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#2372 『中村海斗/Invisible Diary』with 佐々木梨子、布施音人、高橋陸、加藤一平

Text by Hideo Kanno 神野秀雄

『中村海斗/Invisible Diary』
中村海斗 Kaito Nakamura Davis: drums
佐々木梨子 Riko Sasaki: alto sax
布施音人 Otohito Fuse: piano
高橋 陸 Riku Takahashi: bass
加藤一平 Ippei Kato: guitar (1,2,3,7,8,9)

1. Endless Spring Vacation
2. Withdraw
3. バルバロ
4. Little Warm Winter
5. Part 1. Hometown
6. Part 2. Unpredictable Inevitability
7. Part 3. Dada’s Hands
8. Part 4. Memorial Days
9. Part 5. <(%9 2(<8%¥%××〒6

All compositions by Kaito Nakamura
Recorded on August 23-24, 2024 at Studio Dedé.
Engineered, mixed and mastered by Akihito Yoshikawa.
Photographs by Osamu Nakamura.
Layout designed by Otohito Fuse.

Mid Village Records MV001 (自主制作)

2001年ニューヨーク生まれで、日本に育ち、石若駿の次の世代のドラマーとして最も注目すべき存在の中村海斗。2022年にリリースしたファーストアルバム『Blaque Dawn』は大きな衝撃だった。そのメンバーは壷阪健登(p)、古木佳祐(b)に当時高校生だった佐々木梨子(as)で、メンバーそれぞれが知名度の低い”若手”だったが現在の世界的な活躍はご存知の通りだ。
『Invisibke Diary』は2024年に録音したセカンドアルバムだ。あえて海斗が自主制作を選び、自分の趣味全開で本当に好き勝手に、そして最高の関係者と共同作業をおこなった。バークリー音楽大学の1年生を終えて夏休みで帰国中の佐々木梨子とツアーを行い、8月末の二日間、Studio Dedeに入り、エンジニアの吉川により録音された。
最近のレギュラーメンバーであるツアーをおこなったばかりの海斗、梨子、布施音人(p)、高橋陸(b)に、海斗がずっと憧れだったギタリストの加藤一平をゲスト参加している。海斗はドラマーとしての凄さはもちろんだが、作曲家として音を描き出す能力がずば抜けていて全曲オリジナル。<Invisible Diary>というタイトルも含めて2020年頃からの海斗の個人的な出来事にインスパイアされた曲が多い。海斗の作曲したストーリーの上で、メンバーが自由自在かつ緻密に繰り広げる演奏は衝撃的だ。20歳のアルトサックス佐々木梨子の音楽性も恐ろしいほどだ。完全アコースティックで攻めるカルテットに、約半数の曲で入ってくる加藤一平のサウンドが巧みにグループをときに包み込み、ときに攻撃的に絡み音響の幅を広げる。高橋陸の確かな歌心溢れたベースプレイ。布施音人は東京大学出身という経歴を持ちつつ、ライル・メイズらの影響も受け鮮やかな色彩感覚を持ち、ここでは力強いプレイを魅せる。海斗と陸は布施音人トリオのメンバーという位置関係にもある。
梨子の帰国と共に行われる期間限定ライヴのたびに進化が止まらないこのグループ、今後が楽しみだし、世界に発信されるべき日本の最先端ジャズだ。

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

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