#2369 『ホレンバーグ、ウェストン、スパイカートリオ / Dead Jazz』
Text by Akira Saito 齊藤聡
Park West Records
https://parkwestrecords.bandcamp.com/album/dead-jazz
G Calvin Weston (drums, trumpet)
Tom Spiker (bass)
Matt Hollenberg (guitar)
1. Man Does Not Choose
2. Revolt of the Flesh
3. The Sacrifice of the Intellect
4. Born in the Desert of Mind
5. Fire in the Madhouse at the End of Time
6. Impotence Reigns
7. From Freedom comes Indifference
8. The Worm in Man’s Heart
Recorded and Engineered by Tom Spiker
Mixed by Tom Spiker and Matt Hollenberg
Mastered by Jim Clouse, Park West Studios
Recording Studio: Undercarriage Recording, Philadelphia, PA
Photo by Matt Hollenberg
Artwork by Seth Indigo Carnes
www.sic.studio
@soulincode
古くからのジャズ・ファンであれば、メンバーの中にカルヴィン・ウェストンの名前を見つけて驚くかもしれない。じつのところ60代の半ばとまだ若い。なにしろオーネット・コールマンの『Of Human Feelings』(1979年録音)においてロナルド・シャノン・ジャクソンの後釜として起用されたとき、ウェストンは19歳に過ぎなかったのだ(*1)。オーネットが押し進めたハーモロディクス、ジャズ・ファンクは、いまにいたっても起爆剤となりえている。裏を返せばタイトル通りジャズなんて死んでいる。なんて皮肉。
たしかに、ここでサウンドのエンジンをふかすウェストンのプレイには安寧というものが見当たらない。自身の信じるビートは既存のフォームとはまったく異なるのだ。飽くことなく地を鳴らしボディブローを繰り出し続けるプレイはやはりカッコいい。
そして、このサウンドが既存のフォームとは無縁だという大前提付きでいえば、ギターとエレクトリックベースがパートナーとしてハマる。ウェストンがデレク・ベイリー、ジャマラディーン・タクマと組んだ『Mirakle』(1999年)がいまなお突破力をもつように。
マット・ホレンバーグのギターの長い音価は力強く揺れ動き、荒れる大海の上でも沈むことのない船のようだ。ときにサウンド全体を蛍光色で塗りつぶし、エネルギーレヴェルを励起しまくる。<From Freedom Comes Indifference>における和音のラインなど狂気だ。そしてトム・スパイカーのベースにより聴く者の脳は絶えず震撼させられる。この音があれば酒など要らないのかもしれない。
(文中敬称略)
(*1)ジョン・リトワイラー『オーネット・コールマン ジャズを変えた男』(ファラオ企画、原著1992年)
マット・ホレンバーグ、カルヴィン・ウェストン、トム・スパイカー