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Concerts/Live ShowsNo. 224

# 926 野瀬栄進+武石聡 Two Men Orchestra “THE GATE”

2016年11月12日(土) 恵比寿ガーデンルーム

reported by Kenny Inaoka 稲岡邦弥

 

野瀬栄進 (piano, electronics)
武石聡 (percussion, electronics)

 

NYと日本を往復しながら活動を展開している野瀬栄進というピアニストがいる。本誌Jazz Tokyoでは悠雅彦主幹が早くからその才能に着目し、CDやライヴなどをこまめにフォロー、紹介してきた。僕自身はといえば、CDは数点試聴したことがあるもののライヴは今回が初めての機会。恵比寿ガーデンルームは多目的スペースで、平場にピアノを持ち込んでの演奏となった。ピアノといえば、野瀬は数年前にNYで出会った年代もののスタインウエイに惚れ込み、クラウドファンディングで資金を募集、生地の小樽に移送するという“快挙”を成し遂げたことがある。今回はそのピアノを聴けるかも、という期待もあったが、考えてみればピアノは生き物、環境が変わると馴染むまでに日数を必要とし、相応の移送費もかかる。またの機会を楽しみに待とう。

“The Gate”は2011年にやはりNYを拠点に活躍するパーカッショニスト武石聡とのデュオ。”Two Men Orchestra”を標榜するだけあり、時にエレクトロニクスを援用して多彩な表現とダイナミクスを展開する。日本でも毎年のように各地を転戦、すでにアルバムも数枚リリースしており、信頼関係の確立されたデュオである。この日もツアーの最終日とあり、ふたりのパートナーシップは水も漏らさぬ緊密さをみせた。レパートリーは過去のアルバムに収録された野瀬の楽曲が中心だったが(1曲、武石のオリジナルがあり、彼のパーケッションがフィーチャーされた)、とくに、テーマや仕掛けでの付点や休符の入り組んだ複雑な動きに対する武石の対応は寸分の狂いのない完璧さをみせた。武石は音色に頼ることなく、むしろ最低限のセットをテクニカルに駆使することによりそれを可能にした。

野瀬はクラシックからジャズまでヴォキャブラリーの豊富なピアニストで、この日もかつてオーケストラと共演した経験のある<ラプソディ・イン・ブルー>をジャズ風変奏曲にアレンジして披露した。出だしはやや硬さもみられたが徐々にギアアップ、キューバン・リズムに乗ったアンコールまでインターミッション無しの胸のすくような一気呵成のパフォーマンスを聴かせてくれた。

マイク・セッティングの様子から当日の模様はライヴ・レコーディングされていたと思われ、やがてCDとして公開される日を待ちたい。

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稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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