#1330 『Greg Ward & 10 Tongues / Touch My Beloved’s Thought』
text & photo by Takehiko Tokiwa 常盤武彦
GREENLEAF MUSIC GRE-CD-1050
Greg Ward (as)
Tim Haldeman (ts)
Keefe Jackson (ts,bs)
Ben LaMar Gay (cor)
Russ Johnson (tp)
Norman Palm (tb)
Christopher Davis (b-tb)
Dennis Luxion (p)
Jason Roebke (b)
Marcus Evans (ds)
- Daybreak
- Singular Serenade
- The Menacing Lean
- Smash, Push, Pull, Crash
- With All Your Sorrow, Sing A Song of Jubilance
- Grit
- Round 3
- Dialogue of the Black Saint
- Gather Round, The Revolution Is At Hand
Recorded Live by Constellation in Chicago IL.
Mixed and Mastered by Griffin Alan Rodriguez
Produced by Greg Ward, Mike Reed and Roell Smidt.
Executive Producer Dave Douglas
シカゴ・ベースで活躍するグレッグ・ワードの10ピース・オーケストラの野心作は、チャールス・ミンガス (b) の『The Black Saint and the Sinner Lady』へのオマージュ作だ。1963年に録音された同作はミンガス自身が「エスニック・フォーク=ダンス・ミュージック」と呼び、一部はバレエのための音楽として制作され、4曲と6つのムーヴメントがシームレスに繋がるジャズ史上に輝く金字塔である。ワードは、シカゴ市が主催し、ジャズ・インステチュート・オブ・シカゴが運営する “Made in Chicago : World Class Jazz Series” のコミッション・ワークとして、『Touch My Beloved’s Thought』を制作した。シカゴの著名なコリオグラファー(振り付け師)のオンイェ・オズズとの共同プロジェクトで、15人のダンサーとのコラボレーション作品である。、ワードのオリジナル曲や、ミンガスの楽曲にオズズ自身とダンサー達が実際に踊り、さらにアイディアを膨らませて6ヶ月をかけて完成させた。「いつもは孤独な作業である作曲が、エキサイティングなプロセスになった」とワードは語る。本作もミンガスの『The Black Saint and the Sinner Lady』と同様に、シームレスに9つの楽曲が繋がり、スモール・ビッグバンドならではのアンサンブルと、インプロヴィゼーション、インタープレイが、絶妙にブレンドされている。ダンサーも参加したパフォーマンスでのライヴ録音だが、音源のみでも高い完成度を誇っている。グレッグ・ワードは2009年から活動したニューヨークから、昨年拠点をシカゴに戻した。本作も現代シカゴの尖鋭的なプレイヤー達が、参加している。ソロは全編にわたりワードが中心に執っているが、デニス・ラクソンは“Singular Serenade”でブルージーなソロ・ピアノを聴かせ、キーフェ・ジャクソンは“Grit”で、骨太なバリトンソロを執る。ベースのジェイソン・ローブックのソロから導かれる“Dialogue of the Black Saint”では、ベン・ラマー・ゲイがミンガスの時代を彷彿させるコルネットの激しいプランジャーを執り、大団円の12分を超える大曲“Gather Round, The Revolution Is At Hand”へと至った。
7月8日のニューヨーク、ジャズ・ギャラリーにおけるリリース・ライヴでは、ワードがシカゴから連れてきたメンバーと、昨年までニューヨークで活動を共にした、ルーカス・ピノ (ts)、ウィリー・アップルホワイト(tb)、マックス・シーガル (b-tb)、ケネス・ソルターズ (ds)が参加し、ニューヨーク/シカゴ混成バンドで、スリリングなプレイを聴かせてくれた。ぜひ、ダンサーも参加したパフォーマンスも体感したい。
Greg Ward & 10 Tongues on Greeleaf Music (サンプル音源)
https://www.greenleafmusic.com/touch-my-beloveds-thought/