#2314『サム・ニューサム&マックス・ジョンソン / Tubes』
Text by Akira Saito 齊藤聡
Unbroken Sounds U07
https://maxjohnson.bandcamp.com/album/tubes
Sam Newsome (soprano saxophone, horn preparations, toys)
Max Johnson (double bass)
1. Dust
2. Strangled Duck
3. Grizzly Bear
4. Four Portraits
5. Blue Monk
6. Tubes & Keys
7. Helicopter Exit
Recorded at Conveyor by Jason Borisoff on March 18, 2023
Mixed and Mastered by Max Johnson
Photo by Peter Gannushkin
Design by David Mirarchi
All music by Max Johnson (Max Johnson Music ASCAP and Sam Newsome (Some New Music BMI), except “Blue Monk” by Thelonious Monk
マックス・ジョンソンというベーシストは、共演者と作り上げようとするサウンドに最適なようプレイする人である。それがかれの美学であり矜持である。だから、主力として参加したアルバムはストレートアヘッドなジャズからアヴァンギャルドまで幅広い。本盤はどちらかといえば後者の性質をもつものだが、コントラバスという楽器の特性を活かしきり、落ち着いた場所からじっくりとサム・ニューサムとの対話を繰り広げるという点では、実験的なサウンドにはとどまらない。
スタンダード曲はこのようなときに試金石として使われることが多い。唯一オリジナルでない<Blue Monk>はセロニアス・モンクの有名な曲であり、無数のジャズミュージシャンたちによって演奏されてきたにもかかわらず、じつに新鮮だ。ニューサムはときに朗々と管を共鳴させ、そんなときにジョンソンが眼前の音を大きく包み込む。ジャズのアドリブ・フレーズという観点からも、楽器の音色という観点からも、ニューサムの音はみずみずしく、確信をもって吹いているように感じられる。
他のふたりのオリジナル曲となると、かれらはサウンドの周縁域に移動する。サックスもコントラバスも出すことのできる限界あたりの音を、みごとに制御して提示してみせる。そのときも独立的に極端なプレイをするのではなく、ずっとコミュニケーションを伴っている。したがって、その時点の音だけを取ってみれば特異なものであっても、不自然さのまったくない音風景がゆるやかに遷移する。
ソプラノサックスとコントラバスのデュオはさほど多くないが、本盤は他のミュージシャンたちも触発しうるほどの作品にちがいない。日本のシーンでも広く共有され聴かれてほしい。
(文中敬称略)