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CD/DVD DisksNo. 332

#2414 『宮西計三 & THE HEAVY FRIENDS / 異端教祖』
『Miyanishi Keizo & THE HEAVY FRIENDS / Itan Kyōso』

text by 剛田武 Takeshi Goda

SARAMANDRA SARAMANDARE   CD/DL: SARACD-001   ¥3,000 (tax in)

宮西計三:vo, hca, g

皇帝ペンギンパラダイス:g
忘八門土:g, surbahar
ルイス稲毛:b
南部輝久:ds, djembe
George Murakami:b

1.   マニ教徒の歌‐首飾り‐
2.   拝銃教徒の歌‐16才で地獄行き‐
3.   頭皮剥ぎ教祖の歌‐スカルプ小唄‐
4.   コロンビーナよトレモローズ‐太陽の娘‐
5.   LES LANGUES DORE’ES レ ラングドレ‐金色の舌‐
6.   三人マリア‐毛だらけ童貞女‐
7.   撲滅殺人狂の歌‐無手勝殺法やぶれかぶれ!‐
8.   信教・猫のゴロゴロ‐愛の讃歌‐
9.   La’La’の神託‐ライラックの夜‐
10.  牝猫の巡礼‐マリアの顛末‐

Words:宮西計三
Music:宮西計三、皇帝ペンギンパラダイス、Aural Fit
Mixed &Mastered by 忘八門土 at PARALYMPIC STUDIO

https://keizomiyanishi.com/


地下音楽は命に火を灯す~異端シンガーの復帰作

宮西計三は70年代半ばにデビューした漫画家・イラストレーター。劇画誌やニューウェイヴコミックを中心にエロティックな芸術性とグロテスクな前衛性を兼ね備えた作品を発表しカルト的な人気を誇る。その活動は70年代後半~80年代の日本のパンクロックや地下音楽シーンとも連動し、パンクバンド、ザ・スターリンのデビュー・アルバム『Trash』(’81)のアートワークや、ニューウェイヴ雑誌「Heaven」での裸のラリーズのイラストなどを手掛け、音楽ファンにも知られる存在となる。1983年にスターリンの遠藤ミチロウのプロデュースでバンドOnna(オンナ)名義でシングル盤を自主リリース。精緻な線描で描かれた裸体画のジャケットのインパクトもさることながら、沈み込むようなドラムマシンとノイズ・ギターに乗せた耽美的な歌声は、パンクやニューウェイヴを超える異端音楽の暗黒の世界へのいざないだった。 それ以来、宮西は漫画・アート制作と並行して、様々な形態でライヴ活動を行うとともに、「Onna」「宮西計三 THE HUNDRED DEVILS」「ゴgozeゼ」といったユニットで、今は亡き地下音楽レーベルPSFなどから、寡作ながらも独創性に溢れた作品をリリースしている。

現在は岩手県盛岡市に住む宮西が、2023年9月頃に大腸がんで余命8カ月と宣告された。それを知った所縁のミュージシャンたちが立ち上がり「どうにかして、この人の音楽を記録として残したい」という思いで制作したCDが「宮西計三最後の録音」とサブタイトルされた本作である。演奏での参加は、Onnaのメンバーとして長年コラボしてきたギタリストの皇帝ペンギンパラダイスをはじめ、忘八門土、南部輝久、ジョージ・ムラカミ(以上Aural Fit)、ルイス稲毛(魔術の庭、落穂の雨、Cannonball Explosion Ensembleなど)、さらにアートワークは鈴木俊(阿呆船)といったPSFレコードとも縁が深い地下音楽シーンのベテランたち。レコーディングは宮西のパートを盛岡で、他のミュージシャンの演奏を東京で録音する方式で進められたが、完成した楽曲はリモートの距離感は全く感じられないどころか、逆に音と音・心と心がひとつに溶け合う一心同体のシンパシーに満ちている。

エスニックな演奏と邪教の呪文のような歌のT1「マニ教徒の歌‐首飾り」、ノイジーなインプロヴィゼーションで残酷な少年時代を歌うT2「拝銃教徒の歌‐16才で地獄行き‐」、メランコリックなハーモニカとギターが印象的なアシッドフォークT3「頭皮剥ぎ教祖の歌‐スカルプ小唄‐」、ブルージーな弾き語りT4「コロンビーナよトレモローズ‐太陽の娘‐」、インタールード風の短いインストT5「LES LANGUES DORE’ES レ ラングドレ‐金色の舌‐」、土埃の香りがするトーキング・ブルースT6「三人マリア‐毛だらけ童貞女‐」、ブルース調の弾き語りにノイズ・ロックがコラージュされるT7「撲滅殺人狂の歌‐無手勝殺法やぶれかぶれ!」、愛猫の鳴き声も聴ける牧歌的フォークT8「信教・猫のゴロゴロ‐愛の讃歌‐」、スライドギターの気怠いブルースT9「La’La’の神託‐ライラックの夜‐」、終末観に満ちた歌詞にも関わらず希望の光を感じさせるT10「牝猫の巡礼‐マリアの顛末‐」。どの曲も宮西ワールド全開の退廃的で文学的な濃密な音世界が堪能できる。

制作の計画がスタートした当初は、退院直後の衰弱した姿の宮西が(ジャケット写真参照)、か細く頼りない声で歌う文字通りの「遺作」になることを覚悟していたというが、制作を進めるうちに元気を取り戻し、レコーディングが完了したころには余命宣告の期限もとっくに過ぎてしまった。遺作どころか、未来への生命力に満ちた復帰作となった『異端教祖』は、宮西計三という稀有なる存在をリスペクトし愛する「濃厚な友人たち=THE HEAVY FRIENDS」の絆の結果であり、根源的に音楽が持つ治癒の力の証に違いない。

なお本作は参加ミュージシャンのボランティアによる自主リリースであり、売り上げの収益は可能な限り宮西計三本人に還元される形を取っている。この点も根源的な音楽の在り方として心強い限りである。(2025年11月29日記)

購入サイト:https://saramandra.stores.jp/items/68affcf4c3d7cd37aa486047

 

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。サラリーマンの傍ら「地下ブロガー」として活動する。著書『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。ブログ「A Challenge To Fate」、DJイベント「盤魔殿」主宰、即興アンビエントユニット「MOGRE MOGRU」&フリージャズバンド「Cannonball Explosion Ensemble」メンバー。

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