#1385 Soulbleed – East Meets West
text & photos by Hiro Honshuku
2025年9月19日(金)Nublu, NYC


1st Set
- Without You
- Eye Of Typhoon
- Don’s Melodies
2nd Set
- Maria
- Underground Train
- Tempest
- Blue Snow
All the selections written by Seiki Yukimoto
昨年Facebookで知り合ったユキさんこと行本 清喜氏のNYCでのギグに行って来た。氏は毎年この時期に同じメンバーでコンサートを開いているようで、昨年の動画を観て今年はぜひ出向こうと決めていた。元々このバンドの動画を観てコメントしたことからFacebookフレンズになった。ともかく彼らのグルーヴはすごいの一言だ。行本氏がこのバンドでやっていることは隅から隅まで筆者の大好物。まず、マイルスのサウンドに近いが、確実にマイルスのそれとは違う。普段マイルスのコピーバンドはあまり好まないのだが、このバンドには全く違和感がない。なぜだろう。これはやはりバンド・メンバー一人一人が素晴らしいことと、マイルス・バンドより遥かにジャム性が高いからなのかも知れない。今回、行きますねと連絡すると、では2曲入って下さいと言われて有頂天になって出かけた。ボストンからNYCの金曜渋滞は予想の通り最悪で6時間のドライブだったし、顎の状態から未だに外食ができないので飴玉のみで過ごした1日だったが、グルーヴが始まると全てがすっ飛んだ。
ドラマーは、昨年11月に99歳で惜しまれて他界したRoy Haynesの息子、Craig Holiday Haynes(クレイグ・ホリデー・ヘインズ)。息子と言っても70歳だ。ロイのスタイルとは全く違い、ものすごいグルーヴに徹する反面、かなり冒険もする。これだけ冒険するのに絶対ビートを外さない、すごいの一言だ。ベースのStanley Banks(スタンリー・バンクス)はGeorge Benson(ジョージ・ベンソン)のベーシストとしてご存じの方も多いと思う。彼のグルーヴはクレイグの冒険ドラミングをしっかり地に着け、見事なリズム隊コンビだった。しかもスタンリーは左足でタンバリンを演奏している。特殊なスタンドがあるわけでもない。靴を履いたまま、踵を振って強烈なグルーヴを出す。その動画を撮れなかったことが悔やまれる。
ギターのSpaceman Patterson(スペースマン・パターソン)もキーボードのTerry Burrus(テリー・バーンズ)も最高のコンピング(伴奏)で、グルーヴを提供するだけでなく、一発ものでもチョロッ、チョロッと美味しいコードをおしゃれに挿入する。テリーはR&Bなどで活躍しているが、ジャズのヴォキャブラリーも完璧だ。筆者が参加した曲で偶然スペースマンと同時に調性外の音を出した。するとそこから続けたアウトの進行が二人ともピッタリ合ったことにうるうるしてしまった。コンガのJosé Luis Abreu(ホセ・ルイス・アブレウ)はドミニカ共和国出身、アフロ・キューバンなどのファーストコールとして活躍している。ラテンのオン・トップ・オブ・ザ・ビートとファンクのビハインド・ザ・ビートを使い分けていることに驚いた。さすがファーストコール。ウォッシュボードのNewman Taylor Baker(ニューマン・テイラー・ベイカー)は大人気だった。5指に筒のようはものをはめて、ウォッシュボードを膝に起き、見たこともないような演奏を披露していた。ドラマーにパーカッショニストが二人、コード楽器はギターとキーボード二人、ジャム・バンドで誰ひとりとしてぶつかっていないことに驚く。全員がバンド全体のサウンドを完璧に理解している。こんなバンドと演奏できたこの経験は生涯の宝となった。
このすごいバンドをまとめ上げているのが行本氏だ。まず筆者はあんな難しい楽器を自在に操るというだけで尊敬してしまう。彼はケーナも演奏する。これがまた素晴らしかった。筆者は常に、フルートはサックスの持ち替え楽器であるべきではなく、トランペットの持ち替え楽器であるべきだ、と思っている、それを実行してくれているのだ。彼は筆者が米移住する以前の80年代前半にNYCで活躍していたので、これだけのすごいメンバーを集められる。彼はDon Cherry(ドン・チェリー)と一緒に暮らし、強い影響を受けたそうだ。しかし、1曲目の<Without You>の出だしはまさにマイルスで、思いっきりうるうる来てしまった。また来年も観にこよう。
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