#346 『紙上 理(しがみ・ただし)/In a Sentimental Mood』〜Hear, there and everywhere #4
「及川公生の聴きどころチェック」今月の9枚
Aketa’s Disk MHACD-2650 本体2,667円+税
Ellingtonian 7;
紙上 理 (b)
松島啓之 (tp)
澤田一範 (as)
高橋知己 (ts)
紙上雅彦 (bs)
元岡一英 (p)
田村陽介 (ds)
1. O.P (Charles Mingus)
2. I’ll Remenber April (Gene De Paul)
3. Bye-Ya (Thelonious Monk)
4. Tokyo Dusk (Kazuhide Motooka)
5. Song Of Five Islands (Tadashi Shigami)
6. In A Sentimental Mood (Duke Ellington)
7. Ellington Medley (Duke Ellington)
~Creole Love Call, Black And Tan Fantasy, Mood Indigo~
8. Hokkaido No Uta (Tadashi Shigami)
録音:2015年8月4日、9月28日、12月14日「アケタの店」
録音+マスタリング・エンジニア:Masaaki Shimada
Piano tuner: Mitsuteru Toya
Supervisor: Tomokazu Sato (Hanamaki)
Producer: Aketa (Shoji Aketagawa)
痛快な明解録音。ライブ録音でありながら、「かぶり」を全く感じさせないセクションの分離の良さ。驚きである。ライブ会場の音の抜けの良さも加わって、各楽器のサウンドに輝きがある。デジタル録音時代の立ち向かい方を熟知したエンジニアの技と判断。マイキングが結果を出しているのだろう。聴いていて気分のいいサウンドだ。とにかくバランスが見事。各楽器のエッジも明確。音像が引き立っている。
Hear, there and everywhere #4
Kenny Inaoka 稲岡邦彌
紙上 理(しがみ・ただし)、1940年、五島(長崎県)生まれの大ベテラン・ベーシスト。山下洋輔や渡辺貞夫のグループで活躍し、エルヴィン・ジョーンズとの共演歴もあるという。
率いていた紙上 理グループの髙橋知己(ts)と元岡一英(p)に促されて復帰、Ellingtonian 6を結成したが、息子のバリトンサックス紙上雅彦を加えてEllingtonian7となった。若手バリサックスではRIO(永田利樹b、早坂紗知saxの息子)の活躍が目ざましいが、紙上雅彦も親父を盛り立てバックでソロで存在感を発揮している。7ピースのバンドというとカウント・ベイシーのカンザス・シティ7を思い出すが、KC7はトロンボーンとギター入り。
Ellington7は、紙上のエリントン好きからの命名で、アルバム・タイトルにもエリントンの<イン・ナ・センチメンタル・ムード>が付けられている。この曲では紙上のアルコがフィーチャーされており、エリントンに対する切々たる想いが胸に沁み入る。続く<エリントン・メドレー>は、<クレオール・ラヴ・コール><ブラック・アンド・タン・ファンタジー><ムード・インディゴ>の3曲。サックス・アンサンブルがエリントン・オケの雰囲気を醸し出す中、よく歌う松島のミュート・トランペットと雅彦のバリサックスに続いて、沢田のアルト、髙橋のテナー、元岡のピアノのソロが配される。<ソング・オブ・ファイブ・アイランド>と<北海道の詩>は紙上のオリジナル。<ソング・オブ〜>は故郷「五島」に捧げた曲でカリプソ・タッチ。髙橋のフルートと沢田のアルトが小鳥が舞う明るくネイティヴな島の生活が活写される。<北海道の詩>は、道産子の髙橋、澤田、元岡、さらに紙上の奥さんにちなんだ曲。紙上のメンバーとファミリー想いの気持ちから生まれたのだろう。バッピッシュな曲調で紙上のよくバウンスするピチカートに乗ってメンバーがそれぞれ快適なソロを展開する。
年齢的にはほぼ三世代にわたるバンド構成だが、紙上を中心にバンドがよくまとまり、アンサンブルと経験豊富なベテランによるソロを充分楽しむことができる。
紙上 理、Ellingtonian 7、髙橋知己、元岡一英、松島啓之、澤田一範、紙上雅彦、田村陽介