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Concerts/Live ShowsNo. 314

#1307 The Music of Benny Golson@Smoke, NY

text by Shoji Hoshino 星野正治

マンハッタンのジャズクラブへ演奏を聴きにいくのが減っていたが、この5月8日(水)から12日(日)までベニー・ゴルソン作曲になる曲をNY地域でのベテラン奏者達が演奏するのを知り、最終日の12日にジャズ好きな日本人友人を誘ってマンハッタンのジャズクラブSmokeへ行き、ファーストセット7時の演奏を聴いた。メンバーと演奏曲は英語で以下の通りであった。

SMOKE Jazz Club: 5/12/2024 7 p.m. show
The Music of Benny Golson

Billy Pierce (tenor saxophone), Eddie Henderson (trumpet), Steve Davis (trombone), Mike LeDonne (piano), Buster Williams (bass) and Carl Allen (drums)

1.  (Grove’s) Groove
2. Stablemates
3. Lover Man (Steve Davis tribute to Curtis Fuller)(This song was composed not by Golson but by Jimmy Davis, Roger (“Ram”) Ramirez, and James Sherman for Billie Holiday)
4. Killer Joe
5. Uptown (AfterburnCeledia Music Co.)
6. Whisper Not

Smokeのお店配信ビデオからのスクリーンショット写真。

まさに当方にとっては懐メロを聴きにカラオケへ行ったごとくであった。1曲目と5曲目は馴染みがなく、曲名を手短かにしか言ってくれないので不明。トランペット、テナーサックス、トロンボーンの3管編成であったので、ゴルソンと縁のあるJazztetと似たサウンドであった。ソロは皆そつないが熱気溢れる演奏とはいえず残念ながら大感激するには至らなかった。ベースのバスター・ウィリアムズが流石のドライブ感のあるバッキングをしていると思えた。1980年代はまだ若手・中堅だったミュージシャン達が浦島太郎の玉手箱の話のごとく老けていて、翻って自分自身もジイさんになってるのだと痛感させられた。

百聞は一見/一聴にしかずで、インターネットを検索したらFacebookにSmokeのお店がライブ演奏のビデオ1本(11:37)をライブ配信しているのを見つけたので、Facebookに登録しているならば 
https://www.facebook.com/watch/live/?/ref=watch_permalink&v=3803455843309967
にアクセスして配信ビデオでの演奏を聴いて頂きたい。(このビデオ演奏の曲名は不明)うまくアクセスできない場合は、新規登録するか、「Music of Benny Golson」「Smoke Jazz Club」をキーワードとして検索されたい。

久々のこの機会を利用し、ジャズに関わる個人的感想を述べたい。(追記なので読み飛ばしオーケーです。)

(1)ベニー・ゴルソンは1929年1月25日生まれで、95歳の今も健在。奇しくも同じテナーサックス奏者のソニー・ロリンズと共に健在であるが、流石に両者共にライブ演奏は今はほとんどない。個人的には自分が最初にジャズを好きになったアート・ブレイキー・バンドのミュージック・ディレクターとしても登場し、Blues March、 Along Came Betty、 I Remember Clifford、 Whisper Not、 Five Spot After Dark、 Killer Joe などの彼の作曲になる名曲は断トツである。コルトレーンについてのドキュメンタリー映画『Chasing Trane』を確か2017年にマンハッタン・グリニッチビレッジの映画館で見たが、その時のパネル・ディスカッションにゴルソン氏も参加しており、終了後にご本人に挨拶し握手して貰ったが実に温厚な人物との印象が残った。

(2)クラブSmoke (2751 Broadway, New York, NY 10025, at 106 Street, Manhattan 目下、親パレスチナの学内デモで大荒れのコロンビア大学から南へ少し下がった所)(https://smokejazz.com/about/ 店の案内; https://tickets.smokejazz.com/ 入場切符案内; https://smokejazz.com/food-menu/ 食事メニュー)は、2022年にレストラン・クラブとして再オープン(内装は煉瓦の壁で綺麗)したとの由で、他のクラブと同じくオンラインの予約が必要。その際入場料一人$55をクレジットカードで支払う。バーカウンターはなくテーブル着席をさせられ、予約と共に食事のための着席の時間(今回は5時45分)も決めさせられた。

夜7時、9時、10時半の3セットのうち7時と9時の部は食事が強制される。「和牛」の名がついたチーズバーグ(Wagyu cheeseburger)を食べたが、結構美味であった。他のお客の注文を見た所、それなりに美味しそうであった。ジャズクラブの食事は一般的に美味しくないので、ハンバーグが無難と云われているがこの店は自信があると思える。この食事がチップを含め1人$58であったので入場料1人$55を含めると$100以上になる。特にコロナ禍以降は出費額が高騰しており、ブルーノート、バードランドなどの有名店では一人$100以上を覚悟する必要がある。ジャズ友人の小川隆夫君が700頁にも及ぶ労作『ジャズ・クラブ黄金時代・NYジャズ日記1981-1983』を昨年12月に出版したが、安くハシゴ聴きもできた当時から40年を経過してクラブでライブ演奏を聴くのも物凄く敷居が上がってしまい隔世の感あり。あの良きアメリカは戻らないと思われる。

(3)実は1月26日(金)に、1924年1月10日生まれ(2007年8月16日没)のマックス・ローチ生誕100年を記念して、Max Roach Tribute: Freedom Now Suite, We Insist! Concertと題するコンサートが、お隣りのニュージャージー州ニューアーク市 (Newark、ウェイン・ショーターの生まれ育った町) にあるNJPACという音響の良いホールであったので、ぜひその模様を報告したいと思い行ってきた。コルトレーンの息子ラヴィ・コルトレーン、歌手カサンドラ・ウィルソンも参加するコンサートであったが、自分にとっては感動する要素が残念ながらほとんどなく、報告を断念せざるを得なかった。カサンドラはアビー・リンカーンの唄の再現でもなく台詞のないほとんどがアフリカ色の強い詩の朗読であったし、ラヴィのテナーサックス・ソロも少なかったし、若いドラム奏者によるドラムソロもほとんどなく、マックスがM’BOOMの名の元にドラマー・打楽器奏者を集めて合奏していた再現もなく、アフリカ系のパーカッションの演奏が中心と思え、アメリカの黒人としての要素が感じられず違和感のままコンサートが終わってしまった。場所がら身なりの良い年配の黒人の観客が結構多かったが、熱狂的あるいは盛大な拍手はなかった。何とか報告を書きたいと頑張ってみたものの、何も書けず断念した次第である。普通は何か自分にとって良かったことがあるのだが、断念するのは初めてであった。


星野正治  Shoji Hoshino

早大ジャズ研OB。
米国ニューヨーク州公認会計士 New York State Public Accountant
ニューヨーク地域での履歴:
1978-1983 日系文化交流団体勤務、NY市立バルークカレッジ大学院で会計学専攻し卒業
1983-1996 デロイト・トウシュ会計事務所勤務
1996-2021 独立し、星野会計事務所所長  Representative, Shoji Hoshino CPA Office
2022‐現在 ほぼ引退状態、時折りコンサルティング業務に従事

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