#1357 『ギラ・ジルカ&矢幅歩/Morning Light SOLO-DUO 』
text by Yumi Mochizuki 望月由美
Jump World DDCZ-2117 2800円+税
01 Tomorrow (ギラ・ジルカ、矢幅歩)
02 How Deep Is Your Love (B.A.Gibb、M.E.Gibb、R.H.Gibb)
03 Spinning Wheel(D.Thomas)
04 Love (B.Kaempfert)
05 So Nice (Summer Samba) (P.S.Kostenbader Valle、M.Kostenbader Valle)
06 夏の終りのハーモニー (井上陽水、玉置浩二)
07 Yesterday Once More ( R.Carpenter/J.Bettis)
08 A Flake Of Snow (ギラ・ジルカ)
09 Baby, It’s Cold Outside (F.Loesser)
10 I Love You (ギラ・ジルカ)
11 The Christmas Song (M.Torme)
12 ユキノヒトヒラ (ギラ・ジルカ)
13 やさしさに包まれたなら (荒井由実)
エグゼクティヴ・プロデューサー:三田晴夫(superboy Inc.)
Morning Light Session(M1,2,4,5,6)
ミュージシャン:ギラ・ジルカ(v0)、矢幅歩(vo)
松本圭司(p on M 1,6)、SOKUSAI(elb on M1,6)
竹中俊二(g gon M2,4,5)
中島徹(p on M4,5 )
録音:2016年6月30日,7月8、10日、8月10日at oasis studio home & Studio ATLIO
エンジニア:Takahiro Yamaguchi
A Flake Of Snow Session」(M8,9,11,12)
ミュージシャン:ギラ・ジルカ(v0)、矢幅歩(vo)
竹中俊二(g )
コモブキイチロウ(elb)
岡部洋一(per on M12)
録音:2014年9月24,29日、10月2,10,16日at oasis studio home
エンジニア:Shinya Uno
「Yesterday Once More」 Session(M3,7,13)
ミュージシャン: ギラ・ジルカ(v0)、矢幅歩(vo)
竹中俊二(g)
中村健吾(b)
録音:2014年5月7,21,29日at vanilla house sound lab
エンジニア:Seiji Morita
I Love You(M10)
ミュージシャン:ギラ・ジルカ(v0)、矢幅歩(vo)
竹中俊二(g)
録音:2010年5月 29日at Sound Lab OISEAU
エンジニア:Shuichi Watanabe
今回の「ソロ・デュオ」は今年の6月から8月にかけてレコーディング された新録「Morning Light Session (M1,2,4,5,6)」のほか2014年9月から10月に録音された「A Flake Of Snow Session」(M8,9,11,12)、2014年5月の「「Yesterday Once More」 Session(M3,7,13)、2010年5月のギラのファースト・ソロ・アルバム「ギラ・ジルカ/all Me」(10)から選曲されているが、いわゆるコンピレーションものではなく、「ギラ・ジルカ & 矢幅歩 SOLO-DUO」の名唱、名演を選び抜いたアンソロジーといった面持ちで、曲の並べ方も単に録音年月順とかではなく、音楽の流れがスムーズでじっくりと二人の世界に浸れるような配慮がなされていて「ソロ・デュオ」の生気のあふれる姿が鮮やかにクローズアップされている。
演奏曲もジャズやスタンダードにこだわらずソウル、ポップス、日本の歌謡にまで及びメル・トーメの(11)<ザ・クリスマス・ソング>やフランク・レッサーの(9)<ベイビー、イッツ・コールド・アウトサイド>といった通好みの曲からブラッド・スウェット・アンド・ティアーズの(3)<スピニング・ホイール>、ワルター・ワンダレイ(org)で大ヒットした(5)<サマー・サンバ>、リチャード・カーペンターの(7)<イエスタデイ・ワンス・モア>、さらに井上陽水の(6)<夏の終りのハーモニー>、荒井由実の(13)<やさしさに包まれたなら>までをカバーし、曲によってはオーバー・ダビングを交えて彩りを加えている。
そして更に要所要所を自分のオリジナル曲できりっと締めるといった「ソロ・デュオ」ならではのジャンルを超えたレンジの広い選曲である。
これらの歌曲をあたかも「ソロ・デュオ」のための曲のように歌いきって統一感を保っているのは二人が曲の詩を大切にし、自分の言葉にして語りかけるからで、歌詞のもつ力、説得力が伝わってくる。
映画「Round Midnight」でデクスター・ゴードンが<オータム・イン・ニューヨーク>を吹くシーン、歌詞が頭に入っていないと吹けない、とデックスがつぶやくシーンで歌詞の重みをかみしめたことが思い出され「ソロ・デュオ」の唄ともかさなる。
チーム「ソロ・デュオ」はギラ・ジルカと矢幅歩の二人の感性と音楽性がぴったりと一致し、お互いを尊重し合い、デリケートなバランスを保ちながらそれぞれの個性を発揮しているユニークなツイン・ヴォーカル・グループで、普段はそれぞれソロ・ヴォーカリストとして活動しながら並行してこのデュオ活動を行っているがあたかも常時デュオ活動を行っているかのように二人だけの濃密な世界を描ききっている。
CDが売れない環境の中で多くのミュージシャンがライヴの現場で自分の音でファンを魅了しCDを買ってもらおうと地道に努力をしているが「YESTERDAY ONCE MORE 」セッションと「A Flake Of Snow」セッションもライヴ会場限定販売のかたちで流通経路を通さず「ソロ・デュオ」のライヴの現場のみで販売されていたが今回『Morning Light SOLO-DUO ギラ・ジルカ&矢幅歩』(JUMP WORLD)として新録「Morning Light Session」などと一緒にまとめられたものである。
こういった録音年月やロケーション、共演ミュージシャン、エンジニアがそれぞれ異なる音源を一つのアルバムにまとめる場合、往々にしてそのギャップが耳につくことがあるが、このアルバムでは二人の声を前面に大きく浮かび上がらせるというプロデューサーの意向がよい方向に作用し、全体の統一感が程よく保たれていてギラと矢幅にしか表現しえない世界を創りだしている。
結成から10年、二人の音楽には生きた唄が聴こえてくる。
ギラ・ジルカ、矢幅歩、Morning Light、Solo-Duo