#2021 『KARABA / VIOLA』
『カラバ/ヴィオラ』
text by Hiroaki Ichinose 市之瀬 浩盟
EMME RECORD LABEL / ERL.1916
Alessandro Casciano アレッサンドロ・カッシャーノ(p)
Stefano Rielli ステファノ・リエッリ(b)
Alberto Stefanizzi アルベルト・ステファニッツィ(ds)
1. Beijing
2. Viola
3. Parco Belloluogo
4. Colosseo
5. Blue Jeans
6. Primavera 19
7. Eleonora
8. Tonight Tonight
Recorded at Tube Recording Studio on 10ー11 Sep.2019
Mixed by Francesco Lungo
Mastered by Samuel Mele
放たれては消えていく万余の楔(くさび)
自分は若い頃から琴線に触れる音に出逢うとつい全身を揺らして次々と押し寄せ繰り出される音の波、揺らぎ、リズムの織りなす句読点とその間(ま)に正確に反応しようとしてしまう。全身で受け止めんとする振幅は波長が合えば合うほど自ずと大きく、そして小刻みになる。
自室ではもちろんのこと、行きつけのジャズ喫茶やコンサート・ライブでもそうなってしまう。不幸にして居合わせた方々はさぞや「こいつは何と落ち着きのない奴だ、目障りだ」と感じられたことだろう。
しかし、揺れると同時にこの身には次々と楔が放たれ瞬時に全身が凍り付くがその楔は瞬時に消え、また次の楔が突き刺さっては消えていく…。そこにはまるで刺客の如く繰り出される楔と一曲一曲全身で受け止め立ち向かっている自分がいる。
著しく柔軟さを欠くこの私の脳髄、五臓六腑、そして四肢をこねくり回しあちらこちらに万余の楔を打たれ続けられては解放され、いたぶられる。その快感に一曲一曲立て続けに演られた時の歓びは正に格別なものとなり、なかんずく、それが作品全編で繰り広げられていただければこれ即ち、私的超名盤となるわけである。
* * *
イタリアの現在進行形ピアノトリオ:カラバの’17年作のデビュー盤『UNO』(EMME RECORD LABEL / ERL1708)に続く2作目が届いた。
相変わらず3人の結束は堅固なものである。玲瓏な調べにベース、ドラムが次々とこれでもかとビシバシと決めてくる。これを演られるとおいちゃんはイチコロとなる。
いたぶられては癒され、またいたぶられ癒される…何度でも味わいたくなるこの秘薬のような1枚がまた一つ好みに処方された。