムでも大活躍のギターの馬場さんがまたすごい。ボイシングといい、コンピング(伴奏)の妙といい、フレージングといい、グルーヴ感といい、一緒に演奏していて何をとっても楽しくてしようがない。このアルバムに参加されてるピアノの望月慎一郎氏もドラムの池長一美氏も、面識はないがその素晴らしい演奏をこのアルバムで存分に楽しませて頂いた。そして我が相棒の城戸夕果さんが2曲でゲスト参加している。手前味噌のように聞こえてしまうかも知れないが、筆者は心底夕果さんの演奏が好きなのだ。彼女にしか出せない音色とタンギング、そして何より彼女のグルーヴ感に憧れる。
そう、音色。音楽はつくづく音色とタイム感だと思う。沢田さんのアップライトベースの音色は殆ど生音なのだが、それはまさに沢田サウンドの音色だということに加え、メリハリの効いたタイム感が気持ちいい。馬場さんはLine 6のエフェクトユニットを使われるが、彼も独自の魅力的な音色を持っている。それに加えてあの自由自在なボイシングだ。このアルバムでの一つの楽しみは、ギターとピアノの二つのコード楽器が醸し出す世界だ。通常は物理的にギターがピアノに従うことを要求されるが、この二人はお互いに触発しあって可能性を広げているのが手に取るようにわかる。
筆者もこの夏のツアーでアルバム収録曲の<人生束の間の夢>、<雪明かり>、それと<モノクローム>を演奏させて頂いた。残りの曲も<奇妙な絵>と<コントラバンダ#1、2>以外は演奏候補だったので譜面を頂いた。東京、大阪2公演、京都、とあったのでそのほかにもたくさん沢田さんの音楽を演奏させて頂き本当に楽しい時間を過ごさせて頂いた。その時とこのアルバムとの違いは、このアルバムでは馬場さんのギターがメロディー役を務めていることだ。夏のツアーではピアノが入らない代わりにフロントは我々のフルート2本という構成だったのだが、こうやってアルバムを聴くと編成が変わっても全く沢田音楽一色であることに驚く。沢田マジックをお楽しみ頂きたい。
城戸夕果、Yuka Kido、馬場孝喜、望月慎一郎、沢田穣治、池長一美、Love to Brasil Project