#1403『Dominic Miller / Silent Light』
Text by Hideaki Kondo
ECM, ECM2518
Dominic Miller (Guitar, Electric Bass)
Miles Bould (Drums, Percussion)
- What You Didn’t Say (Dominic Miller)
- Urban Waltz (Dominic Miller)
- Water (Dominic Miller)
- Baden (Dominic Miller)
- En Passant (Dominic Miller)
- Angel (Dominic Miller)
- Chaos Theory (Dominic Miller)
- Fields Of Gold (Gordon Mathew Sumner)
- Tisane (Dominic Miller)
- Valium (Dominic Miller)
- Le Pont (Dominic Miller)
Recorded March 2016/Rainbow Studio, Oslo
Produced by Manfred Eicher
パット・メセニー以降のフュージョン・ギターの流れにあるギタリストによる、通算14作目のアルバム。全編アコースティック・ギターによる演奏。ソロギターもしくは打楽器とのデュオで、1曲のみギターとベースのオーバーダビングを施している。曲は、1曲を除いて自作。
英米のポピュラー和声を用い、チェンジとメロディに還元されたソングライティングが行われている。形式は、11曲中9曲がアメリカンソング形式。演奏は、全曲ともソロアドリブと呼べる演奏は行われず、チェンジとメロディを定めた曲が、押さえたコードフォームのうちで処理される。英文ライナーではラテン音楽(M4)やケルト音楽(M10)などを例に国際色の強いアルバムと語られているが、これらの特徴を鑑みるに、実際には英米型のポピュラー音楽そのものと言えるのではないだろうか。
こうした枠の中で特徴となっているのが、極端なまでに限定された表現のあり方と感じた。ダイナミクスはどこを切ってもメゾピアノだけが選択される。音色も同様で、様々な音色を得やすいアコースティック・ギターを選択しながら、同じ音色だけが選択され続ける。和音も現在ジャズ/ポピュラー方面での常套句以外が選択される事は1度もなく(終曲は例外)、常に安定したサウンドカラーとチェンジの中で音が揺蕩う。まるでアクローム絵画を見ているかのような音楽だが、この美的感覚を成立させている根底にあるものに同調できるか、あるいはこのような佇まいをした音楽を自分の生活空間にどう関係づける事が出来るか、聴き手からすればこのあたりの距離感が重要となる作品であると思う。これは、ECMの少なからずの作品に共通する特徴でもある。 (近藤秀秋、2017.4.19)