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Jazz and Far Beyond

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CD/DVD DisksNo. 221

#1336 『The Cookers / The Call Of The Wild And Peaceful Heart』

photo & text by Takehiko Tokiwa 常盤武彦

Smoke Sesssions Records (SSR-1607)

David Weiss (tp)
Eddie Henderson (tp)
Billy Harper (ts)
Donald Harrison (as)
George Cables (p)
Cecil McBee (b)
Billy Hart (ds)

  1. The Call Of The Wild And Peaceful Heart
  2. Beyond Forever
  3. Third Phase
  4. Teule’s Redemption
  5. If One Could Only See
  6. Blackfoot
  7. Oceans Of Time
  8. Thy Will Be Done

Recorded Live by Chris Allen at Sear Sound, Studio C, NYC on April 11th & 12th, 2016

Produced by Paul Stache

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中堅トランペッターのデヴィッド・ワイスが、9年前にヴェテラン・プレイヤーを結集して結成したオール・スター・グループ、クッカーズが、レーベルをスモーク・セッションズ・レコーズに移籍して5枚目のアルバムをリリースした。ワイス自身が、最もスピリチュアルで、激しいプレイと自負する快作である。
クッカーズは、2007年にフレディ・ハバード (tp) と リー・モーガン (tp) のトランペット・バトルがフィーチャーされた『The Night of the Cookers』をトリビュートして、ワイス、チャールス・トルヴァー (tp)、ジェイムス・スポルディング (as,fl) らと結成された。ワンタイム・パフォーマンスの予定だったクッカーズは、フロント・メンバーをエディ・ヘンダーソン (tp)、ビリー・ハーパー (ts)、クレイグ・ハンディ (as,fl) に一新して2010年に再始動。以来コンスタントにツアー、アルバム・リリースを継続し、2014年リリースの前作『Time and Time Again』で、ハンディに替わり、ドナルド・ハリソン (as) が参加して現在に至る。ワイスは、晩年のフレディ・ハバード (tp) を音楽シーンに復帰させたり、チャールス・トルヴァー (tp) のビッグ・バンド復活をヘルプしたりと、上の世代のアーティスト達へのリスペクトと再評価に尽力し、成果を残してきた。ハーパー、ヘンダーソン、ジョージ・ケイブルス (p)、セシル・マクビー (b)、ビリー・ハート (ds) らは、60年代にマイルス・デイヴィス (tp)、ジョン・コルトレーン (ts,ss) の洗礼をうけ、60年代後半から70年代の混沌としたジャズ・シーンで、ハード・バップ、スピリチュアル・ジャズの分野をリードしてきた。ワイスは、彼らジャズが最も熱かった時代を知るヴェテランを再結集し、ヘヴィー級のドリーム・チームを結成した。

クッカーズは、単なるオール・スターのジャム・セッションのようなバンドではなく、ヴェテラン達が残してきた名曲、佳曲に、アレンジャーとしても評価が高いワイスが、この4管ユニットのための編曲を書き下ろし、21世紀の視点で新たな息吹を踏み込むコンセプトのバンドである。オープニングを飾るタイトル・チューン「The Call Of The Wild And Peaceful Heart」は、ビリー・ハーパーのスピリチュアル・ジャズの傑作『Black Saint』からの選曲。オリジナルの2管を4管に拡大し、ハーパー、ケイブルスに並んでウェイスもスピリチュアルなソロを執り、ハートのドラミングが煽る。続くジョージ・ケイブルス作の「Beyond Forever」は初出はエディ・ヘンダーソンの「Comin Through」(1977)で、ジャズ・ロック・スタイルでプレイされ、ケイブルス自身が1994年の同名タイトル作で、アコースティックにリ・アレンジされた。ここでも、ドナルド・ハリソンがヴェテランに挟まれて好演している。「Third Phase」はセシル・マクビー作のバラードだ。このグループのクールな側面に、スポットが当たる。ビリー・ハートの「Teule’s Redemption」は1997年の『Oceans of Time』と2014年にECMからリリースされた『One is the Other』でフィーチャーされた曲だ。ここでは、フリーキーな混沌としたムードから、力強いビートと共に、メロディが立ち上がり、激しいインタープレイのソロが駆け抜ける。ビリー・ハーパーの「If One Could Only See」は、は、1989年の『Destiny is Yours』で初演されたバラードだ。オリジナルではハーパー自身のリリカルなプレイが光る。本作ではオリジナル・レコーディングには参加しながら、この曲には参加していないエディ・ヘンダーソンが、朗々と歌いあげる。「Blackfoot」はジョージ・ケイブルスが1993年にジェイ・アンダーソン (b) と、アダム・ナシュバム (ds) とのトリオで録音した『I Mean You』からのブルージーな一曲。ネイティヴ・インディアンにインスパイアされたこの曲は、4管が加わりさらにダークな色彩を帯びた。ケイブルスのソロは、前作と比べても遜色のなくスウィンギーに踊る。ビリー・ハートが1997年にリリースした『Oceans of Time』は、デヴィッド・フュージンスキー (g)、マーク・フェルドマン (vln)、クリス・ポッター (ts,ss,b-cl) をフィーチャーしたアヴァンギャルドな側面をもつ異色作だ。そのタイトル曲も、ハードバップへと転生した。エンディングはビリー・ハーパーの「Thy Will Be Done」だ。2007年にリリースされたポーランドでのライヴ盤からのスピリチュアルなセレクションで幕を閉じた。5人の大ヴェテランのすべてのリーダー・アルバムを聴き込み選曲し新たなアレンジを書いた、デヴィッド・ワイスの熱意には頭が下がる。また彼らが、80年代以降も重要な作品を残していることに改めて驚かされた。

レコーディングの2週間前に、ザ・クッカーズはレーベルの本拠地、ジャズ・クラブの”Smoke”に出演した。アルバムのレパートリー以外にも、スタンダード・チューンも演奏され、ジャム・セッション的な一面も愉しめた。翌週からのヨーロッパ・ツアーを経て、メンバーはスタジオに再集結する。本作はアナログ録音で評価の高い、ニューヨークのシェア・サウンド・スタジオのスタジオCでクリス・アレンにより、シェア=アヴェロン・カスタム・コンソールで96KHz/24bitのリゾリューションで録音され、1/2アナログ・テープにミックスされている。CD、重量盤LP、そしてハイレゾ・ダウンロードでリリースされる。現代にも脈々と流れるスピリチュアル・ジャズのスピリットを、最高のクオリティのサウンドでも体感して欲しい。

The Cookers http://www.thecookersmusic.com/

Smoke Sessions Records http://smokesessionsrecords.com/

 

 

 

 

常盤武彦

常盤武彦 Takehiko Tokiwa 1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。2017年4月、29年のニューヨーク生活を終えて帰国。翌年2010年以降の目撃してきたニューヨーク・ジャズ・シーンの変遷をまとめた『New York Jazz Update』(小学館、2018)を上梓。現在横浜在住。デトロイト・ジャズ・フェスティヴァルと日本のジャズ・フェスティヴァルの交流プロジェクトに携わり、オフィシャル・フォトグラファーとして毎年8月下旬から9月初旬にかけて渡米し、最新のアメリカのジャズ・シーンを引き続き追っている。Official Website : https://tokiwaphoto.com/

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