#1325 『Jane Ira Bloom / Early Americans』
text & photo by Takehiko Tokiwa 常盤武彦
OUTLINE OTL142
Jane Ira Bloom (ss)
Mark Helias (b)
Bobby Previte (ds)
- Song Patrol
- Dangerous Times
- Nearly
- Hips & Sticks
- Singing The Triangle
- Other Eyes
- Rhyme Or Rhythm
- Mind Gray River
- Cornets Of Paradise
- Say More
- Gateway To Progress
- Big Bill
- Somewhere
Recorded & mixed by Jim Anderson at Avatar Studios, Studio B, NYC on July 16 & 17, 2015.
Produced by Jane Ira Bloom & Jim Anderson
異能のソプラノ・サックス・プレイヤー、ジェーン・アイラ・ブルームの長いキャリアで初めてのトリオ作品は、リズムとメロディが交錯する野心作だ。16枚目のリーダー作で、自らのレーベルOUTLINEからは、6作をリリースしている。パートナーに選んだのは70年代半ばから共演しているマーク・ヘライアス (b) と、2000年から共演しているニューヨーク・アンダーグラウンド・ミュージック・シーンの重要人物のボビー・プリヴェット (ds) だ。コードの束縛から解放され、ブルームのフリーキーなメロディが、柔軟なリズムにのって飛翔する。前作のバラード集『Sixteen Sunset』の静謐な音世界に、迸る激情が加わり、トリオとは思えない壮大な音世界がひろがる。オープニング・チューンの“Song Patrol”は、このトリオのステートメントを高らかに宣言した。シンプルなテーマ・メロディが、リズムの刺激され、ブルームのストレートなトーンと、正確なピッチで、自由奔放に駆け巡る。ヘライアスとブルームのデュオで幕明ける“Singing The Triangle”は、プリヴェットが加わるとドラスティックに変容し、リスナーを音楽的高揚に導く。骨太なヘライアスのラインは、このトリオの骨格をなし、プリヴェットはドラムスとパーカッションで、サウンドに鮮やかなカラーリングを施している。ファンキーなリズムの“Rhyme Or Rhythm”では、ブルームはエフェクターやマイクのオン・オフを駆使して、独自の音像を創造する。前作『Sixteen Sunset』の録音を手がけ、本作でも共同プロデューサーに名を連ねるレコーディング・エンジニア、ジム・アンダーソンの匠の技が、見事な瞬間を捉えた。前作の5.1chのサラウンド・ヴァージョンは、グラミー賞のベスト・サラウンド・サウンド部門にノミネートされた。本作も、サラウンド・サウンド・ヴァージョンでも、リリースされている。メランコリーでスピリチュアルな“Mind Gray River”は、このトリオの広大な表現領域を端的に顕している。唯一のカヴァー曲、バーンスタイン&ソンドハイムの“Somewhere”で、静謐に包まれてエンディングに至った。
6月5日のニューヨーク、コーネリア・ストリート・カフェにおけるリリース・ライヴは、インティメイトな空間が激しくも美しい3人のインタープレイで満たされた。ブルームは、ソプラノ・サックスを振りかざし、サウンド・エフェクトをかけ、プリヴェットは、シェイカー、リムショット、はてにはステージのパイプ配管まで叩き、ブルームに匹敵する奔放なプレイを展開。ヘライアスがどっしりと支えていた。力強いパートナーと共に、ジェーン・アイラ・ブルームの音楽的冒険は続く。
関連リンク Jane Ira Bloom http://www.janeirabloom.com/